当代きっての〝目利き〟として知られる藤原ヒロシが、「気になったもの」や「買ったもの」を紹介。世界中を旅して回る彼が見つけた今月の一品は、服? ガジェット? それともアート?
─表参道ヒルズの開業20周年イベント「OMOTESANDO HILLS 20th」のディレクションをヒロシさんが手掛けるとのことですが、5月2日から始まる、ロンドンのパンクシーンの主にファッションやデザイン、写真といった作品にフォーカスした展覧会「inception(1976)」もヒロシさんの企画になるわけですね。藤原ヒロシ(以下、藤原) 表参道ヒルズのアニバーサリー企画は半年くらいかけて取り組んでいくことになっているんですが、まず、最初の大きなイベントがこのパンク展「inception(1976)」になります。表参道ヒルズの地下3階に展示のできる大きなスペースがあるので、そこで展覧会をやりたいと思って。今年はちょうどパンク誕生50周年ということもあって、タイミング的にもいいかな、と。ただ、いわゆる「パンク展」というよりは、1976年に起きたパンクムーブメントから始まって、現在にも繋がっているものを見せられたらいいな、という思いがあります。
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─やはり、パンクムーブメントは音楽シーンを超えた大きな出来事であり、一つの分岐点、あるいは切断点だったのではないでしょうか。藤原 確かにパンク以前とパンク以後ではポップカルチャー全般にわたり、価値観が大きく変化したと思うし、重要な分岐点だったんでしょうね。
─また、ファッションにおいても、それまでのロックミュージシャンがグラマラスなステージ衣装を身につけたり、あるいは、あえて、ありふれたジーンズや革ジャンをかっこよく着こなせればOKといったものとは違って、例えばセックス・ピストルズの衣装を手掛けたマルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドは明らかに“表現”として服を作っていたわけですよね。藤原 そう、自分たちで刷ったプリントTシャツを自己表現としてのファッションとしたのは、パンクが最初でしょう。いわゆる“ストリート・ファッション”の最初の段階というか。
─ただ、パンクに、ヒロシさんが捉えているようなカルチャーとしての革新性を見ている人ばかりではないですよね。暴力的で反抗的な態度や、あるいは単にシンプルなロックンロールをパンクスタイルだと考える人も多いわけで……。藤原 そうだね。だから、パンクって捉え方がいくつかあるんでしょうね。「服に気を使うなんて、パンクじゃない、高い服を着るなんてもってのほか!」っていうタイプの人もいるだろうし。でも、マルコムやヴィヴィアンは、それとは正反対の考えだったと思う。パンクファッションをカルチャーとして、場合によってはアートに近いものとして表現していた。僕が影響を受けたのも、パンクのそうした部分だったわけで。
─では改めて、ヒロシさんにとってパンクとは何なのでしょう?藤原 パンクって、やっぱり“機動力”なんですよ。つまり、「自分たちでも、やっていいんだ!」という行動のきっかけを当時の若い世代に与えたんだと思う。何かを始めるきっかけがパンクで、音楽でもパンクを通ってから、それぞれのスタイルの音楽を作ったり、アートやデザインを始めてみたり。この展示でもパンクからパイレーツ、バッファローと続くわけだけれど、それがさっき言った「パンクから始まり、現在に繋がるもの」なんじゃないかな。
文・鈴木哲也 編集と写真・岩田桂視(GQ)
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