レクサスの大型オフローダー「LX570」は、日本導入から5年が過ぎた今も、中古車市場では高値で取引されている。なぜか? 今尾直樹が考えた。
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レクサスのラクジュアリー・クロスオーバー、LX570はなぜかくも大人気なのか?
レクサスのホームページをのぞいてみると、この原稿を書いている時点(2020年9月初め)で、LX570の認定中古車は15台が掲載されていた。実は、筆者が最初にのぞいたときは17台だった。それが数日のうちに、2台売れてしまった。
いちばん高い個体は、2018年式のブラックシークエンスという特別仕様車で1050万円。新車価格は1170万円だったから、その差は120万円。走行距離4000kmという新車同然の個体であるにしても、2年落ちの中古車が新車価格のおよそ90%を維持している。すごくないですか。
2020年式LX570の新車価格は1135万6481円だから、この個体の価格にプラス85万円と6481円で新車が買える。お金持ちがいくらせっかちで、即納だからとはいえ、2年落ちの中古車にこの価格!!
ちなみにおなじレクサスの認定中古車でも、旗艦「LS」の「500hエグゼクティブ」、2019年式、距離5000kmが1410万円で、新車価格1640万5000円のおよそ86%。おなじグレードの2017年式、距離2万5000kmだと1080万円で66%にまで下がる。
一方、LX570の2017年式、8万7000kmは、なんと798万円。3年落ちで、こんなに走っているのに、当時の新車価格1115万円の約72%を維持している(2019年10月以前の新車価格とこんにちとの2%の消費税の違いは、ここでは消費者が支払う金額ということで無視させていただいております)。
800万円弱もする中古のLX570を買うのなら、姉妹車のトヨタ「ランドクルーザー」のいちばん高いグレード、ZX、697万4000円を新車で買ったほうがよい、と、考えるひともいらっしゃるのではあるまいか。ランクルのエントリー・モデルのGX だったら482万6800円だから、300万円の節約にもなる。現行のランクルは、LX570の5.7リッターV型8気筒ガソリン・エンジンに較べ、排気量がちょっと小さいとはいえ、4.6リッターもあって、基本的には同じV8である。機構的なもうひとつの違いはギアボックスで、LXが8速ATなのに対して、ランクルは6速ATで、もちろん内装はレクサスほど豪華ではない。
であるにせよ、筆者にはレクサスLX570の中古車を買うひとの気持ちがよくわからない。この大型ラグジュアリー・クロスオーバーの人気は奈辺にありや? われわれはその心情を理解すべく、レクサスから広報車を借り出し、箱根までの往復ドライブを試みた。
ヘビー・デューティ4WD
LX570の広報車は、なるほど説得力を持っていた。全長5080×全幅1980×全高1910mm、ホイールベース2850mmという巨躯で、最低地上高は225mmもある。ランクルより130mm長くて、30mmほど背が高い。全長が長いのはフロントのデザインの違いによるものだけれど、ひと目でレクサスだとわかる、個性的な面構えが好き。と主張するひとがいらっしゃっても、わからないことはない。
ボディはソニックチタニウムという濃い目のシルバーで、ドアを開けると、サンフレアブラウンという鮮やかなオレンジ色に近い茶のレザーのシート表皮が目に飛び込んでくる。ステアリング・ホイールには本木目のウォールナットがあしらわれていて、ロールス・ロイス、ベントレーにも通じる、伝統的な別世界感というべきゴージャスなムードを醸し出している。
レクサス広報によると、LXのターゲットは「ラグジュアリーSUVをお求めのお客様のなかで、本格SUVであることに強いこだわりを持つ方々」である。レクサスLXの兄弟車であるトヨタ・ランドクルーザーの頑丈さ、信頼性、耐久性は世界中で高く評価されており、もはや神話レベルにある。
最近のグローバルの販売台数トップ3は、北米、ロシア、中国の順で、なるほど過酷な気象条件の土地が含まれているように思われる。2017年は中国の代わりにアラブ首長国連邦がその地位にいたことも、本格オフロード4WDとしてのLX570の能力を裏付けるものだろう。
そういえば、2007年に現行ランドクルーザー200が発表されたおり、いかにランクルの耐久性が優れているか、世界中の過酷な現場でそのことが絶賛されているか、を、開発担当者が誇らしげに話しておられた。
彼らの期待に応えるべく、ランクル200はあえてラダーフレーム構造とし、フロント・サスペンションは独立式のダブル・ウィッシュボーンだけれど、リアはリジッドを採用。
未舗装の荒れた路面を80km/h程度で走る続ける能力なら、これに勝るクルマはない。という意味のことを担当者はこれまた誇らしげに語った。
ラダーフレーム、フロント独立式、リア固定式サスペンションは、2018年に登場した現行メルセデス「Gクラス」でも採用されており、これぞヘビー・デューティ4WDの基本形になっている。
ちょっと古い高級車の味わいのあるモダン・カー
そうした共通項のせいか、筆者はレクサスLX570で東名高速を巡航しながら、Gクラスに似ている、と思った。直進安定性がちょっと昔のクルマ風というか、まっすぐ走ってはいるけれど、ビシッとしない感覚がある。なんとなくトラックっぽい。リジッド・アクスルの特徴である。
それでも、乗り心地が意外といいのは、電子制御の可変ダンピング・システムが活躍しているからだろう。タイヤはダンロップのグランドトレックPT3Aというオンロード向けのSUVタイヤを履いている。サイズは275/50R21とかなり存在感がある。にもかかわらず、大きなショックが伝わってこないのは、ボディと別体のラダーフレームの恩恵なのかもしれない。
油圧を用いた可変ダンピングは、スイッチひとつで、フロントを50mm、リアは60mm、最低地上高を上げて、オフロードの走破能力を高める。乗降時にはフロントを60mm、リアを40mm下げることもできる。
5.7リッターV型8気筒ガソリン自然吸気ユニットは、スポーツ、あるいはスポーツ+モードに切り替えると、野太くも、どこかで聞いたことがあるV8サウンドを発する。排気量こそ異なるものの、レクサス「LC500」の5リッターV8と同種の音質なのだ。LC500は最高出力477ps /7100rpm、最大トルク540Nm/4800rpmを誇る。LX570は377ps/5600rpmと534Nm/3200rpmで、SUVらしく低速トルク重視に仕立てられている。
山道では、あくまで大きくて、重いものを操っている感がある。車重は車検証で2690kgもあるから、加速は豪快で、下りは、飛ばすと、ちょっぴりコワイ。ブレーキの制動力それ自体は十分であるにしても、フィールがいまひとつカチッとしていない気がしたからだ。
してみると、LX570の真骨頂は、都市内や高速道路をゆったりと走っている、その瞬間にある。室内は静かで、日本車としては珍しいウッドとレザーが用いられた空間のなか、多くのクルマを上から見下ろしつつ、大排気量V8が生み出すゆとりのトルクでもって、ときに豪快に加速し、彼らと自分との違いを感じて悦に入る。ちょっと古い高級車の味わいのあるモダン・カーでもある。
中古車価格高値安定の理由は……
レクサスの広報によると、LX570の国内のユーザーの平均年齢は46.9歳。39歳以下が30%、40代が35%、50代が20%、60歳以上が15%を占めている。新車価格が1000万円以上の高級車だから、40歳以上が70%を占めているのも当然だ。けれど、注目すべきは60歳以上が15%にとどまっていることかもしれない。レクサスLX570のオウナーというのは、元気で活動的な世代なのだ、おそらく。
地域別に見ると、東京、名古屋、大阪、札幌、福岡などの都市部でおよそ50%を占めている。逆にいえば、半分がLX570のSUVとしての真価を発揮する地方で販売されたことになる。
でもって、今回の試乗とレクサス&トヨタの広報からいただいた数字をもとに筆者が思いついたレクサスLX570の中古車価格高値安定の理由は……、市場のタマが少ないということに尽きる。
がちょ~ん。
当たり前にすぎる回答で、どーも、すいません。
そもそもレクサスLX570は国内の導入が2015年と遅かった。もっとも売れた年が2016年で2840台、以後、1300台、1180台、1140台と続いている。2015年が780台だったから、全部足しても7240台。これが日本にあるLX570の総数ということになる。これはいかにも少ないのではあるまいか。
グローバルで見ても、中国の成長によって増加傾向にあるとはいえ、年間販売台数は4万台を超えたことがない。コンスタントに2万~3万台売れてはいるものの、たとえばポルシェ「カイエン」の2019年の販売台数の9万2055台と較べると、LX570は4分の1から3分の1程度の規模でしかない。
ちなみに兄弟車のランクル200の国内販売台数も、モデルチェンジした翌年の2008年こそ8090台を記録しているけれど、それ以降はLX570のせいぜい倍程度の数字で、累計販売台数は5万2140台にすぎない。13年も販売されているのに……。
なぜトヨタ=レクサスは、この世界でもっともタフなクロスオーバーをもっと売ろうとしないのか?
すぐに思いつく理由は3つある。ひとつは、最初から数は見込めないクルマだから。でも、一定の需要は必ずある。もうひとつは、燃費が悪いから、たくさん売れると、メーカー別の平均燃費、いわゆるCAFEによからぬ影響を与える可能性がある。3つめは、筆者の単なる推測です。売っても儲からないから、ではあるまいか。ラダーフレームにV8を搭載するなんていうのは、手間がかかりすぎて、割に合わない。ポルシェ並みの価格をつけられれば別でしょうけれど、トヨタは4.6リッターV8のランクルを500万円以下で提供している。これを良心的といわずして、なんといいましょう。
ランドクルーザーは、トヨタが長年にわたり、誇りと良心の両輪でもって、世界中のひとびとからの期待に応えるべく、地球上でもっともタフなSUVとして開発・生産している。殺しても死なないタフネス。
そういえば、10年ほど前のBBCの人気テレビ番組『トップ・ギア』でも、トヨタ「ハイラックス・ピックアップ」を海に沈めたり、上から落としたり、鉄球をぶつけたり、火をつけたり、高層ビルの屋上に置いて爆破したり、したのに動き続けたというエピソードがつくられた。これぞ現代の神話。耐久性と信頼性というトヨタの価値の源泉を世界にアピールしたのが、1954年から続くランドクルーザーである。
レクサスLX570はそのランクルを父に持つ、いわば神の子である。走行距離10万km なんて朝飯前。という無類のタフネスに、ウォールナットとレザーが加わっている。しかも生産台数が少ない。需要が供給を上まわっている。ゆえに、中古車になっても、世界中で価格が下がらない。自動車ビジネスにおける、いわゆる計画的陳腐化とは対極にあるクルマ、それがレクサスLX=ランクル200なのだ。
文・今尾直樹 写真・角田修一
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