日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな海外限定ともいえるモデルをフィーチャー。今回はコーヒーで有名な国グアテマラで現在も販売されているスズキ「GN125 FORCE TT」を紹介する。
原付二種アドベンチャーとしての可能性を感じる「GN125 FORCE TT」
中米の地を走り続ける、さまざまなスズキ「GN125」
【原付二種のカブを比較】乗り味・燃費・装備・価格を比べてみた!
いつの間にか連載にされてしまったので、ネタを探しにオートバイメーカーのホームページ、しかもメーカー本体じゃなくて現地法人のホームページでラインナップをチェックする日々。そうやって見つけたのが、スズキが中米のグアテマラで販売しているという「GN125 FORCE TT」!
車名からも分かるように、そのベースはスズキGN125。日本国内では1982年に発売されたモデルで、125ccの2バルブ空冷シングルを搭載したスリムでオーソドックスな構成の車体、フロント18インチ・リア16インチという安定性重視のホイールサイズ、ワイドなハンドルでゆったりしたポジション、大きくて快適そうなシートという構成は、Vツインを積んだアメリカンクルーザーが全盛になる以前の、典型的なジャパニーズ・アメリカン・スタイルだ。
国内仕様のGN125は快適で扱いやすい上に、優れた経済性や信頼性を備え、そして低価格なことから、一部のライダーから質実な実用車として根強く支持され、1999年まで販売されるロングセラーとなった。そういえば教習車に使われてたような記憶もある。そんな実用性の高さが海外でも評価されたようで、現地生産モデルとして各地で今なおひっそりと生きながらえている模様。
日本に並行輸入し販売しているショップもあるので、今も時々街で見かけることもある。今回のテーマである「GN125 FORCE TT」が売られているグアテマラでも、スタンダードなGN125(GN125 FORCE)も同時に販売されている。というか、こちらがメインなんだろうけど。
グアテマラで販売されている「GN125 FORCE TT」は、タンクやシート、メッキ仕上げのヘッドライトやリアフェンダー、マフラーといった基本的なスタイル、ディメンションはGN125のまま。しかしヘッドライト上に大型のキャリアとハンドガードを追加、フォークブーツやエンジンガードも標準装備だ。
特に目立つのはフロントフェンダーで、ステムに今時のオフロード車そのままの長い樹脂製フェンダーを装着。ただし後部はフレームに干渉するので、分割して正立フォークのボトムケースにマウントされている特異な形状。そして80年代から変わらないGN125のキャストホイールに、オフロード向けのブロックパターンタイヤを装着。なかなか力技というか、ワイルドかつ異形な佇まいだ。
車名の「TT」はもちろん「ツーリスト・トロフィー」じゃなくて、スペイン語の「TO DO TERRENO」に由来している。日本語に訳すと「全ての地形」で、さらにホームページには「悪路は制限ではない」とも書かれている。おそらくまだまだダートが多いのであろうグアテマラの道路事情に合わせた、全路面対応のオールラウンドモデルを求める声に応えて開発されたんだろう。超プリミティブだけど、よく考えるとアドベンチャーモデル的でもある。
ちなみにグアテマラでは、かつて「GN125SS」というモデルも存在していたらしい。「SS」の意味するところは、もちろん「スーパースポーツ」! とはいえ「TT」以上にほとんどGN125のままで、低く構えた一文字ハンドルと、カフェレーサー的と言えなくもない専用シートが装着されているだけのようだ。しかしフォークはアメリカンのままの長さで間延びして見えるし、ハンドルが低くてもステップはGNのままだから、違和感満点のポジションだろうなぁ。さすがに無理やり過ぎたのか、現在では販売されていない。
しかし「GN125 FORCE TT」の、ジャパニーズアメリカンにオフロードモデル風のディテールを無理やり混ぜるという、力技が生み出した個性的スタイルは、現代的スクランブラーとして結構魅力的な気がする。ひょっとすると、現在の日本でも受けるんじゃないか…使い勝手の良さや快適さは世界中で折り紙付きで、オフロードもなんとか走れて、しかもシンプルで価格も安い125cc。あ、エンジンはFI化しなきゃね。CT125・ハンターカブの対抗馬として、どうですかスズキさん?
文:小松信夫
[ アルバム : 【写真2枚】スズキ「GN125 FORCE TT」(グアテマラ仕様車) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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よっぽど悪路走破性が有りそう