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ルルーシュ監督の名作短編『ランデヴー』の続編を観たか? フェラーリ「SF 90ストラダーレ」がモナコのGPコースを爆走した

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ルルーシュ監督の名作短編『ランデヴー』の続編を観たか? フェラーリ「SF 90ストラダーレ」がモナコのGPコースを爆走した

朝まだきのパリの街中を激走するナゾのフェラーリが主役のクロード・ルルーシュによる短編映画『C’etait un Rendez Vous=ランデヴー』(1976年)の続編が公開された。吉田 匠はどう観たか?

275GTBがSF90ストラダーレに

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新型コロナウィルスの影響でモナコGPが中止になった5月24日の朝、モンテカルロ市街地のGPコースをフェラーリ初のハイブリッドスーパースポーツ、1000馬力の「SF90ストラダーレ」が走った。コクピットでそのステアリングを握るのは、モナコ生まれの現役フェラーリF1ドライバー、シャルル・ルクレール。

スタート&フィニッシュ地点はモナコでもっとも高い格式を誇るホテル、オテル・ド・パリだが、最初の1ラップを終えたルクレールをその前で拍手とともに迎えたのは、なんとモナコ公国のアルベールII世殿下。しかもマスクをした殿下、ルクレールと短い会話を交わした後にSF90ストラダーレの助手席に収まり、ルクレールのドライビングで自国のGPコースを1ラップしたのだった。

このショートフィルムを撮ったのは、映画『男と女』で知られる巨匠クロード・ルルーシュ監督で、そのタイトルは『Le Grand Rendez-Vous=ル・グラン・ランデヴー』という。実はルルーシュ監督、1976年に『C’etait un Rendez Vous=ランデヴー』という短編映画を制作している。今回は、その続編というわけだ。

オリジナル『ランデヴー』の舞台は未明から早朝に掛けてのパリ、クルマはルルーシュ監督が所有していたフェラーリ「275GTB」。外周の環状線、ペリフェリークのポルトドーフィンからパリの街に入った275GTBは、V12の快音を高らかに奏でながら全開で加速を続け、すべての信号を無視して飛ばしに飛ばす。

エトワール広場からシャンゼンリゼ大通り、コンコルド広場、ルーヴル美術館、オペラ座前と走り抜け、最後はパリの北にあるモンマルトルの丘を駆け上がって、サクレクール寺院の前で停まる。するとその南側にある有名な階段から若い女性が駆け上がってきて275GTBのドライバーと抱き合い、『ランデヴー』の意味が解明されて終了という、奇妙だが妙に印象的な短編。その間、8分35秒。

ところがこの初代『ランデヴー』、実際に走っていたのは、これもルルーシュ監督が所有していたメルセデス「450SEL6.9」だったという。SEL6.9はV8エンジンのATだが、派手なブリッピングとシフトダウンを繰り返すV12エンジンのサウンドは、フェラーリ275GTBのものを被せていたのだ。

それはそれとして凄いのは、実際にドライビングしていたのがルルーシュ監督本人だったという事実で、この映画が公開され後に監督は逮捕され、運転免許の取り上げを喰らったという話だが、ま、それも仕方なかろう。(笑)

それに対して、モンテカルロを舞台に撮影された新作『ル・グラン・ランデヴー』は、モナコ公国の承認を得て閉鎖されたGPコースを、現役フェラーリF1ドライバーの操縦で、フェラーリが持ち込んだ最新のスーパースポーツ、SF90ストラダーレが走るという、すべてが合法的にコントロールされた短編映画である。

だから新作では、SF90ストラダーレという最新最強のロードゴーイングフェラーリが、今もっとも脂の乗っているレーシングドライバーの操縦でGPコースを駆けるという夢のようなシーンを、僕らは愉しむことができる。しかもあの根っからのカーガイ、クロード・ルルーシュのディレクションによって、である。

だがその代わりオリジナルの『ランデヴー』にあった、なんだこれはという得体の知れなさ、こんな無法運転でアクシデントは起きないのだろうかというスリル、何処に向けて走っているのかという謎、なにかストーリーはあるのかという期待、といったものは、新作の『ル・グラン・ランデヴー』には希薄だ。

冒頭に出てきて、最後はドライバーのルクレールとともにSF90に乗って走り去る花屋の若い女性が、最初の『ランデヴー』撮影時に登場したルルーシュ監督のガールフレンドとのあいだの孫娘に当たるというのが、隠れたストーリーのひとつといえるかもしれない。

けれども僕としては、モナコ公国のアルベールII世がSF90のパセンジャーシートに収まってGPコースを1周したという事実が、もっとも意外性の高いストーリーに思えた。もちろんそれはフェラーリにとっても、最高に効果的な演出だったに違いない。なにしろアルベールII世殿下は、世界でもっとも格式あるF1GPレースの舞台であるモナコ公国の、君主なのだから。

文・吉田 匠

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