DB5はデイビッド・ブラウン1番のお気に入り
トラクターなどの機械製造で財を成し、1947年にアストン マーティンの経営を引き継いだデイビッド・ブラウン氏。彼が手腕を発揮した約30年間に作られたモデルで、1番のお気に入りは1963年のDB5だったという。
【画像】アストン マーティンDB5 希少なシューティングブレーク 特別なDB2/4とDB4 最新DB12も 全120枚
アストン マーティンの技術者たちは、先代のDB4で経験を培い、完成度の高い4シーター・グランドツアラーを生み出した。今から約60年前に。
実際には、DB4 シリーズ5の改良版といっても嘘ではなかった。DB4 シリーズ6として、ロンドン・モーターショーで発表されていた可能性もゼロではない。
当時の価格は、4200ポンド。英国の平均的な戸建住宅より高く、ジャガーEタイプなら2台を購入できる金額だった。とはいえ、同時期のフェラーリやベントレーより、大幅に安くもあった。
1台の製造に費やされた工数は、合計1000時間。それを踏まえれば、お値打ち価格といえたのかもしれない。DB4 シリーズ5から429ポンド値上げされていたが、着色ガラスやツインサーボ・ディスクブレーキなどを獲得しており、妥当な変更といえた。
英国の量産車として初めて、ダイナモではなく現代的なオルタネーターを搭載し、パワーウインドウを標準装備した。洗練されたハンドビルド・モデルとして、特筆すべきアップグレードを得ていた。
4.0Lへ拡大された直6エンジンは286psを発揮
技術的にはキャリーオーバーといえたが、増加した車重に合わせて強化され、信頼性は向上していた。技術者のタデック・マレック氏が設計した直列6気筒エンジンは、3.7Lから4.0L(3995cc)へ拡大。トリプルSUキャブレターで、286psを発揮した。
エンジンは手作業で組み立てられた後、7時間の慣らし運転を経てシャシーに積まれた。ヘッドは、チェーン駆動のダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)。シリンダーボアは96mmで、バランス取りされたクランクシャフトは7枚のベアリングが支えた。
防錆処理されたシャシーは、ハロルド・ビーチ氏による設計。リアまわりにシートパンが追加され、ドアピラー部分にボックス構造の補強材を与えることで、先代から剛性が大幅に向上していた。
バッテリーは、トランク内からリアシートの下へ移動。燃料タンクが小さくなったものの、当時はBMCミニを1台買えるほどの価格のオプションで、エアコンも指定できた。
ちなみに、オーバードライブ・ギアは72ポンドのオプション。リミテッドスリップ・デフは30ポンド、アームストロング社製のセレクタライド・ダンパーは、14ポンドで装備できた。
リアアクスルは堅牢なリジッドで、トレーリングリンクとワットリンクを最適な位置にレイアウト。アストン マーティンは、操縦性にメリットがあると考えていた。
フロントサスペンションは、ダブルウイッシュボーン。シムを挟み、キャンバー角を調整できた。ステアリングはラックアンドピニオン式で、正確なレスポンスを叶えた。
最速の4シーターと主張されたヴァンテージ
ボディパネルはアルミニウム製。ストレッチフォーミング・プレス機で大まかな形が作られ、職人が手で美しいラインを叩き出した。
仕上がったパネルは、細いパイプ製フレームへリベットで固定された。これは、イタリアのカロッツェリア、トゥーリング社が特許を持つスーパーレッジェーラ構造と呼ばれる。さらにセルロース塗料で19回塗装され、防音処理が施された。
初期のDB5には静かな自社製の4速MTが搭載されたが、メカノイズの大きいZF社製の5速MTが人気を集めた。オプションでボルグワーナー社製の3速ATも用意されたが、後のDB6と異なり、指定された例は少なかった。
1964年10月には、190ポンド高いDB5 ヴァンテージが登場する。トリプル・ウェーバーキャブレターや専用カムシャフトなどが与えられ、4.0Lエンジンは329psへ強化。最高速度は、通常のDB5では228km/hだったが、241km/hへ上昇した。
アストン マーティンは、DB5 ヴァンテージを世界最速の4シーターだとアピールした。車内空間的には、多少の無理があったとしても。また、時速100マイル(161km/h)から停止までの時間は、6.0秒が主張された。
ただし、当時のモーターマガジン誌が実施した動力性能のテストでは、161km/hまでの加速は、過去2番目のタイムを残している。最高速度も、3番目に留まったようだ。
燃費は6.0km/Lで、この頃の高性能モデルとしては妥当。高速巡航時には7.0km/L以上へ伸び、一度の給油で約600kmを走れた。基本的な点検整備は、約4000km毎が指定されていた。
非常にレアなシューティングブレーク
スタイリングは、燃料フィラー・キャップが追加されているが、BD4 ヴァンテージと大きな違いはナシ。DB4 GT風の、カウリング付きヘッドライトが特徴だった。
ナンバープレート灯とトランクリッドのハンドルは、フォルクスワーゲン・カルマンギアからの流用。 バンパーのオーバーライダーは、フォード・コンサルのものが使われた。だが、それ以外はほぼ自社製。シートフレームも製造していた。
1963年から1965年間にラインオフしたDB5は、合計1021台。アストン マーティンの量産車として、歴代最高の成功を掴んだ。1964年の映画「007 ゴールドフィンガー」のヒットが拍車をかけ、1週間に12台以上というハイペースで生産された。
歴代のDBシリーズでの支持を受け、ドロップヘッドクーペ、コンバーチブルも登場。クーペの発表から約1か月後、1963年のパリ・モーターショーでお披露目されているが、納車は1964年5月へ遅れた。英国価格は、4562ポンドからだった。
スチール製ハードトップはオプションで、ソフトトップの収納空間を捻出するため、燃料タンクは両サイドのフェンダー内へ移設。それ以外のメカニズムは、クーペのDB5と同一で、合計123台が作られている。
非常にレアなのが、英国のコーチビルダー、ラドフォード社が手掛けたシューティングブレークだ。アストン マーティンによってデザインされ、裕福なオーナーが狩猟や乗馬スポーツを楽しむために作られたが、DB5の正式なカタログモデルにはならなかった。
この続きは、アストン マーティンDB5 希少なシューティングブレーク(2)にて。
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