メルセデスF1、神童アントネッリに与える”3年間”の猶予期間「将来のチャンピオンだと確信できなければ、我々のマシンに乗せることはない」

　今季メルセデスからF1デビューを果たしたアンドレア・キミ・アントネッリは、先日行なわれたF1カナダGPで3位に入り、F1での初表彰台を手にした。アントネッリはメルセデスの秘蔵っ子としてこれまで下位カテゴリーを駆け上がってきたが、メルセデスのトト・ウルフ代表は、F1に辿り着いたものの急がせることはなく、3年かけてじっくり育てるつもりだと、育成計画を語った。

　アントネッリは小さな子供の頃からメルセデスの育成ドライバーとして、大事に大事に育てられてきた。通常とは異なり、FIA F3ではなくフォーミュラ・リージョナルを戦い、その後FIA F2に。そして今年、満を辞してF1デビューを果たした。

　ここまでは経験豊富なチームメイト、ジョージ・ラッセルに差をつけられる場面もあったが、カナダGPでは3位。F1で初の表彰台登壇を果たした。これは、史上3番目に若い表彰台獲得記録ということになる。

　ウルフ代表はこのアントネッリの才能に、全面的な信頼を寄せている。これは、彼が11歳の頃からメルセデスの育成プログラムに参加してきた中での、確かな実績によるものだろう。

「キミは11歳の時から、我々のジュニアプログラムに参加してきた。今では、子供達が国際的なカートシリーズに参戦し始める、10歳頃から才能を見抜くことができる」

　ウルフ代表は、ブルームバーグのポッドキャスト番組に出演した際、そう語った。

「メルセデス・ベンツのジュニアプログラムには、優秀なスカウト陣がいる。これは重要なことだ。ある意味、サッカーやテニスのアカデミーのように、非常に早い段階で才能を見抜くことができるんだ」

　アントネッリは早い段階から高いレベルのパフォーマンスを発揮しており、ウルフ代表はそれを、チャンピオンシップへの可能性を占める指標と捉えていたという。

「8歳でレースを始めた子が、歳上の子供たちと互角に戦えるならば、それは良い兆候だ。もしその子が他の誰よりも1歳若い状況でチャンピオンに輝くならば、それはまた良い兆候なんだ。キミはこういうカテゴリーで勝利を収めてきた。これは非常に例外的なことなんだ」

　そうウルフ代表は説明した。

　ただ近年のF1は、タイヤマネジメントが特に難しくなったとされている。これはルーキーにとっては苦労する点だ。ウルフ代表は、アントネッリをマクラーレンのオスカー・ピアストリと比較し、3年後にはチャンピオン候補になる可能性があると考えている。

「タイヤ管理が非常に難しくなっている。スピード、つまり1周やレース全体でどれだけ速く走れるかという問題だけでなく、タイヤを常に最高の状態で走らせ、同時に滑らせずにオーバーヒートさせないようにするのも重要だ。そうしないと、ラップタイムを大幅に失ってしまう。そしてそれは、若いドライバーにとっては難しくなっているんだ」

「今季のチャンピオンシップをリードしているピアストリが良い例だ。ランド・ノリスに追いつくのに1年半かかった。そして今年は、初めてノリスに対して優位に立っている。それは、タイヤマネジメントの問題だけだと思う」

　アントネッリはここまで63ポイントを獲得し、ドライバーズランキング7番手につけている。今後は未経験のサーキットも多いが、高い安定性を示している。

「キミは全てのサーキットを熟知しているわけではない。モントリオールは、初めて走ったサーキットだった。だから、大きく不利な状況からスタートすることになる。しかしマシンは良く、彼は速さを発揮できた」

「若いドライバーが、経験豊富でしかも非常に速いチームメイトに挑戦するには、3年間の育成プログラムが必要だろう。ジョージは今はF1トップドライバーのひとり。若いドライバーには、そのための時間を与える必要がある」

「難しい週末や、パフォーマンスが低迷することも、ある程度受け入れなければいけない。しかしそれは、仕方のないことなんだ」

　アントネッリをいきなり起用することに関しては、批判的な声もあった。しかしウルフ代表は、アントネッリの才能には自身を持っていると改めて語った。

「『18歳の若手をいきなり乗せるなんてありえない』という声もたくさんあった。特にメルセデスでは、小規模なチームで目立たない立場で戦うのとは異なる。表彰台に立ったり、勝ったりすることが期待されるシートに、一気に押し上げられるのだから」

「それが我々の哲学だ。将来のチャンピオンになれると思わない限り、我々は誰にもシートを与えるつもりはない」

Comments

[どやっさん]

ここまででも十分過ぎるほどの可能性は見せてるよなぁ

[晶野北夫]

5年乗って全く芽が出ないヤツもいるのに
さすがメルセデスは厳しいなぁ