BMWアルピナ最後の純血モデル「B4 GT」に、『GQ JAPAN』ライフスタイル・エディターのイナガキが乗った!
BMWアルピナB4 GT グランクーペの特徴
後世に語り継がれるべき希少な存在──BMWアルピナB4 GT グランクーペ試乗記
1.アルピナはどこまでもジェントルで穏やか2.アルピナならではの特別な空間3.真のグランツーリスモ1.アルピナはどこまでもジェントルで穏やか
(前のページから続く)凶暴なスペックを秘めながらも、実際のドライブフィールはBMWのMモデルとは対極にあると言っても過言ではない。
アクセルを踏み込むと、エンジンは高回転域まで一切のストレスを感じさせず、シルキーに、そしてリニアに吹け上がっていく。
Mモデルが、ドロドロとした荒々しい排気音とともにドライバーの闘争心を煽るハードコアなスポーツカーであるならば、アルピナはどこまでもジェントルで穏やかな振る舞いを見せる。
力強いパワーを内包しつつも、決してそれをひけらかすことのない、大人のための“スポーツ・ラグジュアリー”の哲学が見事に体現されているのである。
B4 GT グランクーペの真骨頂であり、最大の驚きをもたらすのが、卓越した乗り心地である。前述の通り、フロント35扁平、リア30扁平という極めて薄いプロファイルの20インチタイヤを装着しているにもかかわらず、走り出した瞬間にその事実を疑うほどの快適性に包まれる。
特にアルピナ独自の「コンフォート・プラス」モードを選択した際の足回りの動きは秀逸極まりない。
路面からの突き上げや不快な振動を見事に吸収し、まるで18インチの分厚いタイヤを履いているかのような、しっとりとした滑らかな乗り味を提供する。
一方で、スポーツモードを選択しワインディングに持ち込めば、一転して引き締まった足回りが20インチタイヤのグリップ力を最大限に引き出し、巨体を意のままに操るダイナミクスを披露する。
1台のクルマの中で、極上のグランドツアラーと一級品のスポーツカーの二面性をこれほど高い次元で両立させている点は、アルピナのサスペンション・チューニングの魔法と言わざるを得ない。
2.アルピナならではの特別な空間
インテリアに目を移すと、ベースとなった4シリーズの機能的なレイアウトを踏襲しながらも、アルピナならではの特別な空間が広がっている。
試乗車には、オプション価格¥236,000の「ヴァーネスカ・レザー ブラック」が採用されており、上質な黒革のシートにはエクステリアカラーと呼応するようなグリーンのパイピングとステッチが丁寧に施されている。フロントシートのヘッドレストには“GT”の文字が刺繍され、特別感を煽る。ドライバーの目の前にあるステアリング・ホイールのセンターには、BMWのプロペラマークではなくアルピナの伝統的なエンブレムが輝き、メーターパネルも専用のデザインが採用されている。また、センターコンソールにはアルピナのプロダクション・プレートが装着されており、限定生産された特別なモデルであるのを常に実感させてくれる。
車両価格は¥17,100,000に設定されているが、試乗車には数多くのオプションが装備されている。前述のボディカラーとレザーシートに加え、セーフティ・パッケージ(¥620,000)、電動ガラス・サンルーフ(¥165,000)、アクティブシート・ベンチレーション(¥307,000)、Harman/Kardonオーディオ(¥80,000)などが追加され、オプションの合計金額は¥2,319,000に上る。結果、展示車両の合計価格(消費税込)は¥19,419,000。約2000万円の価格は決して安価ではないものの、純血アルピナの最後を飾る歴史的価値と、それに見合う圧倒的なパフォーマンス、そして極上の乗り味を考慮すれば、十分にその価値を見出せるだろう。
グランクーペのボディ形状がもたらす実用性も、このクルマの大きな魅力である。後席へのアクセスについては、クーペライクなルーフラインと傾斜したCピラーのデザインにより、乗り込み口がやや狭くなっており、乗降時には多少頭をかがめる必要がある。
しかし、一度車内に収まってしまえば、そこには意外なほどの空間が広がっている。身長170cmの乗員が後席に座った場合、頭上にはおよそこぶし1つ分のクリアランスがあり、膝前にもこぶし1つ分のスペースが確保されているため、大人が長時間乗車しても実用上問題のない居住性を備えている。後席でもフロントと同じ上質なヴァーネスカ・レザーの恩恵を受けられるし、センターアームレストや後席用のエアコン吹き出し口も完備されているため、パッセンジャーは高い快適性を享受できる。
そして何より、あの極薄タイヤを履いているとは信じがたい「コンフォート・プラス」の魔法のような乗り心地は、後席においても明確に体感でき、どこまでも遠くへ出かけたくなるような心地よさを提供してくれる。
また、荷室についても実用的だ。大きく開く電動式のリアハッチゲートが備わっており、開口部が広く奥行きのある広大なトランクルームが出現する。フロアには「ALPINA」のロゴが入った専用マットが敷かれており、リアシートは分割可倒式で、長尺物や大量の荷物を積載する際にも柔軟に対応できるユーティリティ性を誇る。
3.真のグランツーリスモ
総じて、BMWアルピナ B4 GT グランクーペは、狂気とも言えるハイパフォーマンスと、高級サルーンを凌駕するほどの洗練された乗り心地を、息を呑むほど美しい4ドアクーペのボディに内包したのが特徴だ。
独自ブランドとしてのアルピナの終焉が近づく中、職人たちの手によって仕立てられた“最後の純血”は、ただ速いだけのクルマではない。
日常のあらゆるシーンに寄り添いながら、ひとたび鞭を入れれば超弩級の性能を涼しい顔で発揮する、まさに真のグランツーリスモだ。
芳醇なアルピナの世界観を味わえる新車が、間もなく歴史の彼方へと消え去ってしまう現実は寂しい限りであるが、だからこそ、B4 GT グランクーペの存在は永遠に輝き続けるのである。
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