今年(2022年)3月22日から羽田空港で、同30日から首都高芝浦PAに、これまでにない新しい自販機が登場した。冷凍のラーメンを自販機内で温め90秒後にやけどしそうに熱くなって出てくる自販機だ。
なお、有名店のラーメンを冷凍のまま販売(調理は購入者が行う)する自販機が最近増えつつあるが、こちらは冷凍ラーメンを購入すると90秒で自動調理を行いアツアツで出てくる調理器を備えた自販機となる。
美味しいのか? 成功するのか?? 首都高芝浦PAに「妖怪ラーメン」復活!! ラーメン自販機が全国へ拡大
文/加藤久美子、写真/加藤博人
■アツアツのラーメンが自販機で買える!
ラーメンは今や海外でも愛される「日本食」だが、この自販機を仕掛けたのは米国シリコンバレーに本社を置く「YO-KAI express」(妖怪エクスプレス)である。アメリカではすでに全米50か所以上に設置されているという。
「YOKAI」の名前を付けた理由は、「いつでもどこでも人々を楽しませる存在でありたい」ということ。いつでもどこでも24時間アツアツのおいしいラーメンを提供したい!そのような心意気なのだろう。
自販機で提供されるラーメンは、ゆず塩、みそ、しょうゆ、とんこつの4種で、日本国内の食品工場で製造されている。価格はいずれも790円。ん? 790円? って…高くない? と思う人も多いだろうが、アメリカで展開されているYO-KAI expressのラーメンはなんと約15ドル。円安の昨今、日本円に換算するとなんと2000円近い価格になる。YO-KAI expressでは「今後の状況を見ながら日本での価格見直しも検討していく」と話していた。
「芝浦無人食堂」と名付けられた、ラーメンの自販機。一度は食べてみたい
さてそのラーメン自販機。今年3月30日より首都高都心環状線の芝浦パーキングエリアに設置されており、その数日前には羽田空港の国際ターミナルにある自販機コーナーにも同じ冷凍ラーメン自販機が設置されたのだが、設置から間もなく、羽田でも芝浦でもトラブルが続出し始めた。
「冷凍のまま出てきた」
「お金を払ったのに、ラーメンが出てこない」
「半解凍?みたいな感じで出てきて、とてもじゃないが食べられない」
「コンビニでお湯をもらってかけて食べたが…」
「決済そのものができない。つまり購入できない」
などなど。
実は筆者も首都高値上げの瞬間を撮影するために、4月1日の午前0時頃には首都高に上がっていたため、その勢いで午前2時頃、芝浦PAにラーメンを食べに行ってみた。ゆず塩、味噌、醤油とんこつの4種類のうち、ゆず塩ととんこつは売り切れだったので、息子が醤油、私が味噌を食べてみた。
この時は特にトラブルもなく自販機は作動しており、ラーメンも790円は少々高い&量も少ない(麺220グラム)と思ったが、味としては美味しかった。
その当時はまだ「まんえん防止措置」が実施されていたので、飲食店の営業時間も制限を受けていた。「深夜でも早朝でもあたたかくて美味しいラーメンが食べられるなら嬉しいよね!」などと思っていたのだ。
なかなか美味しそう
■トラブル続出で芝浦PAから撤去!
トラブルが続出していたことはしばらく気づかなかったのだが、4月のある日、まだ食べていなかったゆず塩ととんこつを食べるべく再び芝浦PAに行ってみたところ、先客が自販機前で電話をしており、自販機には「エラー」の表示が…あら?
どうしたんだろうと思ってその男性に聞いてみたところ「お金を支払ったのにラーメンが出てこなくて…」と困っていた。サポートに電話をしたが、「今日のところは対応できませんので後日返金します」などと言われたそうだ。機械自体が故障で動かないため、当然、そのあとに並んでいた私たちも購入は不可能となった。
その後、SNSを見てみると、羽田空港のラーメン自販機において多数のトラブル報告が出されていた。
関係者に聞いてみたところ、「羽田空港のラーメン自販機は機械を丸ごと入れ替えて対応する」ということであった。
このような経緯で芝浦PAの自販機に関しては、4月半ばから一時撤去されることになった。
撤去後にも訪れてみたが、本当に機械が丸ごとなくなっており、メニューの短冊もなくなり、首都高が独自開発したという最先端の画期的な冷蔵ゴミ箱だけがポツンと残されていた。
なんとも寂しい光景だった。
撤去されてしまった「ラーメン自販機」。せつない……
そして…、芝浦PAで撤去されてから、およそ2カ月後。
ついに、ラーメン自販機が復活した! 首都高も2022年6月『パーキングエリアに関するお知らせ』の中で、ラーメン自動販売機「Yo-Kai Express」の販売再開について知らせている。実はすぐにでも「ラーメン再開」の記事化を進めたかったのだが、また故障が続出していたら困るなあと思っているうちに2か月が経過してしまった。再設置してからは、以前のような致命的なトラブルは発生していないとのこと。
ネットを見ても「故障で食べられなかった」、「冷凍のまま出てきた」などの報告は見つからなかったので、これなら大丈夫かと思い、今回記事にした次第である。
SNSにも、
「深夜や早朝に暖かい生ラーメンが食べられるのはそれだけで嬉しい。アジもおいしい」
「790円はちょっと高いかも?まあまあおいしいけど量が少ないな」
「ずっと食べたかった芝浦PAのラーメンが復活してた!うれしい!おいしかった!」
「クルマ好きなら一度は食べてみたいと思うだろうね」
など、好意的な内容の投稿が並んでいた。
実際、筆者も息子と二人で4種のラーメンを食べており、味の順位をつけるとしたら、
1位……ゆず塩
2位……とんこつ
3位……しょうゆと味噌
こんな感じである。
しかし、一つ残念だったのは芝浦で再設置されたあと豚骨を食べてみたが、残念なことに麺の戻りが悪かった。冷凍麺が完全に生めんの状態に戻っていない部分があったのだ。もちろん、「凍ったまま」というレベルではなかったが、麺をかむとゴムのように固く、嚙み切れなかった。しばらくスープの中に沈めていると、本来の生めんに戻ってきたが、これはちょっと残念だった。
ところで、このラーメン。完全な冷凍状態から加熱されわずか90秒でアツアツのラーメンとなって提供されることで、その時の熱さは強烈だ。本当に熱いので専用の袋(自販機前に用意されている)に入れてテーブルに運ぶことになる。この袋がなかなか機能的で、YOKAIカラー?の紫色というのもちょっとおしゃれ。
食べるときには器に封印された透明のフィルムを破るわけだが、これをはがすのもかなり熱い。一部はがしにくい場所があっても無理にはがそうとせずそのまま食べたほうが安全だ。勢いでラーメン丼がひっくり返れば大やけどを負う。とはいえ「映え」を考えるとやはりきれいにはがした上で写真に収めたくなるだろうが。
食べるときに透明のフィルムを剥がす必要があるのだが、もうちょい安全に剝がせるようにならないか。日本人、そういう「食」のテクニックはすごそう。改良を求む
なおYO-KAI expressによると、「アメリカでは紙ベースの容器を使っており、日本向けにも同じ容器で準備していたが、紙ベースの容器では日本の規格に通らなかった」とのこと。現在はプラスチックになっているが、将来的には環境にやさしい紙の容器にかえていきたいと話していた。
■そもそもなぜ、ラーメン自販機が登場したのか?
高速PAに当たり前のように存在していたニチレイのホットメニュー。およそ1年前に全国ではほぼ撤去された。すでに懐かしい…
首都高のPAをよく利用している方ならご存じかもしれないが、首都高PAで温かいものが提供される自販機といえば、かつてはニチレイフーズの冷凍食品自販機「24hr.HOT MENU」が定番中の定番だった。フライドポテトやフライドチキン、焼きおにぎり、台湾飯など。首都高から降りずに深夜でも早朝でも温かい軽食が食べられるありがたい自販機だった。
しかし、諸事情により2010年には自販機筐体の生産が終了。10年後の2020年には2021年3月末で自販機に収められる冷凍食品の製造も終了することが明らかになった。2021年5月頃までで商品の供給を終了し、全国各地でニチレイフーズのホットメニュー自販機は撤去が進められ、約30年の歴史がここで終わったのである。
首都高によると、妖怪ラーメン導入に至った経緯は以下。
「ニチレイのホットメニューが販売終了となったあと、利用者の皆様に温かい食事を提供できていない状況が続いていました。24時間365時間利用できる首都高速において、休憩施設で深夜でも早朝でも温かい食事を提供してお客様へのサービス向上に対応したいという思いから始まりました。実際、要望も多くいただいていました」
とのこと。
なんと、総合厨房機器メーカー中西製作所と共同で、食べ残しを0度前後で保管し、ネズミや害虫などの発生を予防する「冷蔵機能付きごみ箱」まで独自開発している。冷蔵ごみ箱はラーメン自販機のすぐ横に設置されており、清潔感は抜群だ。
そして「YO-KAI express」は「今後日本全国に250か所まで増やす予定がある」と明かす。
ちなみに羽田や芝浦に設置している自販機はアメリカ向けのものを日本向けにカスタマイズした筐体で、今後は日本専用開発された信頼度の高い自販機が増えていくそうだ。また、現在は50食×4種がストックされているが、今後はストックできる量を増量する予定もある。もちろん、首都高に限らず、全国の高速道路や空港、鉄道の駅、道の駅など深夜や早朝もニーズがある場所からの要望が多数届いているとのことで、近い将来いろいろな場所で妖怪ラーメンに出会えることになりそうだ。
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