Passo dello Stelvio、ステルヴィオ峠。スイスとイタリアの国境にある、と書かれている文章もあるが、アレは間違い。オーストリアとの国境から深い谷に沿って南下したところに聳える北イタリアの峠で、険しい上りと48ものヘアピンが続くことから、昔から国際ラリーのコースに使われ、難所として知られた場所だった。僕は1991年、ドイツから乗っていったポルシェ 964RSでそこを駆け上った、至福の経験を持つ。
で、この峠の名を車名にしたのがアルファロメオのSUV、ステルヴィオである。実は今から30年近く前、日産の子会社オーテックから、同じくステルヴィオという名前のクルマがザガートのデザインで少量生産されたが、それについて書いている余裕はない。
で、本題のステルヴィオは、アルファロメオがジュリアのコンポーネンツをベースにして生み出した、同ブランド初のSUVだ。ホイールベースはジュリアと同じ2820mmのまま、地上高を65mm高くし、ドライバーのピップポイントは190mm高くした、というのがその基本ディメンションである。
結果、全長4690×全幅1905×全高1680mmというステルヴィオが誕生した。それはジュリアと比べると35mm長く、40mm幅広く、245mm背が高いクルマで、スタイリングは写真のとおりアルファらしい、というかジュリアとの血脈をストレートに感じさせるものに仕上げられている。
いわゆるライバルと目されるモデルは、メルセデス・ベンツ GLC、ボルボ XC60、ポルシェ マカン、BMW X3、アウディ Q5、ジャガー Eペイス、レクサス RXといったところで、いわゆるミッドサイズSUVの大激戦区に投入されることになる。
となると、同分野後発ブランドのモデルとしては、ライバルにはない際立つ特徴を持っていることが望まれる。アルファロメオはライバルとは異なるブランドバリューを持ってはいるが、それは必ずしもこの分野においてアドバンテージになるものとは限らないはずだ。
じゃあどうなんだステルヴィオ、ということで、梅雨は上がったものの依然天候不順な軽井沢で開かれたプレス試乗会は、初めてそれに接する僕にとって、ステルヴィオの魅力が何処にあるのかを紐解くための絶好の舞台になった。
FCAジャパンが販売するステルヴィオは当面「ファースト エディション」の1車種のみ。軽井沢での試乗車もそれで、280psと40.8kgmを発生する2リッター直4ターボに8段ATを組み合わせ、後輪駆動ベースのQ4システムによって4WDとしたクルマだ。プライスは689万円。
ボディカラーはシンプルにホワイト、レッド、グレー、ブラックの4色で、もっともアルファらしいレッドはすでに予約が埋まっていたので、ブラックを選択(撮影車は別のクルマ)。鮮やかなレッドの内張りが眼につくインテリアに収まる。ヒップポイントがジュリア+190mmという運転席はそれなりに高いが、それだけに見晴らしはいい。
車重は1810kgで、同エンジンで4WDのジュリア ヴェローチェより140kg重いが、280psを生み出すエンジンはそれを軽い感じで引っ張り上げる。しかも、加速時のエンジンや駆動系の感触も滑らかに感じられる。つまりステルヴィオ、実際の車重を感じさせない軽快感と、加速のスムーズさが、まずは印象に残った。
0-100km/h加速は5.7秒と公表され、このサイズのSUVとしては俊足だといえるが、実際に走ってみても、そういう印象を実感として得ることができた。
シャシーに関していうと、SUVとしてはサスペンションが硬いのが特徴的で、とくに街中や街道筋を低速で流すときの乗り心地は明らかに硬い。その一方、20インチのホイール&タイヤを標準装着しているわりに、バネ下の重さを実感させるような強い突き上げを見舞ってこないのは、好ましい。硬いけれど、荒々しさのない乗り心地なのである。
とはいえ、この硬さでオフロードに踏み入れたらけっこう跳ねるんじゃないか、ということは容易に想像できる。つまりこいつはあくまで舗装路のためのSUVか、という方向性が見えかけてきたところで、それを鮮烈に実感する場面に遭遇した。
中軽井沢から鬼押し出しに向かう片側2車線の上りのワインディングロード、そこが奇跡的に空いていて、いいペースで駆け上がることができた。そうしたらステルヴィオ、ほとんどロールを感じさせないほどフラットな姿勢を保って、コーナーの連続を猛烈なペースで走り抜けていくではないか!
踏んでいれば弱アンダーステア、閉じれば軽くテールアウトという、スロットル操作にダイレクトに反応する挙動はもはやSUVのものではなく、よく出来たGTもかくやと思わせる。つまりステルヴィオ、この一点に集中して開発されたのではないかとさえ思わせる、コーナリングのキレを持っていたのだった!
適度に軽いけれどもクイックなステアリングも、強力に効くブレーキも、そのラインの一直線上にある。サーキットでの速さがSUVの価値にどう影響するのかは疑問だが、ニュルブルクリンク北コースにおけるラップタイムも速いらしい。
ラップタイムはともかく、このハンドリングなら、ニュル北コースのような変化に富んだサーキットも、いいペースで走れるに違いない。つまりこいつは、腕の立つコーナリング好きには絶好のSUVではないか、という感触をつかむことはできた。
ただし、ジュリアより地上高で65mm、着座位置で190mm高いクルマにそういうハンドリングを与えるために、サスペンションを締め上げてある。その結果として、低速での乗り心地が明らかにハードというネガはある。
そういう意味ではかなり割り切ったSUVで、好みが合えばこれを選ぶ価値は充分にあると思う。でも、コーナリングを愉しむのなら何も背の高いステルヴィオではなくて、ジュリアで充分じゃないか、という話も成り立つはずではある。
とはいえステルヴィオ、居住空間はジュリアより広く感じられるし、ラゲッジスペースの多様性も備えている。というわけで、最近ついにミドエンジンスポーツ4Cの生産を中止したといわれる(元)ミラノの名門は、かなり偏っているけれども、魅力的なSUVを生み出したのはたしかだと思う。
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