伝統の「走り」を掲げてきたスカイラインが、いま大きな転換点を迎えています。日産自動車が示した「AIディファインドビークル」という新思想。ドライバー主体だった運転に、AIが「パートナー」として介入することで、スカイラインの「走り」はこれまでとは異なるものへと変わろうとしています。次期型スカイラインは「走りの価値」をどう再定義するのでしょうか。
文:吉川賢一/写真:NISSAN
【画像ギャラリー】丸型4灯の伝統と「AI」という革新は融合できるのか!? 進化を止めない日産の象徴 現行型 日産「スカイライン」(13枚)
スカイラインは「日産の鼓動」であり続けられるのか?
2026年4月14日、日産自動車は「お客さまの体験を最優先に、日産がどこへ向かうのかを定めるもの」として、新たな長期ビジョンを発表しました。この中で、全国のファンをもっとも沸かせたのが、次期スカイラインの存在です。
1957年の誕生以来、常に「誰よりも先を駆ける」ことを宿命づけられてきたスカイライン。近年はセダン市場の縮小により販売台数は低迷していますが、日産にとってスカイラインは日産のプライドそのものであり、ブランドの生命線のひとつです。今回の長期ビジョンにおいても、日産はスカイラインを「日本市場における、日産らしさを体現し、ブランドの情緒的価値と革新性を担うハートビートモデル」と明確に位置づけました。
公開されたティザー画像には、伝統の丸型4灯テールランプや「Skyline」の筆記体ロゴ、そして鋭いヘッドライトといったファン垂涎の要素が凝縮されています。性能面でも「ドライバー中心で、高性能で意のままの走りを実現する」と明言されており、スカイラインが築いてきた「操る楽しさ」の継承に期待が高まります。
突きつけられた「AIディファインドビークル(AIDV)」の衝撃
しかしながら、この長期ビジョンにおいて日産は、AIドライブ技術とAIパートナー技術を組み合わせた「AIディファインドビークル(AIDV)」を日産の技術イノベーションの中核に据えることを強調しました。AIドライブ技術を搭載するモデルについては、将来的にラインアップの約9割まで拡大することを目指すともされており、次期スカイラインにも搭載される可能性は非常に高いといえます。
現在広く普及している先進運転支援技術の多くは、主体はドライバーであり、各種の運転支援機能はそれを補助する存在にとどまっていますが、AIDVでは、AIが常時周囲の状況を監視し、ドライバーの運転を支える「パートナー」として機能し、車速維持や車間距離制御、レーンキープといった従来機能に加え、カーブ進入時の減速判断や、危険な挙動を示す他車の検知と回避といった制御まで担うことが想定されます。
また「車線中央を維持する」といった従来型の制御にとどまらず、「より理想的な走行ラインをトレースする」といった、熟練ドライバーを思わせる高度な制御にも踏み込む方向です。
ドライバーが操作している最中でもAIが補正を加え、より理想的な挙動へ導こうとする。この方向性は、これまでスカイラインが追求してきた「人間がメカを操作し、対話する」というFRスポーツの価値観とは異なるようにも思えます。AIパートナーによる見えない介入を、「自然」と受け止められるか、それとも「余計なお世話」と感じるか。このあたりの受け止め方が次期スカイラインの評価を大きく左右することになりそうです。
スカイラインの走りを誰よりも理解し、磨き続けてきた日産を信じよう!!
スカイラインはこれまで、日産の最先端技術を積み込んできた「走るショーケース」としての役割を担ってきました。現行V37型も、世界初のステアバイワイヤ「DAS」や「プロパイロット2.0」をいち早く採用し、人と電子制御が協調する新しい走りを提示してきました。
スカイラインが誰よりも速く、誰よりも先を行く「技術の日産の象徴」であるならば、次期型にAIDVが搭載されること自体は、従来の延長線上にある進化とも捉えられます。スカイラインファンとしては「操っている感」がどれだけ維持されるのか不安は残りますが、その走りを誰よりも理解し、磨き続けてきたのは日産です。
単に「走り」を守るだけでなく、AIという新たな担い手を取り込み、その価値を拡張しようとしている次期スカイライン。長く愛されてきた象徴的なデザインとAI技術が交錯する次期型は、我々にどんな体験をもたらすのか、ファンの一人としては期待と不安が入り混じりますが、日産が提示する新しい時代の走りを信じて、その登場を待ちたいと思います。
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