県南6市町が結集するTX土浦延伸
茨城県南の6市町(土浦市、石岡市、牛久市、かすみがうら市、小美玉市、阿見町)は2026年8月17日、つくばエクスプレス(TX)の土浦延伸に向け、「TX土浦延伸期成同盟会」の設立総会を土浦市内で開いた。地元紙などを中心に各メディアが報じた。
【画像】「えっ、こんな景色だったの?」 35年以上前の「秋葉原駅」を見る!(計9枚)
各メディアの報道によると、総会では「延伸の実現は、交流人口の拡大や産業の活性化、大規模災害時の代替輸送路確保など、首都圏全体の発展に資する極めて重要な事業」などとする設立趣意書が読み上げられた。今後は、国への陳情などを進めていくとしている。
茨城県では、TXの同県内での延伸について、2023年6月に
「延伸方面は土浦方面、JR常磐線と接続する駅は土浦駅」
とし、延伸構想の具体化に向けた検討を進めることを決めている。計画区間はつくば~新土浦間で、計画延長は約10km、所要時間は約9分。開業目標は2045年としている。同県内での延伸については、それまで土浦延伸案のほかにも、
・筑波山延伸案
・水戸延伸案
・茨城空港延伸案
があった。それぞれ関連自治体が独自に活動を行っていたが、同県が土浦延伸案に一本化した形だ。
また同県は、2025年2月に土浦延伸の事業計画素案を発表している。同素案では、概算事業費を約1320億円とした。需要の見込みを新たなモデル(応用都市経済モデル)で見直した結果、費用便益比(B/C)は従来の四段階推計法による0.83から1.60に上方修正された。採算性についても、43年で黒字に転じるとしている。なお、中間駅についても、従来案の2駅から1駅に減らした。
今回の6市町による期成同盟会の設立は、同県の方針に沿ったものだ。土浦延伸に加え、反対方向の秋葉原~東京延伸計画とも連動し、土浦から先の茨城空港方面への延伸も視野に入れている。
常磐線との位置関係に生じる違和感
今回設立された期成同盟会の自治体の顔ぶれには、ある種の違和感を覚えた人も少なくないはずだ。
まず、延伸の起点に位置するつくば市が参加していない。一方、牛久市・阿見町は、延伸先となる土浦市よりも東京寄りに位置し、土浦から先の延伸構想とも無縁のように思える。また、かすみがうら市・石岡市・小美玉市の3市は、途中で土浦市を介さず、つくばから直接3市を経由する形で、前述の水戸延伸案・茨城空港延伸案を推してきた。
同県の方針が土浦延伸案に落ち着いたことで、水戸延伸案・茨城空港延伸案はいったん“落選”したかに思えた。しかし今回、3市はかつて競合していた土浦延伸案を推すことで、
「土浦から先」
の延伸に望みをつないだ形だ。ただ、その土浦延伸も、目標どおりに開業したとしても19年後である。「土浦から先」の延伸が具体化するのかは、まだ分からない。もう一点、期成同盟会の顔ぶれと同じように違和感を覚えるのが、
「JR常磐線との位置関係」
である。前述のとおり、牛久市・阿見町は位置的にTXとはほぼ無縁で、むしろ最寄りのJR常磐線の整備・拡充を求める方が得策といえるだろう。
また、仮に「土浦から先」の延伸が具体化するにしても、土浦~石岡間はJR常磐線にほぼ並行する形になると考えられる。
その需要量はさておき、茨城空港へのアクセス鉄道の確保が主な目的であるとすれば、わざわざTXを引っ張ってくるよりも、より短い経路で結べるJR常磐線へのアクセス鉄道の方が、地図上で見る限り合理的だ。
TXの高いブランド力への強い期待
ではなぜ、茨城県南の自治体は、JR常磐線ではなくTXにこだわるのか。
JR東日本は旧国鉄とはいえ民間企業であり、TXは茨城県が筆頭株主を務める第三セクターだ。確かに、JR東日本に比べて、県を介することで要望を反映させやすいという面はあるといえる。それ以上に自治体が注目しているのは、TXが持つある種の力である。
秋葉原~つくば間58.3kmを結ぶTXは2005(平成17)年、東京の都心と郊外を結ぶ最後の通勤路線として開業した。もともとは国鉄時代の末期、常磐線の混雑緩和や、鉄道から離れていた筑波研究学園都市と東京を結ぶことを目的に、「常磐新線」として構想された路線である。
当初は第三セクターが建設し、JR東日本が運営する形が想定されていた。しかし、茨城県や沿線自治体などが出資する第三セクター・首都圏新都市鉄道が、直接所有・運営する形となった。比較的新しい鉄道ということもあり、地下や高架によってほぼ全線が立体交差となっている。線形も良好で、最高速度は130kmと、在来線の中では高速だ。
沿線は都心から半径50km圏内にありながら、開発の余地が多く残されていたこともあり、同線の開業に合わせて宅地開発が進んだ。流山おおたかの森、柏の葉キャンパス駅など沿線の一部は、比較的短期間で人気の住宅街へと発展した。自治体やデベロッパーの取り組みなどにより、まちのブランディングにも成功している。
2024年7月に日経リサーチが発表した、子育てしやすそうな首都圏主要路線ランキングでは、TXが東急田園都市線を抑えて1位となるなど、同線や沿線の駅の人気を示す指標は少なくない。
2040年の推計人口を2013年と比べた増加率でも、TX沿線には国内2位の流山市、同4位のつくばみらい市がある(「つくばエクスプレス沿線、子育て世代呼ぶ 40年人口増」日経電子版、2024年1月)。日本全体では少子化による人口減が続くなか、TX沿線はその将来性の高さにも注目が集まっている。
県南6市町が、将来性が高く、ある種のブランド力を持つTXと、延伸によってつながりたいと考えるのは、自然な流れなのかもしれない。
好業績の影に潜む巨額債務の圧迫感
首都圏新都市鉄道が2026年5月に公表した2025年度(2025年4月~2026年3月)の決算によると、営業収益は前期比5.0%増の503億7600万円、営業利益は同10.2%増の106億9700万円、経常利益は同16.1%増の83億5800万円、当期純利益は同36.5%増の81億8200万円となり、いずれも過去最高を記録した。
営業費については、開業から20年が経過し、古くなった鉄道設備の保守管理や予防保全の実施による修繕費が増えているものの、営業収益の伸びがこれを補った形だ。
営業利益率も20%を超えており、第三セクター鉄道としては非常に好調な業績といえる。ただ、同社が2025年8月に公式サイトに掲載した「運賃改定のお知らせ」によると、建設費の債務残高は2024年度末時点で約4163億円に上る。ほぼ無利子ではあるものの、今後も約20年間、
「毎年約200億円」
を返していく必要がある。今後の設備や車両の更新、混雑緩和への投資(6両編成 → 8両編成)などを考えると、決して安心できる財務状況とはいえない。そもそも高いとされる運賃を改定(値上げ)せざるを得ないのが実情だ。土浦延伸についても東京延伸についても、自ら積極的に「投資」するとは考えにくい。
一方、前述の同県が発表した素案では、延伸部分について、既存の補助制度である都市鉄道利便増進事業費補助(速達性向上事業)を活用し、営業主体と整備主体が異なる上下分離方式の導入を想定している。首都圏新都市鉄道に大きな建設費の負担を負わせない形だ。整備主体については、県などの自治体になるのか、TXとは別に新たな第三セクターを設立するのかは不明である。
なお、同県や県南6市町は、土浦延伸計画と連動する形で
「東京延伸計画」
も進めたいとしている。ただ、こちらは大株主でもあり、延伸のいわば当事者となる東京都との関係が微妙である。いずれにしても、延伸に関しては、本来の事業主体であるTXの意向よりも、自治体間の綱引きの方が先に進んでいる形だ。(銀河鉄道世代(フリーライター))
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みんなのコメント
ただでさえ利用者の減少で昼間の常磐線は5両のワンマン車になったのに。