この記事をまとめると
■シェルビー・スーパー・カーズというハイパーカーメーカーがアメリカにある
「スーパーカー」はわかるけど最近聞く「ハイパーカー」って何もの?
■世界最速ハイパーカーを目指し、2010年にエアロTT(後のトゥアタラ)の製作を発表
■2020年10月にSSCトゥアタラは平均速度508.73km/hを達成した
世界には日本では見ぬ知られざるハイパーカーがあった
アメリカのハイパーカーメーカーである「シェルビー・スーパー・カーズ(SSC)」社の名前を聞いたことのある人は、日本にどれだけいるだろうか。「あぁ、あのコブラで有名なシェルビーでしょ」と思った人は大きな間違い。カリフォルニアの「シェルビー・アメリカン社」は、かのキャロル・シェルビーによって1960年代に設立された超ビッグネームだが、同じアメリカでもワシントン州に本社を置く「SSC」は、ジェロッド・シェルビー氏によって21世紀を迎えてから設立された、小さなハイパーカーメーカーだ。
だが、彼と数十人ほどのスタッフが抱く野心は常識を超えていた。狙うのは世界最高速のハイパーカー。ブガッティやケーニグゼグ、あるいは同じアメリカにもヘネシーというライバルがいる戦いの中に、SSCは参戦しようというのである。
SSCが掲げた最高速の目標値は、すばり500km/h以上。同社はすでに2017年には、アルティメット・エアロで、閉鎖された公道上を411.71km/hで走行することに成功。それは、当時記録を保持していたブガッティ・ヴェイロンを破る、まさに驚異的な数字だった。
しかし、ジェロッドの胸中からは、どうしても500km/hへの挑戦、そして自らの記録を書き換えるために、最高速テストを挑んでくるだろうライバルの存在が消えることはなかった。そこで新たに開発が進められたのが、最初はアルティメット・エアロTTとも呼ばれた完全なニューモデル。
2010年11月に、同じワシントン州のシアトルにあるボーイング航空博物館でモックアップが披露されたそれには、のちに「トゥアタラ」のネーミングが与えられた。ちなみにトゥアタラとは、南半球に生息するとされるムカシトカゲの名前で、それは同時に背中の棘を意味しているという。トゥアタラのリヤセクションには、左右対となった2本のウイングレットが装着されているが、棘とはおそらくこれを意味するのだろう。
2011年8月のペブルビーチ・コンクール・デレガンスでは、やはりモックアップの展示が行われたが、一時は世界最速を誇ったSSCの新作だけに、そこに注がれる視線は非常に熱いものだった。エクステリアデザインは、フェラーリの599GTBフィオラノや、エンツォをベースとしたワンオフモデルのP4/5、あるいはマセラティのグランツーリスモを生み出した、かのジェイソン・カストリオタ。その大胆な曲面で構成されるボディは、全長で4430mm、全幅でも1991mmと現代のハイパーカーのなかでもコンパクトなサイズにまとめられている。
1750馬力のV8ツインターボで念願の500km/h超を実現
ミッドに搭載されるエンジンは、独自開発による6.9リッターのV型8気筒ツインターボで、最高出力は1750馬力、最大トルクも1736Nmという驚異的な数字だ。一方、軽量化も徹底されており、ターボやインタークーラーを含めた重量でも、それは200kgにも満たないとされる。
組み合わせられるミッションはトリプルカーボンクラッチHパターンの7速MT、もしくはセミオートマチックの7速。モノコックはもちろんのこと、ボディにもカーボンが積極的に採用され、車重は1247kgしかない。
0-100km/h加速で2.5秒を誇るトゥアタラにとって、その最高速は、もちろん世界最高の数字となることは当然の結果だ。2020年10月10日、SSCはネバダ州のラスベガス郊外にある国道106号線上の11.2654kmに及ぶストレートで最高速テストを実施。
ドライバーはレーシングドライバーのオリバー・ウェブ。記録は双方向の平均となるため、彼は2回の最高速テストに及んだが、その平均記録は508.73km/hというものだった。それはジェロッド・シェルビーの夢が叶った瞬間でもあった。
SSCではこのトゥアタラを100台の限定車として販売する計画であるという。そしてまたその先には、我々の常識では考えられない夢と、またその記録へと挑むライバルたちが存在することは間違いのないところなのである。
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