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「山本太郎もびっくり?」 生き急ぐ運転で得る時間は「わずか54秒」、それでも人はなぜアクセルを踏むのか?

掲載 更新 120
「山本太郎もびっくり?」 生き急ぐ運転で得る時間は「わずか54秒」、それでも人はなぜアクセルを踏むのか?

速度超過の常態化とデータの利活用

 くれぐれもハンドルを握ったまま生き急いではならない――。

なぜインターチェンジ付近には「ラブホテル」が密集しているのか?

 近時、政治家が大幅な速度超過により道路交通法違反で検挙され、略式起訴や免許停止処分を経て辞任・引退に至る事態が大きく報じられた。れいわ新選組創設者である山本太郎元代表のスピード違反事件である。

 事の発端は2025年10月、山本氏が大分県内の東九州自動車道を制限速度から69kmも超過する時速149kmで走行し、オービスに検挙されたことだ。2026年春に罰金や免許停止処分を受けていたものの、党内手続きを理由に公表が遅れ、7月に週刊誌報道で発覚。世論の猛反発を招いた結果、同氏は代表辞任と政界引退、さらには党名変更にまで追い込まれた。

 特筆すべきは、7月9日に開かれた引退会見での弁明である。冒頭こそ「生き急いでいるといえば山本太郎ですが、スピード違反までして生き急いではならない」と陳謝した同氏だが、大分を訪れていた理由を問われると「波乗り(サーフィン)を通じた海人(うみんちゅ)たちとの交流も政治活動の一環」と持論を展開。さらには当時乗っていたレンタカーについて、

「新車の『アルファード』で凄く静かだった。『世界のトヨタ』だなと思った」

と軽口まで叩き、到底反省しているとは思えない態度が火に油を注いだ(『日刊スポーツ』2026年7月10日付け)。

 激務に追われれば時間にも焦りが生じるのかもしれない。あるいは、高級ミニバンの高い静粛性がスピード感覚を麻痺させた側面もあったのだろう。いずれにせよ、車の運転中に「生き急ぐ」ことは、自らの政治生命を絶つほどの致命的なリスクをともなう。この騒動は政治家のコンプライアンス欠如として激しい批判を浴びたが、実はモビリティの経済性と運行効率を捉え直す上でも、極めて重要な示唆を与えている。

 もちろん69kmオーバーは法外であるが、現実の路上では軽微なスピード超過は常態化している。

 制限速度のプラス10km以内であれば取り締まりの対象にはならないという通俗的な認識もあり、実際の路上での車の流れが制限速度をわずかに上回っていることは日常的な光景である。つまり大半のドライバーは日常的にスピード違反を犯している。モビリティにおける速度選択は、交通マナーの問題にとどまらず、エネルギー効率、二酸化炭素排出量、そして企業や社会全体が負担する莫大な経済的損失に直結している。

 この傾向は米国でも同様であり、多くのドライバーにとって超過スピード走行はごく当たり前のこととみなされている。米ネバダ州ラスベガスを拠点とする人身傷害専門の法律事務所「H&P Law」が最近行った調査によると、19歳から39歳までのドライバーの半数以上が高速道路を超過スピードで走行した経験を認めている。

 また16歳から18歳までのドライバーの約半数が、住宅街の道路で制限速度を時速10マイル(約16km)以上超過して運転したと答えている。なお、超過スピード走行において男性と女性の数値に大きな開きは見られなかった。

 米ミネソタ大学の研究チームが2026年7月に「Communications Sustainability」で発表した研究によると、超過スピード走行の割合は地域によって異なる。フロリダ州、ジョージア州、ノースカロライナ州、そしてアラバマ州とバージニア州の一部地域では、ドライバーがアクセルを踏み込む傾向がはるかに高い。

 またネバダ州の一部では、制限速度が80マイル(約130km)であるにもかかわらずスピード違反率が高く、州の北東境界付近では平均速度超過が25.42マイル(約41km)に達し、州の平均を12.84マイル(21km)押し上げている。

 ドライバーが抱く主観的な焦りや走行行動が、これほど高精度に可視化されるようになった背景には、車載通信機の標準搭載化や位置情報の高精度化によるデータ収集基盤の発達がある。走行データが常時生成され蓄積される環境が整ったことで、個人の移動習慣は社会的に有用な情報へと姿を変えている。このデータ資源は、ドライバーの安全性評価に応じたテレマティクス保険の提供や、交通流のリアルタイム分析による渋滞緩和策、さらには自治体によるモビリティインフラの高度な運用など、自動車産業を取り巻く幅広い領域へ活用範囲を広げている。自動車業界が電動化やコネクテッド技術を加速させる中、速度超過がもたらす不経済さを科学的データに基づいて検証することは急務といえる。

わずかな短縮と莫大なエネルギー損失

 一部の米国人も“生き急いで”いるのかもしれないが、同研究によると運転でスピードを出しがちなドライバーは自分が思っているほど時間を節約できておらず、そもそも自動車で早く移動しようとすること自体が、環境と家計の両方に悪影響を与えていることが報告されている。

 自動車が走行する際に受ける空気抵抗は速度の2乗に比例して増大するという物理的原則が存在する。軽自動車を含む小型車両のエネルギー効率は時速40~55マイル(約64~88km)の範囲で最も高くなるよう造られており、高速道路などで巡航速度を制限速度よりわずか10マイル(約16km)引き上げるだけでも、内燃機関車(ICE)の燃料消費量および二酸化炭素排出量は最大21%急増する。当人の通勤、通学する子供の送迎、あるいは買い物などのために車を飛ばすことは、ガソリン代の無駄遣いや有害な排気ガスを大気中に放出するだけでなく、時間の節約にもほとんどならない。特にガソリン価格が高止まりしている昨今は負担も負荷も重くなる。

 研究チームは2021年の研究で4日間にわたって1億2000万件以上の車両走行データを分析し、米国本土とハワイにおける小型ICE車、およびカリフォルニア州におけるバッテリー式電気自動車(BEV)の超過スピード走行によるエネルギー消費、コスト、排出量を算定した。

 この調査は主に制限速度が時速45マイル(約72km)以上の道路を走行する車両の走行データが無作為に選ばれて収集された。

 分析の結果、ドライバーが1日の平均運転距離である28.6マイル(約46km)を制限速度以下で運転すると、超過スピード走行に要した走行時間からたった54秒(100マイルの走行換算で約190秒)しか増えていないことが分かった。1週間あたりでは6.3分に相当する。

 多くのドライバーは心理的に「早く着く」という錯覚(Time-saving bias)を抱いているが、研究結果は意味のある時間の節約にはならないことを示している。そして現実にはたった1分弱の時間と引き換えに、社会全体として莫大な燃料と資金を浪費している実態が浮き彫りとなっている。

 すべての車両が制限速度以下で運転していれば、米国全体で1日平均で約670万ガロン(約2500万L)の燃料、約2200万ドル(約35億円)の燃料代、約5万7000tの二酸化炭素を削減できることが推定されている。

 1日あたりの節約時間が54秒にとどまる一方で、社会全体として見れば膨大なエネルギー損失が発生しているという事実は、ナビゲーションシステムや地図情報サービスを提供するプラットフォーム企業の開発手法にも新たな方向性をもたらしている。最短到着時間のみを追求する従来の計算手法から、燃料消費の抑制や二酸化炭素排出の削減、さらには心理的な安定走行を総合的に考慮した「環境最適ルート」を優先提示する動きが広がっている。利用者の運転行動を包み込むアルゴリズムの高度化は、モビリティサービス全体において移動の質を高める大きな推進力となっている。

電動化時代のエネルギー最適化と進化

 ICE車両群における速度制限遵守による燃料消費量の平均削減率は、季節によって2.4~3%程度と控えめに見えるが、全国規模での全体的な影響は相当大きくなる。

 自動車産業が推し進める電動化の波においても、速度コントロールは運行コストに直結する重要な技術的かつ経営的課題である。BEVのデータはカリフォルニア州に限られていたが、研究チームは同州のドライバーも、掲示された制限速度を守ることでバッテリー効率が7~9.5%(慣性走行を取り入れた最適運転を含む)向上することを示した。BEVは回生ブレーキや高効率パワートレインを備えるものの、高速域で支配的となる空気抵抗の影響を等しく受ける。もともとエネルギー変換効率が高いEVにおいては、速度超過にともなう空気抵抗の増加がバッテリー消費率や航続距離に直接的な悪影響を及ぼす。

 これらの節約効果は、年間ベースで約550万台の従来型乗用車が路上に存在しなかったことに相当する。

 本研究で実施した分析では、制限速度が時速45マイル(約72km)以上の高速道路および幹線道路における速度超過のみを対象とし、制限速度が低い道路は除外しているのだが、混合道路網や低速運転行動にまで分析対象を広げれば、燃料、エネルギー、コストの節約効果はさらに大きくなる可能性がある。

 研究チームが評価できなかった要素は、大半のドライバーが制限速度を遵守することで交通パターンに影響が出で事故が減少するかどうかであり、これについては今後の研究課題となる。ただし米国では年間1万1775件の速度関連死亡事故が発生しており、速度超過は重大な事故リスクを引き起こす主要因として、安全性とエネルギー効率の双方を損なう不合理な運転行動であることは疑いようがない。

 ガソリン価格が激しく変動し続け、地政学的なリスクの終結が見通せない状況では、今回の研究結果は燃料を節約して光熱費を削減したいドライバーにとって軽視できないはずである。速度超過の抑制による燃料費削減は、個々の企業や家計にとどまらず、マクロ経済全体にも好影響を及ぼす。ガソリン支出の減少分は限界消費傾向に基づき他の製品やサービスへの消費へと振り向けられるため、実質的な国内総生産を押し上げる要因となる。気候変動被害の回避額を含めた総合的な社会利益は極めて高い。

 超過スピード走行によって節約できる54秒は、燃料代に見合う価値が無いばかりか、財布にも環境にも、そしてドライバー自身のメンタルにも影響を及ぼす。遅れる時は遅れるものだと普段から頭の片隅に織り込んでおきたいものだ。

 速度とエネルギー効率の強い相関関係、とりわけBEVにおける高い改善幅は、自動車メーカーの開発領域が新たな段階へ入っていることを示している。車両開発の価値は、出力を高めて走りの力強さを競う形から、車両側のソフトウェアによって走行状態とバッテリー消費を高度に制御する形へと進化を遂げている。

 商用EVやモビリティフリートの運用においては、テレマティクスを用いた運行速度の適正管理が、航続距離の延伸や充電コストの抑制、ひいては車両の総所有コスト削減に直接寄与する。今後は先進運転支援システム(ADAS)による速度制御技術や、リアルタイムデータを活用したエコドライブ評価が不可欠となる。ドライバーの自制心だけに委ねるのではなく、最適な加速や減速を円滑にアシストする制御システムが進化することで、走行エネルギーの最適化が自然に行われる環境が整いつつある。さらに、こうした効率的かつ安全な運転データを基に、充電料金の優遇制度や保険の適用など、周辺サービスと連携した新しいモビリティの繋がりが展開している。

 目先の速度にとらわれず、エネルギー消費と安全のバランスを適正化する「持続可能な移動」へのシフトこそが、自動車産業と社会インフラの連携を一層加速させている。(牧野康孝(自動車ライター))

文:Merkmal 牧野康孝(自動車ライター)
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みんなのコメント

120件
  • wol********
    イキりたかっただけやろ。
    車なんて移動の手段以外は
    イキる為の道具でしかない。
  • yor********
    先の信号が赤なのに加速して
    信号手前でガツンとブレーキ
    そんな運転する輩が多いよね
    燃料もブレーキもタイヤも無駄にして
    何ならクルマにダメージもあるし
    それで1秒も短縮できていない
    心から「アホやな」と思うわ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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