■クルマはノーメンテナンスでは乗れない
普段、クルマを運転する際に、クルマに対して何か気を遣っていることはありますか。昔はクルマの寿命は約10万kmとよくいわれていました。1年1万kmの計算で10年ですが、もちろん乗り方によってはずっと乗ることもできます。
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近年では技術水準が上がり、故障などの頻度が減ったことから、ほとんどの人がクルマはノーメンテナンスで乗れるものと認識しているでしょう。
実際に、新車販売ディーラーの点検や車検のタイミング以外では、ほとんどクルマをチェックすることがない方もいますし、それでも異常が発生せずに乗れてしまうことも事実です。
しかし、そのような乗り方を続けていくと、無意識のうちにクルマの寿命を大きく削ってしまっているかもしれません。
最近では「慣らし運転」という言葉もあまり聞かなくなりました。慣らし運転とは、新車購入直後に行なうもので、エンジンの回転数などを一定期間、又は一定距離は抑えて使用することを示します。
クルマは多くの金属部品が組み合わさってできています。新車で購入したばかりのクルマは、それらのパーツの接触面が馴染んでおらず、その状態で大きな負荷を掛けてしまうと、部品に傷が付いてしまう可能性があることから、慣らし運転が必要といわれてきました。ところが、近年では慣らし運転への考え方はメーカーによって異なるようです。
スバルでは新車状態では1000kmまで慣らし運転を推奨しています。また、慣らし走行時はエンジン回転数を4000rpm以下に抑えるとしています。
しかしホンダにうかがったところ、また違ったアナウンスをしています。
「現在のクルマは、エンジンやその他の部品精度が向上しているため、昔からいわれているいわゆる『慣らし運転』を行なう必要はありません。しかし、機械の性能保持と、寿命を延ばすためという点で、クルマの取扱説明書に慣らし運転期間の記載がある場合は、その期間を。慣らし運転期間の記載がない場合は、1000kmまでは急発進、急停止などは避けてくださいと説明をしています。
慣らし運転期間中に、金属部品の接地面に『当たりが出てくる』といった表現がありますが、そういったことは、全くないわけではありませんが、いまはあまり気にならなくなってきていると考えています」(ホンダ)
近年では、部品自体の精度が上がってきていることもありますが、エコドライブの観点からも、急発進や急停止をするドライバーが減ってきているため、慣らし運転という概念がなくなりつつあるのかもしれません。
■エンジンを掛けてすぐに発進するのは大丈夫?
駐車してあるクルマに乗りエンジンを掛けてすぐに発進する。当たり前のように日常繰り返される行動であると思いますが、場合によってはクルマの寿命を縮める行動かもしれません。
クルマのエンジン内部にはエンジンオイルが入っており、金属摩耗を低減させたり、摩擦熱を放出したりする働きをします。
ほとんどのクルマのエンジンオイルは、エンジン下部に設置された「オイルパン」と呼ばれるケースに溜められており、エンジンが回転することによってポンプで吸い上げられ、エンジンの隅々までオイルが行き渡る仕組みになっています。
長期間駐車されているクルマのエンジンオイルは、重力により下に落ちてしまい、エンジンを始動してすぐは、エンジン全体にオイルが行き渡っていない場合があります。オイルが少ない箇所では、摩擦による負荷が掛かり、メンテナンスの期間が早まってしまう原因になりかねません。
週末のみクルマに乗って出かけるという使い方であれば、最初にクルマに乗るときだけでも暖機運転を行なった方がよいかもしれません。
ただし、暖機運転で注意していただきたいのは、停止して行なう「アイドリング暖気」と、比較的おとなしく走って行なう「走行暖気」があります。昔は「アイドリング暖気」を推奨していましたが、いまは「走行暖気」が推奨されています。水温と油温の上昇や、排気ガス浄化装置の温度を上げる(温度が低いと浄化性能が下がる)のは「走行暖気」の方が早いからという理由です。加えて、ご近所迷惑にもならないという利点もあります。
また、近年ではスポーツカーだけでなく、コンパクトカーやエコカーにも多く採用される「ダウンサイジングターボ車」にとっても暖気は大切です。
ホンダによると、「以前は水温が上がらないと、VTECの切り替えができないことがありましたが、近年のクルマですとそういった必要は無くなってきています。しかし、水温が低い状態ですと、アイドリングストップシステムが作動しません。また、ターボ車についてはエンジンが冷えた状態での急加速や空ぶかしはターボ装置の故障を防ぐために控えるように取扱説明書に記しております」
水温計が適切な位置に上がるか、水温低下中のランプが消えるくらいまでは、暖機運転がエコドライブにも影響を与えるようです。
■オイル交換時期は取扱説明書通りではないケースも
オイル交換は「1万kmまたは12か月毎に」など、取扱説明書には必ず書いてあります。しかし、車検以外で交換することがない人もいるかもしれません。
エンジンオイルには「潤滑、密封、冷却、洗浄、防錆(ぼうせい)」という5つの効果があり、劣化によりこの作用がひとつでも欠けてしまえば、エンジン本来の性能が損なわれてしまい、クルマの寿命を縮める原因になります。
また前出のホンダによると、取り扱い説明書に記載されている期間よりも、メンテナンスサイクルが短くなる環境や乗り方があるといいます。
「『シビアコンディション』と我々は呼んでいますが、同じ走行距離でも、山道であるとか、短距離の使い方が多い、氷点下の環境での使用が続くなどであれば、推奨している期間の半分で交換をしていただきたいと考えております。例えば、1万km又は12か月毎の交換と取扱説明書に記載されていたら、5000km又は6カ月毎のオイル交換を推奨しています」(ホンダ)
シビアコンディションとは、たとえば悪路や雪道の走行、30km/h以下の低速走行、アイドリングが多い、短距離の繰り返し走行(目安で8km/回)などが、そのクルマの走行距離の30%以上を占める場合をいいます。走行距離が長い場合(目安で2万km以上/年)も同様です。
渋滞の多い都市部での短距離のみの使用や近所への買い物が中心といった使い方は、クルマにとって厳しい環境です。
たくさん乗らないから交換しなくてよいのではなく、たくさん乗らないからこそ交換が必要ということになります。また、エンジンオイルは乗ってなくても空気に触れ酸化が進み、いずれ劣化していきます。エコドライブの観点からしても、取扱説明書で推奨されているタイミングで交換をするのが賢明です。
また、外装のケアも忘れてはいけません。鳥の糞、虫の死骸、潮風、冬場の凍結防止剤などが付着した状態を放置すると、ボディの錆や痛みの原因になります。クルマが汚れてしまった際は、まめに洗車することをおすすめします。
クルマの寿命は、年式や車種によって異なりますが、丁寧な運転を心がけることにより愛車の寿命が長くなり、燃費も良くなります。また、同乗者にも気持ちの良いドライブを楽しんでもらうことができるため、一石三鳥です。日常点検や洗車をして、心地良いドライブをしてみるのはいかがでしょうか。
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