SUVじゃないんですか?
かねてより予告されていたフェラーリのプロサングエが正式発表された。今やどのメーカーも見過ごせないSUVの世界へ、ようやくフェラーリが参入したのである。
【画像】超高級SUV市場に参戦!「フェラーリ・プロサングエ」【写真でじっくり見る】 全60枚
そこで、クラシックから最新型までほとんどのフェラーリに接してきた、オールド・フェラーリ・ファンが見たプロサングエ感を記してみることにした……。
ーーフェラーリから4ドア4シーターGTのプロサングエが登場したーー
詳細についてはすでにレポートされているので、好きものの視点で気になる部分を記してみた。
プロサングエのリリースを見ると「4ドア、4シーター」と称され、典型的な現代 GTモデル(いわゆるクロスオーバーやSUV)と別であると記されていた。
フェラーリとしては流行で造られたSUVとは異なり、これまで培ってきたテクノロジーを注ぎ込んで名に恥じぬクルマを造った、という自負から否定しているといえる。
しかし、見た目は明らかにクロスオーバーSUVで、どう呼ぶかは個々の解釈に委ねられよう。
最高出力725ps、最高速度310km/h、0-100km/h加速は3.3秒、0-200km/h加速が10.6秒と、ちょっと前のスーパースポーツを上回るパフォーマンスを備えるのはさすがだ。
ライバルと較べるとパワーは圧倒的だが、最高速度ではアストン マーティンDBX 707が310km/hで並び、ランボルギーニ・ウルス・ペルフォルマンテが僅差の306km/hで続くという激戦区だ。
引き締まったスタイリング
プロサングエは全長4973mmの巨体ながら、前後オーバーハングの短さによる全体のバランスの良さから、サイズを感じさせない引き締まったスタイリングは評価できる。
とくに前斜めから見ると後ヒンジの観音開き式リアドアを採用したことにより、2ドアに見えるスタイリングを実現。ボクシーなリアフェンダーと相まって、パワフルさを感じさせるフェラーリらしい優れたデザインだ。
また最低限のキャラクターラインと面で構成されたデザインは、F8や812にあった力みが消えた。新たなトレンドを表現しており、社内チームが勘所をつかんだように思える。
マニアックな目で見ると、250GTOを思わせるリアフェンダーのボリューム感や、エンジンフード後方のアウトレットはF1マシン312T2のカウルにあるインテークを想起させる。
インテリアも近代フェラーリの文法通りだが、そのキャラクターから開放的にデザインされている点は好感が持てる。左右独立したリアシートもフェラーリらしい部分といえる。
12気筒は正義 725馬力
デビュー前に、搭載されるエンジンは12気筒や、8気筒ターボ、はたまた296で使用されているV6 PHEVが積まれるのではと様々なうわさが飛び交っていた。
発表された資料を見るとそこには65°V12エンジンと記されていた。それもエンツォ・フェラーリに端を発するティーポ140系だったことが、フェラーリの意地ととれた。
筆者の予想では、ユーロ6規制をクリアできるうちは伝家の宝刀である12気筒NAエンジンを積み、規制の強化に合わせてダウンサイジングか電動化が行われると読んでいた。
フェラーリを象徴する12気筒エンジンを積むことにより、ライバルにない絶対的な付加価値を高められることにより、明確な差別化ができるという意味合いもある。
もちろんフェラーリらしく適正な前後重量バランスが得られるフロント・ミドシップとトランスアクスル・レイアウト、万全の操安アシスト・システムが採用されている。
プロサングエがV12を採用したという選択は、ブランドとして大正解だったのである。
プロサングエは買いか
日常にも使えるフェラーリが作った4ドア・4シーターのSUVということから、他社SUVを所有していたフェラーリ・オーナーのほとんどが乗り換えるはずだ。
イタリアでカスタマー向け発表会が行われる以前からオーダーが入り、そこに世界の上客分を加えると、これから注文しても納車まで2年以上の待ちは確実といえるだろう。
過去の流れを勘案すると、プロサングエの12気筒モデルは初期のみの生産となると思われる。生産終了時点でも希望者に行き渡らないため、将来的にプレミアムが付くのは確実だ。
それはさておき、プロサングエは家族で乗れる初のフェラーリだけに、売れることは間違いない。あわせてフェラーリに興味はあったが躊躇していた層も列に加わると思われる。
FF/GTCルッソでは消化不良だった2+2の4WD路線だったが、プロサングエでようやく完成の域に達した。だからこそプロサングエは買いの1台と断言できる。
ところで年々増大するフェラーリの生産台数だが、2021年は1万1155台だった。2022年は上半期で前年同期比23%増を記録。ここにプロサングエが加わると、今年は何台になるのだろうか。
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