現行M2、最後で最高の派生バージョン
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
【画像】BMW M2 ケイマンGT4とA45 S 全135枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
毎日のように行われる試乗評価。AUTOCARの英国スタッフが、メーカーへ試乗車を直接受け取りに行くことも珍しくない。
決して手間だと思うことはない。むしろ、興味を抱かせてくれる面白い発見があったりする。公の目には顕になっていない、次期モデルを見れることもある。あるいは周囲の注目を集め、首脳陣がライバル視するモデルの姿も。
どんな発見があるかわからないから、メーカー本社を訪れる時は注意が欠かせない。ロンドンの西、ファーンバラの街にあるのが、BMW UKの本社。今回はアップデートを受ける5シリーズの実車を初めて目撃できた。また、新しく生まれ変わる4シリーズの姿も。
それだけではない。M2 CSの隣に停まっていたのは、バットモービルと呼ばれた1973年製のBMW 3.0 CSLと、M3 CSLだった。興味を惹かれずにはいられない、Mディビジョンが生み出した傑作の2台だ。
BMW M2 CSは、現行のM2としては最後で最高の、派生バージョンとなる。現在のBMWの中では、最高のドライビングマシンだと思う。もし、この3台の中から1台に乗れるとしたら、どれを選ぶだろう。
おっと、今回はBMW M2 CSの試乗だった。英国の一般道で初めての試乗評価となる。検討している人々へ、充分なイメージを持っていただく必要がある。英国価格、7万5320ポンド(1016万円)に見合う価値があるかどうか。
車重はM2コンペティションと同等
ちなみにBMW M2コンペティションと比較すると、2万3000ポンド(310万円)も高い。価格で見れば、ポルシェ・ケイマンGT4に匹敵する。
かなり状態の良い、中古のM4 CSも手に入れることができる金額だ。基本的なコンセプトは近いし、10psほどパワフルで、5kg軽量。見た目も、M4 CSの方がずっと優しい。悩ましい。
BMW UK本社で見かけた歴史を象徴する2台とは異なり、高価なM2 CSには「L」が付かない。このLは、ミュンヘンでは軽量なマシンだということを示す記号になっている。
M2 CSの車重は、1525kg。デュアルクラッチATを選ぶと、さらに25kg重くなる。その名の通り、M2コンペティションより軽く仕上がっているわけではない。
ボンネットにはカーボンファイバーを用い、重量はおよそ半分。ルーフパネルも軽量なカーボンファイバー製。19インチのホイールも、今までにないほど軽い鍛造製なのに。
もしかすると、新しいM4にも採用が見込まれる、マルチモード・アダプティブ・サスペンションが、重量を相殺しているのかもしれない。あるいは、280km/hの最高速度での安定性を高めるための、迫力あるボディワークが、車重を追加しているのかも。
M2コンペティションも充分攻撃的な見た目だったが、CSではさらに勢いを増している。フロントスプリッターやリアディフューザー、ガーニーフラップ、エアベントがえぐられたボンネットなど、違いは多い。
ホッケンハイム・シルバーに塗られたボディは、見事な肉体美を構成している。威圧感がすごい。
450psのエンジンはM4由来のS55型
タイヤはオプションのサーキット走行会仕様で、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履いていた。標準ではパイロット・スーパースポーツだ。マルチプレート・クラッチが組まれた電子制御デフも、専用設定となっている。
ゴールドが眩しいキャリパーと対となる、カーボンセラミック・ブレーキも装備。M2コンペティションでは選べないオプションで、価格は6250ポンド(84万円)する。
鋳鉄製のMスポーツのブレーキと比較して、22kgの軽量化につながる。そして、サーキットに相応しい見た目も得られる。
エンジンは、M2コンペティションにも搭載されていた、M4由来のS55型。直列6気筒のツインターボは排気系が再設計され、最高出力とトルクバンドを拡張している。
光沢が美しい1.5kgのカーボン製ストラットブレースに守られる、鍛えられた心臓は450psと56.1kg-mを生み出す。始動時は控えめだが、回転数の上昇とともにモータースポーツ感満点のサウンドを響かせる。パワーとレスポンスに長け、エキゾチックだ。
低速域で走らせていても、強いオーラを放つ。デュアルクラッチATをドライブに入れる。クリープはない。アクセルペダルを踏み込むと、ふわりと風に乗るようにM2 CSは進み始める。軽さを思わせる、意外な感覚だった。
シャシーは路面の細かな凹凸を逐一拾うが、シリアスなドライバーズカーとして、マナーは不快ではない。第一印象は、かなり良い。でも完璧ではないとも思う。
1t当たり300psの高性能を体感する
BMWでは一般的だが、アルカンターラが巻かれたステアリングホイールは、小さい直径も太いグリップも、少々やり過ぎ。
インテリアは、見慣れた雰囲気。ドアハンドルはカーボンファイバー製。中央のアームレストは備わらないが、軽量化にはつながらなかったようだ。M2 CSの金額を考えると、インテリアは特別感で弱い印象を受ける。
一部の内装トリムやエンブレムを除いて、基本的にはM2コンペティションと共通している。といっても、悪いだけではない。
調整幅の大きいセミバケット・タイプのシートは、快適でサポート性も良好。ドライビングポジションも、フロントエンジンでコンパクトなボディを考えると、期待以上に優れている。
カーボン製トランスミッション・トンネルのパネルは、光沢が美しい。年齢層を問わず、惹かれるディテールだろう。
変速して速度を上げていくと、1t当たり300psというM2 CSの高性能ぶりを、隅々から感じ取れるようになる。デュアルクラッチATは極めて滑らかに動作し、ハーフスロットル程度での追い越しも、またたく間に完了する。
56.1kg-mという最大トルクは、2500rpm辺りから解き放たれる。例えトルクが数kg-m低い回転域でも、充分にたくましい。
ただし、このフィーリングはM2コンペティションと遠くない。最高出力差は40psあるが、最大トルクはほとんど変わらないためだろう。
この続きは後編にて。
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