12気筒エンジンとつながっている感覚が何とも心地いい
次世代の7シリーズは、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、BEVという4種類のパワートレーンが用意されるという。そして、最高のパフォーマンスを有するグレードはBEVのi7になる可能性が高いらしい。ということはつまり、現在の最上級グレードであるM760Li、つまり12気筒エンジンを積んだモデルは現行型で最後になるということ。
事実、北米市場向けにはその名も「ザ・ファイナルV12」という名の限定モデルも発売され、この6月に生産される。つまり、そこでBMWモデル用のV12エンジンの生産は終わるということ。新車でBMW製12気筒エンジンを楽しみたいというのであれば、あとはロールスロイスを狙うほかなくなった。 BMWの12気筒。ストレート6が得意なメーカーだから、その二丁がけであるV12エンジンが悪かろうはずはない。歴代の12気筒エンジンは全部で4機種あって、戦後ドイツ車初の12気筒となったM70、ロールスロイスに初転用されたM73やN73、そして過給機付きとなったN74である。中でもM70の高性能仕様であるS70はマクラーレンF1にも搭載されたことでその名を馳せた。
いずれのエンジンも極上の滑らかさで車好きを魅了したものだ。なくなる、と言ってもこの世からすべて消えるわけではなく、上質な歴代モデルの中古車を探せばまだまだ味わうことができる(そのためにカーセンサーEDGEがある)。現時点ではさほど嘆き悲しむことではないのだけれど、とはいえ、これで生産が終わると聞けばひとつの時代が終わろうとしているのだな、と感慨深い。“思い出作り”を兼ねてBMWが生産する最後のV12エンジンを積んだM760Liを長距離ドライブに連れ出した。 ジャーマンモダンの粋を尽くした豪奢なインテリアに身を預け、いつになくリラックスした気分でドライブは始まった。超高級車ではあるけれども、そこは3シリーズや5シリーズで慣れ親しんだBMWだ。ロールスロイスやベントレーのように妙な緊張感はない。
節度の利いた前輪の捌きも、自信を持ってドライブできる要因の一つだろう。誤解を恐れずに言って、3シリーズと変わらぬ感覚でドライブできる。もちろん、一つ一つの動きは価格なりに上質なものになっているのだが、BMWに限って言えば、車の動きにおけるドライバーの位置付けという点でブランドの哲学がモデルによって変わるはずもない。
じわりとアクセルペダルを踏み込んでみる。6.6L V12ツインターボエンジンのパワーが炸裂! と言いたいところだけれど、この車はフラッグシップサルーンである。いかにMの頭文字が車名を飾っていようと、スーパースポーツのように過激な加速を見せるわけではない。むしろ、ほとばしりそうになるV12の性能を押し殺して、じわじわと加速に転じる。砂浜の砂すべてに水が行き渡るのを待っているかのように、トルコンATが慎重にパワーを伝達している。その様子が実にみずみずしく、他では味わえないフィールで、何とも言えず心地よい。
砂がすべて濡れたなら、つまりある程度の速度に乗ってからは、カーボンコアボディにむち打つような加速へと転じた。さすがにこれだけの排気量があると、ツインターボの存在などまるで関係なく思え、極めてリニアな加速フィールである。ツインターボの役目はその立ち上がりの角度を人知れず高めて持続させることにある。ターボカーであることを主張することはない。
高速道路では最近、ドライバーアシストを使うことが多い。オートクルーズにレーンキープ、車間距離保持だ。けれどもオートクルーズを使うこと自体がもったいなく思う。右足に軽く力を込めて12気筒エンジンとつながっている感覚が喉を鳴らす猫を触っているかのようで何とも心地いいからだ。 いつ何時でも思いどおりの加速に入ることができる。どこからでもスムーズかつ力強く加速することを知ってしまえば、もうそれを必要以上に発揮させようとは思わない。気持ちよさそうに唸るV12を右足裏に感じつつ、ここぞというときにだけそのポテンシャルを存分に解放してやればいい。軽く踏むだけ、つまり低回転域で十分に快適なクルーズを続けることができる大排気量マルチシリンダーエンジンは、やっぱり身体にもそして心にもラクだった。BMWはこれをやめてしまうのか……(嘆息)。何ならエコプロモードでも気持ちがいい。高いギアでも気分がいい。そんなエンジンはなかなかないものだ。
もちろん、V12を積んだ車体としての高いパフォーマンスもM760Liの魅力だ。望めばワインディングロードでも上出来のスポーツサルーンとして振る舞う。積極的に運転して楽しいと感じさせるあたりは、BMWバッジが乗る前から保証する。今のところ……。
i7はiXがベースになるらしい。数字の語るパフォーマンス的にはおそらくM760Liを上回ることだろう。けれども、ドライビングテイストはどうか。重い内燃機関の置き場所に格闘した結果としての前後重量バランスとシャシーの制御にドライビングの個性があった。何となればどの年式でもいい、車好きとして生まれたからには、V12を積んだBMWを一生に一度は試しておくべきだと思った。 文/西川淳 写真/益田和久
BMW 7シリーズ(V12搭載モデル)の中古車市場は?
現行7シリーズでV12エンジンを搭載するのはMパフォーマンスモデルのM760Liのみ。2016年に追加グレード(写真)として登場した。2019年のマイナーチェンジでは大きなキドニーグリルが特徴のスタイルに。ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援システムなど、最新の先進装備が備わった。
中古車物件はV12がDOHCに変更された3代目から5代目となる現行モデルまででも、わずか5台のみ。まもなく新車で購入できなくなるBMW製V12搭載サルーンは、中古車でも希少。特に現行型はM社がチューンした“走り”まで楽しめる、オススメモデルだ。 BMW 7シリーズ(V12搭載モデル、3代目/4代目/現行)の中古車を探す▼検索条件BMW 7シリーズ(V12搭載モデル、3代目/4代目/現行) × 全国文/編集部、写真/ビー・エム・ダブリュー【試乗車 諸元・スペック表】●M760Li xドライブ 4WD型式3BA-7U66最小回転半径6.1m駆動方式4WD全長×全幅×全高5.27m×1.9m×1.49mドア数4ホイールベース3.21mミッション8AT前トレッド/後トレッド1.62m/1.62mAI-SHIFT-室内(全長×全幅×全高)-m×-m×-m4WS◯車両重量2320kgシート列数2最大積載量-kg乗車定員5名車両総重量2595kgミッション位置フロア最低地上高0.14mマニュアルモード◯標準色アルピン・ホワイトオプション色ブラック・サファイアメタリック、ミネラル・ホワイトメタリック、ブリリアント・ホワイトメタリック、ピュア・メタル・シルバーメタリック、ベルニーナ・グレー・アンバーエフェクトM、タンザナイト・ブルーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズン・ダーク・シルバーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、フローズン・カシミヤ・シルバーメタリック、ドニントン・グレーメタリック、フローズン・ブルー・ストーンメタリック、カーボン・ブラックメタリック掲載コメント-型式3BA-7U66駆動方式4WDドア数4ミッション8ATAI-SHIFT-4WS◯標準色アルピン・ホワイトオプション色ブラック・サファイアメタリック、ミネラル・ホワイトメタリック、ブリリアント・ホワイトメタリック、ピュア・メタル・シルバーメタリック、ベルニーナ・グレー・アンバーエフェクトM、タンザナイト・ブルーメタリック、ドラバイト・グレーメタリック、フローズン・ダーク・シルバーメタリック、フローズン・ブリリアント・ホワイトM、フローズン・カシミヤ・シルバーメタリック、ドニントン・グレーメタリック、フローズン・ブルー・ストーンメタリック、カーボン・ブラックメタリックシート列数2乗車定員5名ミッション位置フロアマニュアルモード◯最小回転半径6.1m全長×全幅×全高5.27m×1.9m×1.49mホイールベース3.21m前トレッド/後トレッド1.62m/1.62m室内(全長×全幅×全高)-m×-m×-m車両重量2320kg最大積載量-kg車両総重量2595kg最低地上高0.14m掲載用コメント-エンジン型式N74B66C環境対策エンジン-種類V型12気筒DOHC使用燃料ハイオク過給器ターボ燃料タンク容量78リットル可変気筒装置-燃費(JC08モード)6.9km/L総排気量6591cc燃費(WLTCモード)6.7km/L└市街地:4km/L└郊外:7km/L└高速:8.9km/L燃費基準達成-最高出力609ps最大トルク/回転数n・m(kg・m)/rpm850(86.7)/5000エンジン型式N74B66C種類V型12気筒DOHC過給器ターボ可変気筒装置-総排気量6591cc最高出力609ps最大トルク/回転数n・m(kg・m)/rpm850(86.7)/5000環境対策エンジン-使用燃料ハイオク燃料タンク容量78リットル燃費(JC08モード)6.9km/L燃費(WLTCモード)6.7km/L└市街地:4km/L└郊外: 7km/L└高速: 8.9km/L燃費基準達成-
BMW 7シリーズ(現行型)のカタログを見るカーセンサーEDGE.netはこちら
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