BYDシーライオン7を自腹購入したものの、技術や品質に的外れなウワサが付きまとっていると感じた国沢光宏師匠。クルマのプロに車体を徹底チェックしてもらおうと決意し、まずは内外装について高評価を得た。第2回はいよいよ足回り。フットワークのスペシャリストであるサンコーワークスの喜多見孝弘さんに、ダンパーまでバラして評価してもらった結果は!?
文:ベストカーWeb編集部/写真:森山良雄
【画像ギャラリー】驚きの連続! シーライオン7の足回り&床下をアップで見て!(12枚)
見た瞬間に解るくらいお金かかっている!
BYDに乗っていると「足回りは30年前の日本車レベルらしいですね」などといわれる。どうやらそういった主張のYouTubeがあるらしい。私はシーライオン7を買う際にクルマの仕上がりをチェックした。もちろん見える範囲で下回りも確認している。フロントなんかアーム類はすべてアルミ! ブレーキだって対向4ポッドのドリルドローターである。メルセデスやBMWみたいだ。
30年前の日本車という理由が分からない。ということで足回りのスペシャリストであるサンコーワークスの喜多見さんに見てもらうことにした。ちなみにWRCドイツで走らせた燃料電池車MIRAIのラリーカーや、FIA公認競技(全日本ラリー選手権)で初の電気自動車によるポディウムを記録した初代リーフのラリ-カーのサスペンションは全て喜多見さんによるセットアップである。
以下、喜多見さんの意見を交えた評価など。早速ジャッキアップしてタイヤを外しサスペンションの説明が始まる。フロントサスはすべてアルミのアームを使ったダブルウィッシュボーン。頑丈そうなアームを使っており、見た瞬間に解るくらいお金かかっている。このあたりは動画を見ていただければ詳しく解ります。作りはメルセデスやBMWの良い所をとったテスラ風とのこと。
驚くのはアームを受け持つ車体側で、アッパーマウントの構造たるや強固。さらにアングル材を使い取り付け、剛性を上げている。サブフレームもがっしりしており、よく出来ているとしか表現出来ないそうな。衝突の衝撃を受け止めるフレームは、オフセットや前面25%のスモールオーバーラップだけでなく、それよりも少ないオーバーラップ率まで対応する構造になっていた。
欧州プレミアムセグメント級の品質。ショックはBYD内製
続いてリア。これまた煮詰められたアームの取り回しのマルチリンクである。アライメント変化してほしくないアーム類はコストの掛かったピロボールを使っており、しかもモーターの強大なトルクに耐えるよう、フロント以上に剛性を持たせている。使われているボルトやナット類は防錆処理がしっかりされている。使っている部品の上質さで言えば、欧州プレミアムセグメントと同等。
書き遅れたが、喜多見さんもポリッシュファクトリーの及川さんと同じく、最初は中国車だからソコソコのレベルだと思っていたそうな。タイ市場で販売していた黎明期の中国車の足回りを見た経験があり、見るべきモノはなかったという。実はシーライオン7を見て貰うのは2回目。納車されてすぐ喜多見さんのところに持ち込んだのだった。最初は下回りを覗き込む程度の関心レベル(笑)。
けれどすぐ「ホイール外していいですか?」になり、続いて「ダンパーを見てもいいですか?」。サスペンションのエンジニアなので気になるらしい。何と納車されたばかりの私のシーライオン7をバラされてしまった。肝心のダンパーといえば、BYD内製! 中国で生産されている欧州車のダンパーを作っている中国ザックスや中国テネコかと思いきや、BYD製でした。
さらに凄いのは「高いシールを使ってますね!」。ダンパーで重要なのはロッドのオイルシールである。ここが緩いと耐久性低くオイル漏れ。硬すぎると動きは渋くなってしまう。精度の高いシールを使わなければならない。BYD製のダンパー、欧州プレミアムセグメント用と同じタイプのシールを使っているとのこと。「おそらく日本製のダンパーよりずっと品質的に優れてます」。
競技車並みにフラットな床下。空力も凝っている!
初めて持ち込んだ時は動画を撮っていなかったので、改めて解説してもらった次第。今回は「リフトアップしてみましょう」いうことになる。私も真下から見るの、初めてである。第一印象は「レーシングカーか!」と思うくらいフラットなこと。電池を搭載している部分がフラットなのは当然ながら、フロント車軸から前と、リア車軸から後ろが「ここまでやるのね!」と思うくらい凝ってる。
フロントは車軸がある部分と床下に若干の高低差あるのだけれど、空気を剥離させないような形状にして繋いでいる。さらにフロントタイヤの前には整流スパッツが。ここまで凝った作りをしているクルマは稀少。リアセクションもしっかり空気の流れをコントロールしている。そしてリアタイヤの前にもスパッツ! 喜多見さんはもちろん、私まで驚いてしまった。
結論から書くと30年前の日本車というより、現在販売しているコストの掛かったプレミアムセグメントに勝るとも劣らないクオリティだったりする。喜多見さんによれば、むしろ最新の欧州車はコストダウンする傾向にあるそうで、ここまで徹底的に理想を追求しようというクルマは見ないという。このあたりは動画をジックリご覧いただければ解ると思う。
全面肯定も気持ち悪いため、弱点を聞いてみた。すると「おそらくダンパーのセットアップは、低重心で前後重量配分のよい電気自動車を理解していないテストドライバーがやったんだと思います。コーナーで内輪に荷重かかっていないです。加えてダンパーの初期減衰力が高すぎので乗り心地悪いですね。硬い感じになってしまっている。初期をもっと動かしたいです」。
日本の自動車メーカーに「負けないで欲しい!」
喜多見さん、リーフやMIRAIといった特殊なクルマのセットアップをした際、最初は普通のエンジン車と同じアプローチをしたそうな。私も改良途中にあるスペックでラリーやレースに出場したが、改良の度にどんどん乗りやすく&速くなっていった。私も乗り心地の硬さはシーライオン7の弱点だと考える。購入を決めた時、喜多見さんなら改良できると思ったのでスルーしたのである。
この後、喜多見さんにサスペンションの仕様変更をしてもらったら、凝った設計と質の高いパーツを使っているよさがキッチリ出て素晴らしい乗り心地になりました。シーライオン7のユーザーで乗る心地の硬さが気になるなら、検討したらいいと思う。10万円もかからないです。近々、シーライオン7の弱点も紹介します。当然ながら改良すべき点だってある。
さて。中国車が嫌いという人は、今後もBYDの悪口攻撃を続けるだろう。皆さん誉めるのも気持ち悪いので健全かもしれません。また、私がハニートラップに引っかかったという人もいるだろう。残念ながらダメな中国を見たら、しっかり書きます。BYDの記事、私はクルマを買って欲しいということでなく、日本の自動車メーカーに「負けないで欲しい!」でございます。
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