『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のアレックス・ガーランドが、レイ・メンドーサとともに監督を務めたA24最新作『ウォーフェア 戦地最前線』。イラク戦争の帰還兵であるメンドーサの戦場での実体験を基に、兵士たちへの徹底した聞き取りによって制作された本作。兵士の頭の片隅に残る鮮烈なトラウマが、リアルな戦争を描き出す。見どころを篠儀直子が解説する。
出来事のかけらをつなぎ合わせる
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共同監督のレイ・メンドーサは、米特殊部隊“ネイビーシールズ”での戦友のひとりのためにこの映画の製作を思い立ったのだという。その戦友、エリオット・ミラーは、戦闘中に重傷を負った(その後遺症はいまも残っている)のだが、意識を失っていたこともあり、そのときのことをまったく覚えていなかった。当時その場にいた仲間たちの記憶を集めて「生きた記録映像」を造り出し、ミラーに見せようと考えたのだとメンドーサは言う。
スタント・コーディネーターを務めた映画、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)の監督、アレックス・ガーランドとともに、メンドーサは脚本執筆にとりかかる。しかしこれはまったく容易な作業ではなかった。集められた証言は時に相互に矛盾をきたした。それぞれが異なる場所にいたため、ひとりで事態の全容を記憶している者はいないこと、戦闘時の恐怖やトラウマゆえに改変された記憶も含まれていることなどが原因だった。ふたりは証言を慎重に検討し、「法医学的に出来事のかけらをつなぎ合わせ」た。最終的に最も妥当性の高いタイムラインをまとめ上げると、その脚本を基に、ほぼリアルタイムで進行する映画を作り上げた。それほどの記憶の混乱を招く戦闘(ウォーフェア)の生々しい恐怖が、この映画には描き出されている。
2006年、イラクのラマディ地方。通信兵レイ・メンドーサ(ディファラオ・ウン=ア=タイ)が所属する“シールズ”の小隊は、深夜に民家を占拠し、そこを拠点としてアルカイダ幹部を監視する任務に就く。その家の住民はアルカイダとは何の関係もない民間人2世帯。武装した米兵を前に、命じられるまま一室に閉じこめられるほかない。
夜が明け、街が動き出す。不審な人物がいないか、狙撃兵エリオット(コズモ・ジャーヴィス)はスコープ越しに観察し、いつでも引き金が引ける体勢を取りつづけている。街はいたって平和で、いつもどおりの日常だ。何も起こりそうには見えない。ゆっくりと時間が流れていく。
しかしそんななか、突如犬が激しく吠えはじめる。こちらを見ている男の人数が増えていく。他の監視所で戦闘が始まっているとの情報が届く。通りから人々があわただしく姿を消していく。ジハードを呼びかける声が聞こえる。そしてレイたちが占拠する家のなかに、手榴弾が投げ込まれる──。
リアリティの追求
いつの間にか彼らは敵に完全に包囲されていた。なかなか救援は来ず、逃げ場のないなかでさらに小隊は攻撃にさらされる。建物のなかを自在に動き回るキャメラの動きと、静寂を効果的に用いる音響が、事態を立体的に描写する。立体的な描写と言ったが、これはメンドーサの記憶と戦友たちの証言に基づいているから、描写されるのはもちろんこの小隊の側だけだ。彼らは姿の見えない相手から攻撃を受けつづける。
キャメラは自在に動き回るが、映像の印象は華麗さとはほど遠い。傷口や塵の質感は生々しく、血や煙の匂いまで伝わってきそうだ。出演している俳優たちは実際の特殊部隊隊員のような訓練を受け、撮影前からともに生活することで、部隊としての一体感をはぐくんだという。撮影はイラクの街並みを完全再現したセットで行なわれ、爆発も本物の爆発物を用いるなど、あらゆる面で徹底的なリアリティが目指された。
兵士が陥る恐怖、巻きこまれる人々ほんの少し匙加減を間違えただけで、戦争や暴力の賛美につながってしまいそうな題材ではあるが、本作が目指すところは軍事行動の美化ではない。そもそもこの映画に描かれる戦闘が行なわれたのは、存在しない大量破壊兵器を口実に米国が介入した、第二次湾岸戦争(イラク戦争)のなかでのことである。開戦を決定するのはいつだって、戦場に行かない人間たちだ。最前線に行くのは若者たちだ。いったん戦場に送り出されてしまったら、若者たちはただ任務を遂行するために、そして生き延びるために死力を尽くすほかない。映画やドラマなどに描かれるイメージから、わたしたちは“シールズ”を、完全無欠の精鋭部隊だと思いがちである。だがその“シールズ”の隊員でさえ、混乱のなかで激しく動揺し、恐怖や痛みで泣き叫ぶのだとこの映画は教える。
また、巻きこまれるイラクの人々の状況にもこの映画が目を配っていることは、決して軽んじられるべきではないだろう。米軍に協力するイラク人斥候兵が見せる、戸惑いと恐怖の表情は、たった一瞬であっても忘れられない。そして何よりも、レイたちの部隊に家を占拠された住人家族を、つらい思いで見つめる観客は少なくあるまい。外国の兵士に突如乗りこまれ、大幅に破壊された住まいだけが残されるというこの住人たちの状況は、イラクそのものの比喩のようにも見える。ラストシーンはさまざまに解釈できるだろうが、ひとつには、米軍が去ったあとも戦闘で踏み荒らされた国土で、イラクの人々の日常は続くのだと示唆しているかのようである。
『ウォーフェア 戦地最前線』著者プロフィール:篠儀直子(しのぎ なおこ)
翻訳者。映画批評も手がける。翻訳書は『フレッド・アステア自伝』『エドワード・ヤン』(以上青土社)『ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル』(DU BOOKS)『SF映画のタイポグラフィとデザイン』(フィルムアート社)『切り裂きジャックに殺されたのは誰か』(青土社)など。
編集・遠藤加奈(GQ)
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は内戦中のアメリカが舞台──国民同士が争い合う世界を描いた理由を監督のアレックス・ガーランドに尋ねた
https://media.gqjapan.jp/photos/66fbb4ffc44ada3d3177408b/master/w_2667,h_2000,c_limit/civil-war-alex-garland-02.jpg
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