現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 地中海沿いに1万3000km走破 モーリス・ミニ・マイナーMk1 貴重な初期の生存車 後編

ここから本文です

地中海沿いに1万3000km走破 モーリス・ミニ・マイナーMk1 貴重な初期の生存車 後編

掲載
地中海沿いに1万3000km走破 モーリス・ミニ・マイナーMk1 貴重な初期の生存車 後編

BMCのチームが丁寧に分析し再構築

667 GFCのナンバーを付け、1万3000kmの実験的なグランドツアーを走破したモーリス・ミニ・マイナー Mk1。過酷な条件を考えて、スクラップにされても不思議ではなかった。

【画像】これがオリジナル モーリス・ミニ・マイナー Mk1 レストモッド版と最新のJCWも 全81枚

しかしミニの専門家、ニッピー・カーが調べた限り、ブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)のチームはクルマを丁寧に分析。再び組み直された可能性が高いという。

ボディシェルは、プレスされたのが1960年2月だと判明。実際、1959年の夏に製造された初期のボディとは各部の特徴が異なっていた。

雨水が内部に流れないようにするため、ドアロック上に小さな雨どいが追加されるなどの改良が施されていた。一方でルーフには、リベットで仮に固定された雨どいが付いていた。これは、量産後のクルマとは異なる仕様だった。

ボディシェルには、工場で刻印されるべき数字がなかった。通常の生産ラインを通過せず、手作業でリビルドされたことを示唆していた。一新された理由は、激しいストレスに晒されたグランドツアーが理由だと考えていい。

ほかのメカニズムは、リビルドして利用されているものも少なくない。スピードメーターを固定する白いカウリングから、マグネシム製のトランスミッションまで、最初期のミニである特徴も多く残っている。

ダッシュボードのスイッチ類や電装系、ヒーターボックスも、1959年の夏に作られたものだった。ホイールは塗装を1度剥がし、金属疲労などの状態が確認されたようだ。

現代的で活発に走ることへ驚く

フロントのサブフレームを確認すると、悪路に備えて追加されたアンダーガードを固定した穴が残っている。だが、アンダーガード自体は残っていない。

アルプス山脈のグロースグロックナー峠を超える時から、ミニ・マイナー Mk1はオーバーヒート気味だった。これは旅の後半まで悩まされた問題だったが、ヘッダータンクの圧力キャップの不具合が原因だった。

さらにBMCの技術者は、アンダーガードがエンジンルーム内の気流を妨げ、冷却効率を下げていたことも突き止めた。鋳造されたオイルサンプの強度を考えると不必要な装備だったと、AUTOCARでも結論づけている。

エンジンも調子は良くなかった。フランス経由で英国へ戻る途中、エグゾースト側のバルブが溶けてしまったらしい。エンジンブロックが降ろされ調べられると、ピストンの1つが大きく損傷していることも判明した。

これを受け、ゴール後にエンジンが交換されたことも納得できる。ボディシェルの構築から、最終的に走れるようになるまで、リビルドにはかなりの時間を要したことだろう。

英国で美しくレストアされたミニ・マイナー Mk1のキーをひねると、848ccという小さな4気筒エンジンが目覚める。グッドウッド・サーキットのアスファルトを加速し、マジウィック・コーナーへ侵入する。

筆者は生産後期のミニを運転したことはあったが、最初期のMk1は初めて。限られた馬力にも関わらず、とても現代的に、活発に走ることへ驚かずにはいられない。

フィーリングはゴーカートのようにタイト

マジックワンド(魔法の杖)と呼ばれた、長いシフトレバーを素早く動かしシフトアップして、アクセルペダルを踏み込む。ミニ・マイナー Mk1はミツバチのようにビーンとエンジンノイズを響かせ、コーナーを次々にクリアしていく。

ステアリングは鋭くダイレクト。短いホイールベースと、小径なタイヤというバランスで、フィーリングはゴーカートのようにタイトだ。それでいて、れっきとしたクルマだという安定感も伴う。

ブラックとグレーのツートン・シートは、初期のミニ・マイナーならではの特長。シートと同じ柄のトリムが、1960年代のドアに続いている。

60km/hを少し上回るようなスピードでも、驚くほど威勢良く感じられる。写真撮影のためにカメラカーを追走した時も、筆者はコーナー内側の縁石へフロントタイヤをタッチさせながら、運転を楽しんでしまった。

グッドウッドとミニ・マイナー Mk1を堪能していると、ダッシュボード付近から煙が出てきた。何かが溶けるような匂いがし、慌ててペースを落とす。英国の貴重な自動車遺産の1台を燃やしてしまうなど、恐ろしくてできない。

しかし心配不要だった。組み立て直したばかりのエンジンブロックが熱くなり、ヘッドなどの隙間に塗られた余分なシーラントや、潤滑剤が焼けただけに過ぎなかったようだ。

ミニ・マイナー最初期の貴重な生存車

現代の高性能なスポーツカーのように、息を呑むほどのドラマチックさはない。しかし、オリジナル・ミニの最初期の例が備えていた、活発さを確認できてうれしい。オーバーヒート気味だったという、悩ましい特性の雰囲気も。

モーリス・ミニ・マイナー Mk1の貴重な生存車だということには、大きな価値がある。さらにこの667 GFCの場合は、地中海沿いにボディをボロボロにしながら1万3000kmを走った。その過去を想像すると、思い入れが強くならずにはいられない。

丁寧にBMCの技術者によって再生された後は、欧州から遠く離れた日本でひっそりと余生を送ってきた。英国に戻り、専門家によって見事なレストアを受けたMk1は、今後も多くの人の関心を集めることだろう。

協力:グッドウッド、1959ミニ・レジスター

こんな記事も読まれています

プリウスもない! クラウンセダンにもない! 最近フォグランプのあるクルマ減ってない?
プリウスもない! クラウンセダンにもない! 最近フォグランプのあるクルマ減ってない?
ベストカーWeb
宮田莉朋が2度目のWEC出走へ。第3戦スパでレクサスRC F GT3を代役ドライブ
宮田莉朋が2度目のWEC出走へ。第3戦スパでレクサスRC F GT3を代役ドライブ
AUTOSPORT web
中央道の渋滞対策2ストライク、三振間近! なぜ愚策が繰り返されるのか?[清水草一の道路ニュース]
中央道の渋滞対策2ストライク、三振間近! なぜ愚策が繰り返されるのか?[清水草一の道路ニュース]
ベストカーWeb
大型連休でも大活躍! 6名以上乗れる手頃な価格の中古車4選
大型連休でも大活躍! 6名以上乗れる手頃な価格の中古車4選
グーネット
ハイブリッドなのにスポーツカー⁉️ C 63 Sに新世代のAMGを見た
ハイブリッドなのにスポーツカー⁉️ C 63 Sに新世代のAMGを見た
グーネット
レクサス 新型「GX550オーバートレイル+」抽選販売スタート!通常販売は2024年秋開始
レクサス 新型「GX550オーバートレイル+」抽選販売スタート!通常販売は2024年秋開始
グーネット
マツダ 新型3列シートSUV「CX-80」初公開 2024年秋に欧州で発売
マツダ 新型3列シートSUV「CX-80」初公開 2024年秋に欧州で発売
グーネット
プリウス後席ドアに13万台のリコール! 暫定的に手動開閉に! ところでプリウス後席ドアって手動でどう開けるの?
プリウス後席ドアに13万台のリコール! 暫定的に手動開閉に! ところでプリウス後席ドアって手動でどう開けるの?
ベストカーWeb
クルマの窓から愛犬が顔出してる! 可愛いんだけどこれって違反にならないの?
クルマの窓から愛犬が顔出してる! 可愛いんだけどこれって違反にならないの?
ベストカーWeb
ボルドールの経験でEWCの切符を掴んだ綿貫舞空。ル・マンで昨年2位の3ART加入に「できれば優勝をしたい」と意気込み
ボルドールの経験でEWCの切符を掴んだ綿貫舞空。ル・マンで昨年2位の3ART加入に「できれば優勝をしたい」と意気込み
AUTOSPORT web
BYDが都内屈指の自動車ディーラー激戦区に「BYD AUTO 目黒」を開店
BYDが都内屈指の自動車ディーラー激戦区に「BYD AUTO 目黒」を開店
グーネット
今やブーム真っ只中なのに……期待が大きすぎた  悲しい運命をたどった[SUV]4選
今やブーム真っ只中なのに……期待が大きすぎた  悲しい運命をたどった[SUV]4選
ベストカーWeb
マツダの新型「3列SUV」でた! ついに5m級 驚異的パワー!? 「CX-80」欧州で世界初公開 これ日本に来るのか!?
マツダの新型「3列SUV」でた! ついに5m級 驚異的パワー!? 「CX-80」欧州で世界初公開 これ日本に来るのか!?
乗りものニュース
GTワールドチャレンジ・アジアがJ SPORTSで全戦放送。ジャパンカップはほとんどを生中継へ
GTワールドチャレンジ・アジアがJ SPORTSで全戦放送。ジャパンカップはほとんどを生中継へ
AUTOSPORT web
安かろう悪かろうなクルマをつかまされないために知っておくべき……[修復歴]と[事故歴]の違いとは  どうやって見分けりゃいいの
安かろう悪かろうなクルマをつかまされないために知っておくべき……[修復歴]と[事故歴]の違いとは  どうやって見分けりゃいいの
ベストカーWeb
もっと「アバルト595」で運転を楽しもう! 車高調からペダルの「ポッティングデカール」にドラシューまで、厳選アイテムを紹介
もっと「アバルト595」で運転を楽しもう! 車高調からペダルの「ポッティングデカール」にドラシューまで、厳選アイテムを紹介
Auto Messe Web
シェイクダウンはオジエが最速発進。トヨタ1-2にヒョンデ勢が続く/WRC第4戦クロアチア
シェイクダウンはオジエが最速発進。トヨタ1-2にヒョンデ勢が続く/WRC第4戦クロアチア
AUTOSPORT web
韓国勢が大健闘 合理的な「兄弟」モデル:ヒョンデ・コナ・エレクトリック キア・ニロ EV お手頃EV 12台比較(5)
韓国勢が大健闘 合理的な「兄弟」モデル:ヒョンデ・コナ・エレクトリック キア・ニロ EV お手頃EV 12台比較(5)
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

178.9209.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0575.0万円

中古車を検索
ミニの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

178.9209.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0575.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村