2025年シーズンで10年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。今シーズン2度目の3連戦を終え、クルマが速くても安定して週末を戦うことができていないと小松代表は厳しい姿勢だ。そんななかモナコでは、全世界での公開を前にF1の映画が関係者向けに上映され、小松代表はその迫力に感銘を受けたという。3連戦を小松代表が振り返ります。
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ハースF1、200戦目となるカナダGPは特別カラーリングで挑む。2016年のデザインをトリビュート
■2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPNo.31 エステバン・オコン 予選18番手/決勝DNFNo.87 オリバー・ベアマン 予選19番手/決勝17位
■2025年F1第8戦モナコGPNo.31 エステバン・オコン 予選8番手/決勝7位No.87 オリバー・ベアマン 予選17番手/決勝12位
■2025年F1第9戦スペインGPNo.31 エステバン・オコン 予選17番手/決勝16位No.87 オリバー・ベアマン 予選15番手/決勝17位
今年2度目の3連戦、そしてシーズンの1/3が終わりました。手応えとしては、安定感がないというのが正直なところです。レースの週末に臨むにあたって、パフォーマンスすべてにおいて、もうちょっといい位置で戦える安定感がないといけないのですが、そこまで到達できていません。
振り返ってみると、たとえば第8戦モナコGPは、結果的にクルマは速かったです。ポイントも獲りましたしね。でも、その入賞までの道のりはよくなかったです。オリー(編注:オリバー・ベアマン)はFP2での赤旗の件(編注:赤旗が掲示されていた際に他車を追い越したため、決勝レースで10グリッド降格ペナルティを受けた)があり、エステバンは予選Q1を突破できるのかできないのかというギリギリのところから、なんとかQ3に進んだという状況でした。この厳しい競争の世界でこうして後手に回っていると、いずれリカバリーできなくなります。
今シーズン、僕たちがどのグランプリでフリー走行から後手に回らず、予選と決勝レースですべてを出せたかというと、それができた週末はまだひとつもないと思っています。 すべての面でいまいち足りていないので、僕のなかでは安定感がないという評価です。この3連戦でいえば、ポイントを獲れたモナコですら、クルマの能力を出しきれたのはQ2、Q3でのエステバンくらいでした。オリーも赤旗の件以外は完璧だったのでもったいなかったですけど、もったいないと言っている場合ではないです。
もちろん見方を変えれば、出だしが悪くても最終的に挽回できていると捉えることもできます。それがうまくいったのが第2戦中国GPでした。開幕戦オーストラリアGPの問題を受けて、中国GPのFP1は保守的なクルマのセッティングで始めざるを得ませんでした。そこからスプリントフォーマットでフリー走行が1回しかない状況で、いいプランを立てて実行できたという点ではすごくよかったです。クルマの大きな問題を改善して、日曜日のレースではクルマのバランスもぴったり合っていて、戦略を2ストップから1ストップに変えるのもうまくできたので、挽回する能力を発揮できた週末でした。
第4戦バーレーンGPも、Q1で僕が判断ミスをしたところからダブル入賞まで持っていけたという点ではそうでしたね。こういうレースを常に出来ないといけないので、次の区切りとなるサマーブレイクまでの目標は、とにかく毎レース安定感を持って戦うことです。
さて今年のモナコGPでは、ピットストップを2回行うことが義務づけられました。そもそもモナコの根本的な問題というのは、追い抜きができないことですよね。コースレイアウトを変更するか何かで、少なくとも前のクルマより3秒速く走ることができれば追い抜けるようにしないとレースにはならないと思います。今のモナコのレイアウトでは6秒以上の差がないと抜けないし、現状のままであればどんなタイヤを持ち込んでも、どんな規則を作っても、改善されないと思います。まあF1全体として、モナコGPをイベントとしてどういう位置づけにするかですよね。華やかな予選イベントとして割り切るのか、それでもなんとか日曜にレースができるようにするのか。
C6タイヤに関して言うと、ステファノ(・ドメニカリ/F1のCEO)をはじめ、みんなが1ストップレースをやめようと言っているわけです。第3戦日本GPもそうでしたけど、抜けないコースで1ストップレースをすると、つまらないレースになってしまいますから。ようやく第7戦エミリア・ロマーニャGPでC6が導入されましたけど、金曜日に走ったところ、あの週末のミディアムタイヤだったC5と比べてもあまり速くなかったです。あの日の夜にチーム代表たちが集まって一緒に食事をしたのですが、あの場にマリオ(・イゾラ/ピレリのレーシングマネージャー)もいて、ジョークも交えつつみんなが彼に不満を言っていましたね。
実際に2ストップのレースをして感じたのは、戦略の連鎖反応がすごかったな、ということです。グリッドが決まった時点で、僕たちは各チームでチームメイトがどこにいるかを見て、どういうチーム戦略が有効なのかを判断します。特にモナコでは前を走るドライバーがピットストップをしても順位を落とさないようにするために、後ろのドライバーが後続を抑えるというのは今まで何度も使われている常套手段です。レーシングブルズのリアム・ローソンが後続を抑えている間に、アイザック・ハジャーが2回のタイヤ交換を終えて、それに巻き込まれたウイリアムズも同じことをしましたし、僕たちももし2台があの位置にいたら同じようにやると思います。
レースをスタートする前から、ドライバーをどの順位でコースに戻せるかを一番に考えているからああいうレースになりますし、シケインをカットしてペナルティを受けてでも順位を上げようとする人が出てきます。モナコではペナルティによるタイムロス以上のギャップを作ることもできますからね。
昨年はスタート直後に赤旗中断になり、そこでみんながタイヤを変えたからレース中のピットストップがほとんどなく、抜けないので何も起こらなかった。今年はそうならないために何かしなければいけなかったという事情は僕も理解できます。何もしないわけにはいかないですが、でもこのコースではオーバーテイクが難しいし、みんなペースを落として走ることになります。だからレイアウトを変えるとか何か根本的なことをしないと、改善は難しいでしょうね。
■ダイナミックなオンボード映像や音が魅力のF1映画
モナコGPの前に、F1チームの代表やドライバーを対象にした、映画『F1/エフワン』の上映会がありました。まだ公開前なのでストーリーや詳細については言えませんが、率直な感想としては、レースシーンではオンボードカメラの映像が使われているので迫力があって、臨場感もあるなという印象です。シルバーストンやレッドブルリンク、ハンガロリンク、スパ・フランコルシャンなどのサーキットでも撮影していたので、“本物感”があります。レースシーンは実際の映像とCGを繋ぎ合わせて制作されていますが、すごくスムーズでした。ブラッド・ピットも相変わらずかっこよかったです!
もっとも僕はF1のなかで働いていているので、映画のなかで現実的でない描写があったり、会議でこんなことは言わないよね、となってしまいます。でも現実と合っているかどうかというのがこの映画の一番重要な点ではないですし、僕たち(F1で働いている人)は、作り手の人たちが「この映画を見てほしい」と思っている対象ではありません。そもそもこれはドキュメンタリー映画ではなくハリウッド映画です。だから細部まで正確である必要はないし、現実的ではないことがドラマ化されていていいと思います。ファンの方たちが大画面であの映像を見たら、その音やダイナミックな映像に引き込まれると思いますので、ぜひ見てもらいたいですし、感想も聞きたいですね。
■若手にも役立つ可夢偉のドライブ
TOYOTA GAZOO Racingの小林可夢偉がフランスのポール・リカールでハースのテストに参加しました。テストは2日間で、路面温度が50度を超えるようなかなり暑い環境下で、可夢偉は両日とも500km以上走りました。
TGRのドライバーの面倒を見ているアレクサンダー・ブルツが、「今の可夢偉は速い」と彼がドライバーキャリアのなかでもすごくいいところにいると教えてくれました。首の負担は大丈夫なのかと心配していたのですが(僕はテストに立ち会わなかったので)、2日間で1000km以上走ったというのはすごいと思います。
これまで宮田莉朋や平川亮をTPC(Testing of Previous Cars/旧型車を使用するテスト)に起用してきましたが、TPCについては今後も行う予定ですし、TGRのWECチームの代表権兼ドライバーという立場にある彼がF1をドライブするというのは、今のF1のクルマがどういうものであるのかを身をもって知るという意味でもいいことです。可夢偉自身がこのクルマのことをわかっていれば、次に若いドライバーが乗った時に「この人はこう感じているんだな」とか、「この人は何を理解していて、何がわかっていない」というのを判断する際にも役立つはずです。
https://twitter.com/HaasF1Team/status/1930645621657997359?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1930645621657997359%7Ctwgr%5Ece06e2f3fe691e2c9f05f7c798ebcbc3d8ccda85%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.as-web.jp%2Ff1%2F1219460
[オートスポーツweb 2025年06月13日]
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