例年3月は新車、中古車問わず最もクルマが売れるタイミングだ。卒業や就職、そして転勤など人のライフスタイルが変わる時期でもあるし、メーカーは年度末の決算期に当たるからだ。その結果、決算期ならではの大幅な値引きや超低金利ローンが設定されるなど、ユーザーそしてメーカーにとってもWin-Winのタイミングとなっているのだ。
さらにクルマを所有している人にとっては手放すタイミングにもなるわけだが、買い替えで下取りに入れる場合は多少の色を付けてくれるかもしれないが、買取の場合3月は時期を逃している。それは買取の場合は最もクルマが売れる3月の大需要期に備えて、1~2月に買取を強化しているからだ。したがって買取強化をしているタイミングよりも現在の査定価格は下がる可能性が高い。
長く乗りたいなら厳禁! 無意識のうちにやっている「クルマの寿命を短くする運転」
このように同じクルマであっても買取価格が下がる要因はタイミングのほかにもさまざまある。ここでは、そのマイナスとなる要因を紹介しよう。
文/萩原文博
写真/Adobe Stock(cat027 ©@Adobe Stock)、TOYOTA、編集部
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■押さえておきたい整備記録簿と修復歴
まず、買取価格の下がる要因として挙げられるのが、「修復歴」だ。修復歴というのは事故を起こしたクルマということではない。日本自動車査定協会や自動車公正取引協議会などが統一基準として定めている部位を加修した場合に修復歴車となる。
例えば、ドアやフェンダーの凹みなどを修理した場合は修復歴車には当たらない。修復歴車となるのは、骨格(フレーム)部位などを交換、あるいは修復(修正・補修)したものとなっている。
部位としては、フレーム(サイドメンバー)、クロスメンバー、インサイドパネル、ピラー、ダッシュパネル、ルーフパネル、フロア、トランクフロアとなっている。簡単に言うと、骨格まで事故の影響が及んだものが修復歴車となってしまうのだ。
バンパーの傷くらいでは修復歴は付かない(yamasan@Adobe Stock)
ただし、フロントバンパーをちょっとぶつけた場合でも当たり所が悪くクロスメンバーに影響を与えてしまい修理、交換すると修復歴車となるし、輸送中に天井にキズが付いて修復したケース、雹が天井に当たって凹んでしまい、それを修理した場合でも修復歴車となるのだ。こういった修復歴車はオートオークションでも「R点」という評価となるので、買取価格が下がる大きな要因となってしまう。
買取査定が下がる要因としてよく知られているのが、走行距離と年式。一般的には年式が古くなること、そして走行距離が延びると買取査定は下がってしまう。しかし、下がり幅を緩やかにできるアイテムがある。それが「整備記録簿」だ。
年式が進んでいたり、走行距離が延びていても、整備がしっかりと行われていて、なおかつ整備記録簿に記載されている履歴のしっかりしたクルマであれば、下がり幅はゆるやかになる。それはコンディションのよさが証明できるからだ。
整備記録簿は、車検証と一緒にグローブボックスの中に保存しておこう(Kumi@Adobe Stock)
しかし、この整備記録簿がなければいくら整備してあったとしても証明することができない。そうなると買取価格は大きくダウンしてしまうのだ。これは中古車を購入するときでも、クルマのコンディションを占う重要なアイテムなので、覚えておいてもらいたい。ただ整備記録簿があるだけでなく、どこで、どのように行われていたのか。という記載が大事なのだ。
■新車と中古車では異なる販売市場での「人気」
そして新車と中古車で大きく異なるのが「人気」という要素が価格に大きな影響を及ぼすという点だ。
これは新車時価格が同じくらいで、同じボディタイプ(SUVとかミニバン)であっても人気の高さによって買取価格が大きく異なるのだ。性能にまったく関係なく、ユーザーに人気のあるクルマのほうが高くなる。裏を返すと新車で購入する際に、同じボディタイプの人気車よりも人気薄のクルマのほうが値引き額は大きくなることが多い。これにより支払総額は大きく差が付く。
この値引き額が買取価格を下げる要因なのだ。安く購入できたわけだから、手放すときも安くなるということだ。しかし多くのユーザーは安く購入できたことを忘れて、買取価格が安いということが多いのだ。
ポイントは人気車であること。ボディタイプの流行によっても買取価格は上下する
また、同じボディタイプだけでなく、異なるボディタイプでも同じことが言える。現在はSUVやミニバンが人気となっている反面、セダンやステーションワゴンはやや人気が低迷している。こういったボディタイプは買取価格が人気の高いボディタイプに比べて下がる傾向がある。
■喫煙歴有無と室内の匂い、ボディカラーの人気
続いてはボディカラーだ。新車時にパールなどのオプションカラーは追加費用を支払うが、買取価格ではこの追加費用以上に差が付くことが多い。ほとんどのクルマの場合、白(パール)、ブラック、シルバーが定番色となり、シルバーを基準に白(パール)、ブラックが高くなる。
そのいっぽうで、青や赤、黄色といった有彩色の買取価格は安くなる傾向がある。もちろんボディタイプや車種によって異なるケースはあるが、一般的に有彩色は安くなる。これは休日の高速道路のサービスエリアに行けばわかるが、ほとんど停車しているクルマのボディカラーは、白(パール)、ブラック、シルバーが定番色となっていることが多い。
中古車の場合、幅広い層の選択肢に入りやすい色が値段も高めになる傾向(moonrise@Adobe Stock)
以前、3代目トヨタ『セルシオ』に設定されていたピンク色のボディカラーはパールに比べて買取価格が100万円ダウンという話を聞いたことがある。たかがボディカラー、されどボディカラーと言えるほど買取価格には影響があるのだ。
3代目セルシオには「ローズマイカメタリック」というピンク色のボディカラーが設定されていた。対して写真は「ダークブルーマイカ」のセルシオ
以前は、禁煙車というのは喫煙車に比べて高い買取価格が提示されていた。しかし時代は変わりもはや禁煙車は当たり前となり、喫煙車は大幅にマイナス要因となっている。
同じ匂いという点においてはペットを載せたクルマも買取価格は下がる傾向がある。抜けた毛を掃除していても、室内にこびりついた匂いはなかなか除去することはできない。また、小さなお子さんのいる家族の場合、お子さんの乗り物などをラゲージに積むことが多いはず。その際に泥などをしっかり落としてから載せないと臭いの原因となる。
臭いという要素も買取価格に影響を与えるので要注意だ。汚れという点で昔は土足厳禁というクルマも多かったが、これは期待以上の買取価格には影響はないと言える。
■先進安全装備と車検切れまでの期間
最近のトレンドでは、緊急ブレーキのような運転支援システムの普及により、こういった装備のないクルマの買取価格は下がる傾向がある。以前は安全装備というのはまったく査定に影響しなかったのだが、アイサイトをはじめとした運転支援システムの普及によりユーザーの意識が変わり、買取価格にも反映されるようになったのだ。
アイサイトをはじめ、先進安全装備は査定に有利な要素となる
したがって運転支援システム、アイサイトをいち早く導入し多くの車種に搭載したスバル車の買取価格はほかのメーカーより高くなる傾向がある。また、最初にも書いたタイミングだが、車検が切れる半年前に手放さないと車検切れと認定されて、買取価格が下がってしまうのだ。
クルマの買い換えを考えているのであれば、現在所有しているクルマの車検が切れる半年前までに買い換えを行わないと購入費用が余計に掛かることになる。
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