関税逆風下の現地生産戦略
ブルームバーグなど複数の報道によれば、トヨタ自動車は2027年半ばまでに、7車種の電気自動車(EV)を米国市場に投入する見通しだ。現在販売中の2車種に加え、数か月以内に新たに3車種を輸入し、2026年には2車種の現地生産を始める計画である。
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トランプ政権による自動車関税の発動や、EV優遇措置の撤廃といった逆風のなか、トヨタは米国におけるEV展開で反転攻勢に出たかたちだ。
本稿では、トヨタがEVシフトを強める背景を探る。併せて、これまで掲げてきたマルチパスウェイ戦略が転換点を迎えつつあるのかを検証する。
「bZ4X」シェア2%止まりの現実
米調査会社コックス・オートモーティブによると、2025年第1四半期(1~3月)の米国におけるEV販売台数は、約30万台だった。前年同期比で11.4%増となったが、前四半期(2024年10月~12月)からは19%減少した。主因は
「テスラの販売減少」
で、市場全体の成長を押し下げたかたちだ。今後、EV購入に対する補助金制度が廃止されれば、販売の伸びはさらに鈍化する可能性がある。
トヨタは電動スポーツタイプ多目的車(SUV)「bZ4X」の投入によって、前年同期比でおよそ3倍の販売増を記録した。ただし、米国市場におけるEVシェアは約2%にとどまる。2024年以降の伸び率では、シボレーが119%増と突出し、キャデラックは37%増、BMWは26%増となった。各社とも新型モデルの投入が奏功している。
米国の消費者はEVの航続距離を重視する傾向が強い。これに対応する形で、メーカー各社は改良を進め、販売増につなげている。一方で、トヨタのEV投入は限られ、航続距離も市場の期待に届いていない。こうした製品戦略の遅れが、EV販売の停滞を招いた根本要因といえる。今後の巻き返しに向けた改善が求められる。
また、カリフォルニア州は2035年にガソリン車の販売を禁止するZEV規制を打ち出している。すでに全米で10州以上が同様の方針を導入済みだ。これらの州では日本車のシェアが高く、トヨタにとってもEV強化は避けて通れない局面にある。
慎重かつ段階的な攻勢の理由
トヨタが米国で新たに投入するEVは、年後半以降に順次発売される。対象車種は「C-HR」、スバルと共同開発した「bZウッドランド」、レクサスブランドの「ES」の3モデルである。いずれも米国へ輸出され、自動車関税の対象になる可能性がある。
このほか、新型SUV2車種は2026年から米国で現地生産される予定だ。生産拠点はケンタッキー州ジョージタウン工場とインディアナ州プリンストン工場。ただし、モデルの詳細はまだ公表されていない。
トヨタは通常、年間販売が10万?15万台規模に達しなければ、生産ラインに新モデルを組み込まないとされる。仮に新型EVを米国で生産しても、当面は需要が供給に追いつかず、生産過剰に陥る可能性がある。
こうした余剰分については、EV普及が米国よりも速い地域への輸出が検討されている。米国市場はEV需要が緩やかに伸びている段階にあり、短期的な急増は見込みづらい。まずは生産能力の段階的な消化を図りつつ、輸出を含めた多角的な戦略が求められている。
グローバル戦略との整合性
国際エネルギー機関(IEA)は2025年5月14日、最新の「グローバルEVアウトルック」を公表した。2024年の世界におけるEV新車販売台数は1750万台。前年比で25%を超える増加となった。ただし、2023年の前年比は35%であり、成長の鈍化が鮮明となっている。
一方で、全新車販売に占めるEV比率は18%から22%に上昇した。米国市場では、2024年のEV販売台数が152万台に達したが、伸び率は前年の40%から10%へと急減している。
IEAは2025年の米国におけるEV販売見通しについて、
・関税の上昇
・最大7500ドル(約107万円)の購入補助金の廃止
がマイナス要因になると指摘する。その上で、おおむね10%前後の成長を見込んでいる。
こうした環境下で、トヨタが推進してきたマルチパスウェイ戦略、すなわちハイブリッド車(HV)を軸とする技術展開は、一定の需要を取り込んできた。とはいえ、EV分野での出遅れは否定できず、マルチパスウェイの位置づけは時とともに変化を余儀なくされている。将来的には、HVがトヨタの主戦場でなくなる可能性もある。
現在、トヨタが米国でEVのラインアップを拡充しつつあることは、組織的な戦略転換の兆候と読み取れる。米国以外の市場でも新型EVの投入が加速しており、ハイブリッド重視からの転換が進行している可能性がある。
関税リスクと北米工場の役割
トヨタが、輸入車を含めたEVラインアップを米国で拡充していく姿勢は、関税強化を掲げるトランプ政権の政策を踏まえると重要な意味を持つ。米国へ輸出されるEVには自動車関税が課される可能性があり、企業の経営環境に直接的な影響を与えかねない。
それでもトヨタが輸入を継続する背景には、米国国内でのEV生産強化とのバランスを取り、リスクを分散する意図があると考えられる。
一方でトヨタは、米国内の工場を輸出拠点として活用する構想も視野に入れている。部品調達から最終組立まで、サプライチェーン全体を含めた戦略とみられる。
仮にトヨタが米国からの自動車輸出を拡大すれば、それはトランプ政権が掲げる「製造業回帰」と「貿易赤字の是正」という方針に合致する。こうした動きは、政治的にも歓迎される可能性が高い。
トヨタの北米戦略は、単なる販売対応にとどまらず、地政学的リスクに対する備えという側面を強めつつある。
EV戦略の段階的移行
トヨタはこれまでHVを中核に据えることで、電動化の過渡期において安定的な収益構造を確保し、他社よりも低リスクで技術移行を進める土台を築いてきた。この構図は、グローバル市場の温度差を逆手に取る地政学的な戦略としても機能していた。だが現在、その前提が揺らぎつつある。電動化への期待が単なる環境対応の枠を超え、各国の産業政策やサプライチェーン主導権を巡る競争へと転化しつつあるからだ。
HVは、内燃機関と電動機の双方を搭載することで、燃費性能と航続距離に優れ、充電インフラが未整備な地域にも適応できるという強みを持つ。しかし、こうした適応性は、裏を返せば、電動化の構造転換に
「本質的な貢献」
を果たさない現状維持の技術としての側面も孕んでいる。すでに欧州や中国では、HVを中間解として容認しつつも、長期的にはEV単独によるゼロエミッション構造の構築を主眼に置いた規制設計が進む。つまり、HVは制度的にも市場的にも一時的な技術としての扱いを受け始めている。
こうしたなか、トヨタに突きつけられているのは、製品ポートフォリオの物理的再構成だけではない。むしろ、本質的な課題は
「時間の配分」
である。すなわち、EV市場が本格的に立ち上がる前に、どこまで開発体制とブランドの座標軸を再定義できるかが問われている。とりわけ、既存のHV資産が利益を生み続けている間に、いかにEV開発への内部投資を切り替えるか。この切り替えのタイミングを誤れば、収益性は維持できても市場の変曲点を取り逃すことになる。
現段階では、トヨタのEV攻勢は組織的な試験展開の色彩が強い。
・限定的な投入車種
・局所的な生産体制
・段階的な市場反応の観察
これらは、直線的な技術進化ではなく、変動の多い市場に対して段差的にアプローチする戦術に見える。リスクの分散というより、時間軸を複数に分割し、それぞれの局面で異なるリソースを割り当てる戦略的分岐といえる。
今後、米国を含む主要市場でEV普及の条件が整い、車両価格と性能のバランスが量産段階に達したとき、トヨタは最初からEVで勝負していたかのように展開を強化できるかどうか。そのとき、HVに依拠してきた過去が重荷となる可能性もある。技術の蓄積が市場適応力へと転化しない限り、それは単なる延命措置に過ぎない。
トヨタのEV展開は、確かにひとつの転機を迎えている。だが、それが本格的な転換なのか、あるいは既存戦略の射程を延ばすための補助線なのかは、今後数年の製品投入と市場反応によって明らかになる。
現時点では、EV戦略の中核を担う技術と供給網の本格的再設計には至っておらず、あくまで戦略軌道のなかで試行を繰り返している段階と見るべきだろう。トヨタが次に選ぶ分岐は、経営と開発の優先順位そのものを揺るがす選択となるに違いない。
トヨタの動きが示す未来の可能性
米国市場でのトヨタのEV攻勢は、本気の挑戦なのか、それとも限定的な試行にすぎないのか。その答えは、HVで築いた優位な地位をEVでも獲得できるかにかかっている。
トヨタの前に立ちはだかるのは、EV市場で先行する競合各社だ。競争に勝つには、出遅れの印象を早急に払拭し、残る課題を迅速に解決する必要がある。
トヨタのEV攻勢が今後どう進展するかを見極めるには、本格的なEV投入か、マルチパスウェイ戦略の維持か、その動向に注目すべきである。号砲を鳴らしたトヨタは、戦略の重要な分岐点に差し掛かっている。
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日産とかならボロカスなのに。