中国の電気自動車メーカーBYDが大躍進を遂げています。
メルセデスグループやBMWを押し退けて、2023年上半期の世界自動車販売台数トップ10に食い込みました。2021年は20位にすら入っていなかったメーカーです。
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BYDは著名な投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが10%近い株式を保有することでも知られています。世界中の超一流メーカーがひしめく自動車業界において、圧倒的な存在感を持つようになりました。
着実にテスラの売上規模に近づくBYD
BYDの2023年度上半期の売上高は前年同期間比で1.7倍となる2,601億元(約5兆3,151億円)、営業利益は同3.0倍の137億元(約2,800億円)でした。営業利益率は5.3%。電気自動車は電池にかかる費用が高く、製造にかかる総コストの4割程度を占めていると言われています。
そのため、国内外の主要メーカーは電気自動車部門で利益を出すのに苦心していますが、BYDはしっかりと営業利益を出しているのが特徴です。
テスラの2023年上半期の売上高は前年同期間比で1.4倍の482億ドル(約7兆1,873億円)、営業利益は同35.4%減の50億ドル(約7,456億円)でした。営業利益率は10.5%。営業利益率はテスラの方が高くなっています。
売上高は2兆円以上開きがありますが、BYDは伸び率が大きく、電気自動車業界の覇者だったテスラを追い越す勢いさえ感じます。
しかし、営業利益率はテスラが圧倒しています。これほど高収益体質なのはなぜでしょうか?
テスラの高収益体質を支える4要素とは?
テスラは伝統的な自動車メーカーとは異なる戦略を取りました。それが高利益率体質に結びついています。従来のメーカーと極端に違う要素は4つあります。
1. モデルの数が少ないこと
2. 高単価であること
3. 広告費をかけていないこと
4. 販売代理店を通さないこと
現在販売しているのは、モデルS、X、Y、3の4モデルのみ。モデルを絞り込むことによって共通のパーツを使ってコストを下げ、開発費の削減を図ることができます。
テスラがラインナップしているモデル
※TESLA:2023 Q2 Tesla Quarterly Update
新型車の市場投入に伴う、工場の新設も必要ありません。巨額の償却費を削減することができるのです。
テスラは高単価であることも見逃せません。モデルSやXは新車販売価格が1,000万円を超えます。それでもテスラの車は売れるのです。
これは創業者イーロン・マスク氏の戦略が奏功していると言えるでしょう。マスク氏はメディアに積極的に露出し、自身がSNSで情報を発信しました。それにより、彼の経営に対する姿勢や、テスラ社のビジョンに魅了される人々が続出しました。環境問題も相まってテスラの車を購入する機運も生まれたのです。
日本の自動車メーカーの場合、車の速さや広さ、快適性などの機能売りをしがち。テスラは独自のブランドを構築して盤石なファン層を固めました。
そのため、広告の出稿をほとんど行っていません。オーナーの紹介プログラムを構築し、販売戦略に信頼感を組み込みました。
更に代理店を通さず、Webでの直販スタイルをとっています。ディーラーを通す場合、自動車メーカーは一定のマージンを支払わなければなりません。テスラにはそれがないのです。
テスラが自動車メーカーの中でも、圧倒的な利益率を保持しているのはこのためです。
4か月ほどで6回の値下げ?
しかし、テスラにも焦りが見えてきました。
下のグラフはテスラの営業利益率の推移です。驚くべきことに、年度ではなく四半期ごとのものです。わずか1年ほどで営業利益率は17.2%から9.6%まで下がっているのです。
テスラの営業利益率推移
※TESLA:2023 Q2 Tesla Quarterly Update
当然、原材料高やエネルギー高の影響を少なからず受けているでしょう。しかし、要因として大きいのは販売価格の引き下げです。
テスラは2023年4月18日にモデルYとモデルSの値下げを発表しました。なんと、この値下げは2023年に入って6度目。1度で3,000ドル(45万円)程度引き下げました。
値下げを行っているのはアメリカだけではありません。ヨーロッパ、中国、日本でも大幅な価格の引き下げを行っています。
また、上で紹介したモデル表を見ると分かる通り、トラックのTesla Semiや近未来的な新型車Cybertruckなどの新型車の開発、市場投入準備を進めています。ラインナップを拡大してシェアを獲得しようとする姿が浮かびます。
こうした要素がテスラの利益を圧迫しているのです。
パーフェクトな自動車にこだわらないBYD
電気自動車業界の黒船とも言える存在がBYDです。
この会社はもともとバッテリーメーカーとして創業しており、現在も車載用の全個体電池の開発を行っています。
電気自動車の普及のポイントの一つが、エネルギー密度の向上です。
BYDは2021年にLFPバッテリーのみを使った低価格の電気自動車を販売すると発表しました。
LFPはエネルギー密度が少ないという最大の弱点があります。しかし、長寿命でコストパフォーマンスに優れているという長所もあります。
エネルギー密度が低いため、多くの国内自動車メーカーはLFPの搭載には後ろ向きでした。しかし、BYDは電池セルの搭載効率を高めることにより、エネルギー密度の向上を図りました。搭載方法を工夫することにより、弱点を克服したのです。
こうして、BYDはコンパクトEVを当時166万円という超低価格で販売することができました。
シェアの拡大という大命題のもとで、技術力と知恵、工夫を総動員して戦略に合致した安価な自動車を作り出す。これがBYDの強さの秘訣です。
日本は電池のエネルギー密度の分野では、世界をリードしています。しかし、長距離移動に耐えられるという機能にこだわりすぎたあまり、電気自動車の販売台数で遅れをとっているように見えます。
BYDは、街乗り用として電気自動車、遠出用にはPHV(プラグインハイブリッド車)を販売するというように、用途に合わせてモデルを切り分けています。
完璧な製品を送り出そうとする日本の自動車メーカーと、目的に合わせて手法を変化させるBYD。地殻変動が起こる自動車業界で、その違いが浮き彫りになってきました。
取材・文/不破聡
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そうした負の部分を負う頃には、そのメーカーがなかったりする。とばっちりだけはごめんだ。