■経営トップが語った「シルビア愛」とは
2025年10月上旬、日産の取締役であり、代表執行役社長兼CEOを務めるイヴァン エスピノーサ氏にインタビューを実施。
現在、日産は力強い再建プロセスを推進していますが、その中でクルマ好きの誰もが熱望する「シルビア」の話題に切り込むと、エスピノーサ氏の胸の内にある熱い思いが明かされました。
企業戦略やビジネスの展望といったシビアな話に終始するかと思いきや、伝説的なFRスポーツカー「シルビア」について問われたエスピノーサ氏は、その復活を強く望んでいることを示唆しました。
復活には極めて高いハードルが存在すると認めながらも、その実現を心から願う理由とは一体何なのでしょうか。
■●復活を願う声が絶えない「シルビア」の軌跡
日産を象徴するスペシャリティクーペとして、シルビアは1965年の初代(CSP311)誕生以来、およそ40年の長きにわたり、多くのクルマファンに愛されてきました。
特に人気を博したのが、1988年に登場した5代目「S13」です。バブル期の絶頂期に発売されたS13は、流麗なスタイリングとロングノーズ・ショートデッキというスポーティなプロポーションから、当時の「デートカー」として絶大な人気を獲得します。
また、乗り心地の良いマルチリンク式サスペンションを採用した足回りと、曲線を多用した上質な内装は、女性ユーザーにも支持されました。
同時に、その軽量なFR駆動とターボエンジンを搭載した「K’s」グレードは、走行性能を追求する「走り屋」たちにとっても格好の素材となり、スポーツカーとしての地位を不動のものとします。
その後、ボディサイズを拡大した6代目「S14」を経て、運動性能を重視し、再びコンパクトな5ナンバーサイズに戻した最終型7代目「S15」が1999年に登場。
2002年に生産が終了して以降、20年以上にわたり、その復活を求める声は世界中のファンから上がり続けています。
■●幻の「IDx」に込められたブランドの将来像
シルビア復活への期待が高まった時期として、多くのファンが思い起こすのが、2013年東京モーターショーで公開されたコンセプトカー「IDx(アイディーエックス)」です。
IDxは、若年層を含む次世代の顧客をターゲットに開発されたFRスポーツクーペで、クラシカルなデザインと最新技術を融合させた意欲的なモデル。
特に1970年代の「ダットサン510(3代目ブルーバード)」からインスピレーションを受けたとされるレトロな箱型デザインは、当時のシルビアの再来ではないかと大きな話題を呼びました。
IDxは、シンプルで日常使いを想定した「IDx フリーフロー」と、高性能1.6リッター直噴ターボエンジンを搭載し、レーシングカーのようなアグレッシブなデザインを持つ「IDx NISMO」という2つのバリエーションが存在。
これほどまでに期待値が高かったにもかかわらず、残念ながらIDxの市販化は実現に至りませんでした。
では、イヴァン エスピノーサ氏は、この「シルビア」という車名、そしてIDxが示唆した「手の届くFRスポーツ」のコンセプトに、どのような価値を見出しているのでしょうか。
■CEOが語る「最高の軽量スポーツカー」
IDxのようなモデルを今後も追求するべきかという問いに対し、エスピノーサ氏はまず、シルビアへの個人的な愛着を率直に語りました。
「この質問はいつもされますし、私の答えもいつも同じです。私はシルビアを復活させたいと強く願っています。それが実現できるかどうかは分かりません。なぜなら、そのコンセプトを現代で具現化するのは非常に難しいからです」
しかし、その難しさを理解しつつも、復活を諦められない理由として、彼は最終型S15を挙げます。
「特に高出力2リッターターボエンジンを搭載したS15は、日産の歴史の中でも私のお気に入りの一台です。私にとって、このクルマは私たちが作った最高の軽量スポーツカーの一つです。
非常に軽く、優れたチューニングが施されたシャシのおかげで、シャシとパワートレインの組み合わせがとても楽しいのです。こうしたクルマを届けたいと心から思っています。
しかし、今日の法規制や衝突安全性能などを考えると、これほど軽量なシャシを持つクルマを作るのは非常に困難です。それでも、これは私が復活させたいと強く願う車名の一つです」
現代の安全基準をクリアしながら、S15のような「軽量でチューニングされたシャシ」を実現することの技術的な難しさを認めつつも、その「楽しさ」という本質的な魅力が、CEOの心を捉え続けていることが分かります。
■●シルビア復活が持つビジネス的な意義
そして、エスピノーサ氏はIDxのコンセプトが持つビジネス的な価値についても言及し、単なるノスタルジーではないことを明確にしました。
「(IDxのようなクルマは)多くの目的に役立つと思います。一つは、先ほど申し上げたように、日産ブランドを表現するのに役立つクルマになるということです。
二つ目に、若い顧客層にアピールできる可能性がある点です。自動車メーカーとして、継続的に若いお客様をブランドに取り込むことは非常に重要です。
これは価格だけの問題ではありませんが、もちろん価格も一つの要素です。しかし、若いお客様がブランドを追いかけたくなるような魅力的な何かが必要です。
これがビジネス的な視点から見ても、私がこの車名(シルビア)に非常に関心を持っている理由の一つです。
現時点でお話しできることは何もありません。それは単に私の頭の中にあるアイデアに過ぎませんが、いつの日か実現できることを願っています」
※ ※ ※
復活は未だ「頭の中のアイデア」に過ぎないとしつつも、シルビアが持つ「ブランドの個性」を際立たせる力、そして未来の顧客である「若い世代の心をつかむ」というビジネス上の重要性を、経営トップは深く認識しているのです。
日産は現在、経営の効率化や不採算事業の整理を進めるフェーズにありますが、エスピノーサ氏が常々語る企業運営の「共通のゴール」は、単なる財務目標の達成ではありません。
最も重要なのは、「ハッピーなお客様」を生み出すことであり、財務目標はあくまでその結果に過ぎない、という考え方です。
そして、お客様をハッピーにする「良いクルマ」とは、「明確なキャラクターを持つクルマ」であると、エスピノーサ氏は定義しています。
それは、単に速いスポーツカーという意味ではなく、例えば、「人を中心とした技術」によって、高性能でありながら誰もが安心して運転できる「GT-R」のように、開発者の情熱と、そのクルマが持つべき本質が一致していることです。
シルビアという車名、そしてIDxが示した「手の届くFRスポーツ」というコンセプトは、まさに日産が長きにわたり培ってきた「人を中心とした技術」、そして「走りの楽しさ」という根幹の価値を、次世代に最も分かりやすく伝える「ブランドの核」となる可能性を秘めていると言えるでしょう。
エスピノーサ氏の個人的な「シルビア愛」と、未来の顧客を獲得するという経営的視点。
この二つの情熱が結びついた時、日産は再びその輝きを取り戻し、長年のファンが熱望するシルビアが公道を走る日が実現するのかもしれません。私たちはその日を、期待とともに待ち続けたいと思います。(くるまのニュース編集部)
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