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99%以上が水力発電の島「屋久島」にヒョンデのEVバス5台が上陸! ガチの「カーボンニュートラル」を目指す

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99%以上が水力発電の島「屋久島」にヒョンデのEVバス5台が上陸! ガチの「カーボンニュートラル」を目指す

 この記事をまとめると

■鹿児島県のバス事業者がヒョンデのEVバス5台を屋久島に導入

【試乗】ついに「N」がニッポン上陸! バカッ速EVのIONIQ 5 Nにヒョンデの神技を見た!!

■導入される車両は中型のELEC CITY TOWN

■路線バスとしてGW空けから運行開始予定

 99%以上が水力発電の島に5台のEVバスが上陸!

 縄文杉で知られ、世界自然遺産にも登録されている屋久島。映画もののけ姫の舞台のモデルになった場所ともいわれている、自然豊かな鹿児島県の島である。

 そんな屋久島に、ヒョンデの電気バスが5台納車、運用されるということで納車式が行われた。乗用車の世界では、ガソリン車、ディーゼル車、HV、EV、PHEVなど、いろいろなパワーユニットのクルマがそれなりに広がっている。だが、バスの世界はなかなかそうもいかず、やはりディーゼルが大半を占め、EVやFCVなどはまだわずかだ。それゆえにメーカーもなかなか積極的には開発がすすまず、EVバスは車両の選択肢も少ない。今回、屋久島に導入されるヒョンデのEVバスはELEC CITY TOWNと呼ばれる中型バス。これが路線バスとして運用されることになるという。

 ヒョンデは韓国の自動車メーカー。かつて日本ではヒュンダイの表記で乗用車も販売していたが、一度撤退している。そして最近、IONIQ 5(アイオニック5)やKONA(コナ)といったEV、NEXO(ネッソ)というFCVなどを引っ提げて日本に再上陸を果たしたことを知っている人も多いだろう。だが、バスに関しては乗用車と異なり、最近のことではない。2009年からUniverse(ユニバース)というエンジンモデルを日本で販売しているので、認識していないだけで目にしていた、ということもあるハズだ。

 さて、今回ヒョンデELEC CITY TOWNを購入したのは、鹿児島県を拠点とする企業体の「いわさきグループ」だ。いわさきグループは、南九州に就航するフェリーや、鹿児島県内大半を占める路線バスの運航、種子島や指宿、そして屋久島のホテル運営などを始め、さまざまな事業を手がけている。

 なぜ屋久島でEVバスなのか? じつは屋久島は世界的にもめずらしく、電気に関してほぼクリーンエネルギーで賄われているエリアとなる。島内で使用される99%以上の電力が島の水力発電で賄われているという。それゆえ、いま自動車業界が世界的に目標としているカーボンニュートラルを、屋久島に限っていえば実現することが現実的ともいえるのだ。

 納車式には、岩崎産業株式会社 代表取締役である岩崎芳太郎氏、ヒョンデモーターグループ副会長の張 在勲氏、ヒョンデモビリティジャパン代表取締役社長の七五三敏幸氏、屋久島町町長の荒木耕治氏など、錚々たる顔ぶれが列席。それだけこのEVバス導入が、有意義かつ重要なものであることが伺える。

 会見のなかで岩崎氏は、「屋久島は世界自然遺産に登録されているから特殊なのではなく、特殊だから世界自然遺産に登録された。この島の電力は99%以上が水力で賄われていて、こういった島は世界でも数えるほどしかない。世界はカーボンニュートラルに向かっているがその実現は簡単なものではないと思っている。屋久島は、世界が目指すべき、豊かな自然があり、水力という自然の恵みで電気が供給され、CO2の排出がゼロになり得る可能性のある島だと思っている。ヒョンデの電気バス発売を聞き、いの一番に一歩でもゼロエミッションに近づきたいと思ったので購入を決めさせていただいた」といったようにバス導入の理由について語った。

 水力発電によって作られた電気で走行できるという屋久島の環境は、発電時に基本CO2を排出しないため、まさにEV向きといえるだろう。しかし、WEB CARTOPという新車媒体として気になるのは、今後、屋久島でBEV化が進んでいって電力が足りるのか? ということ。ここに対しての質問も飛んだが、屋久島の発電を担う屋久島電工の代表取締役社長、寿恵村哲哉氏から、屋久島の発電量は年間3億kWh程度あり、島内の住民や事業者が使用しているのはおおよそ4分の1程度で、残りは屋久島電工が炭化ケイ素を作るのに使っていると説明がされた。これならば仮に屋久島が総EV化されても問題なさそうだ。

 結構な勾配の下り坂でもアクセルペダルのオンオフのみで走行可能!

 さて、導入される5台のELEC CITY TOWNだが、平地に近いところの路線で運用される予定だという。屋久杉ランドなど、山に登っていく路線もテストしたところ、当然EVの豊かなトルクもあり、性能的にはまったく問題ないとのこと。ではなぜ平地? と疑問に思って聞いてみたところ、ハイシーズンは観光客も多く立ち乗りが出るため、安全に配慮して、ということらしい。20に満たないELEC CITY TOWNの座席数ゆえの判断だ。

 肝心の車両についても実車にじっくりと触れることができた。ボディサイズは全長8995mm×全幅2490mm×全高34900mmで最小回転半径は7.6m。160kWの出力を誇るZF製のモーターを145kWhの容量のリチウムイオンバッテリーで駆動し、最高速度は80km/hというもの。航続距離は韓国環境部の認証値で208kmとなっている。屋久島での運用は、概ね1日150~190kmほどを計画しているとのことで、けっこうギリギリ? と思って運転士さんに聞いたところ、「テスト走行ではその距離なら問題ない感じでした」という。面白いのは充電口で、CHAdeMOが2口並ぶ。これはとくにバッテリーをふたつ積んでいるなどではなく、ふたつ繋げば充電スピードが上がるという仕様とのことだ。

 エアサスにより乗車サイド(左側)を下げることもできるので、高齢者や小さい子どもの乗降性にも優れている。EVということでもちろん回生も行われ、回生ブレーキの強さは2段階で設定可能。この切り替えはワイパーレバーで行うことができ、コースティングモード(0)、回生弱(1)、回生強(2)、といった具合だ。コースティングモードを選ぶとアクセルオフでは回生せず、ブレーキを踏めば回生が入る仕組み。

 この日、納車式会場となったホテルの敷地内で短時間の試乗も行われた(もちろん運転ではなく乗客として)。左側最前列の通称「オタシート」に陣取って、クローズドの敷地内がゆえに運転士さんにアレコレ質問しながら試乗したのだが、結構な勾配の構内路の下りにもかかわらず、回生強にしておくと基本ワンペダルドライブが可能とのこと。

 年間降雨量が全国1位の市町村といわれる屋久島だが、納車記念のおめでたい日を空もお祝いしたのか、4月にありながら夏日のような晴天かつ暑いぐらいのこの日。試乗中もエアコンが作動していたが、聞こえる音はほぼ吹き出し口からの風の音。リクエストでエアコンをオフにしてもらうと、リヤからインバーターの音が聞こえるも、ディーゼルエンジン車よりもかなり静かな印象だ。車外で走る横にも立ったが、当然静粛性は高く、屋久島の自然環境にはピッタリのバスだと思える。

 さて、これからトレッキングなどの観光客で賑わう季節を迎える屋久島だが、これまでディーゼル車を運転してきた運転士の習熟期間を経てから運行される予定だ。具体的にはGW空けにというので、それ以降に屋久島を訪れるなら、ELEC CITY TOWNを探して、機会があれば乗車してみてほしい。

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みんなのコメント

2件
  • mfg
    塩害対策は大丈夫かな?
    整備修理は?
    コスト試算は新車時でやってないか?
  • tnw
    自衛隊でも製造業でもその殺伐とした体力縁故が暴力の結果、海外メーカー採用の国内者出納を結局は地板が対応出来なくなると思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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