50年ぶりにスクリーンに上映された
1972年に公開された映画『ヘアピン・サーカス』が、いま再び注目を集めていいます。五木寛之の原作をもとに、西村潔監督が描いた“サーキットを駆ける青春の断層”。50年以上の時を経て、見逃されていた東宝ニューアクションの異端作が、再評価の風を受け、期間限定でスクリーンに帰ってきました。
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幻のレース映画、再上映の舞台裏
2025年6月、新文芸坐(東京・池袋)にて『ヘアピン・サーカス』の上映が行われた。トークショーの司会を務めたのは映画評論家・映画監督の樋口尚文氏。Yahoo!の千夜千本コラムなどで多くの映画を語っている氏が、本作を「当時の東宝のオーセンティックな作品群のなかで、きわめて新鮮だった」と評したのがこの『ヘアピン・サーカス』だ。
監督を務めた西村潔は1932年生まれ。代表作『野獣死すべし』(主演・仲代達矢)など、東宝ニューアクション映画の旗手として知られた存在だ。ちなみに西村監督と同年に東宝へ入社した同期に、同じ一ツ橋大学出身の石原慎太郎がいた。
そんな西村監督が手がけた『ヘアピン・サーカス』は、1972年4月5日に公開されるや、新宿・浅草・銀座の劇場で1週間に1万5250人を動員するスマッシュヒットを記録した。
レースと映像の境界線を超えた男たち
映画の制作において重要なキーマンとなったのが、大坪善男という人物である。元トヨタワークスドライバーであり、当時はユニオンプロジェクトという映像制作会社を率いていた。『素晴らしい世界旅行』など海外ロケを含む大型企画も請け負っていた会社の社長だった。撮影のためにオランダに事務所を構え、アフリカでのロケ撮影も現地スタッフを用意して臨んだというから、クルマ関係だけではないスケールの大きさがうかがえる。
そんな大坪氏が映画の主演に抜擢したのが、見崎清志だった。見崎はプロレーサーであり、当時すでにマカオグランプリに出場することが決まっていた。じつはこのマカオでの走行中、大坪の発案で車載カメラを装着して1周分の映像を撮影しており、そのフィルムが『ヘアピン・サーカス』の重要なレースシーンに活かされている。
「ギャラが良くなかったら出ない」と当初は消極的だった見崎に、大坪が自らギャラ交渉。結果、当時の初任給が1万円の時代に100万円という破格の出演料が提示された。とはいえ、見崎自身は
「俳優なんて興味なかった。レースのほうが楽しかった」
と今も語る。
見崎清志、50年越しの初鑑賞
見崎が初めて本作を通して観たのは、じつに2025年6月27日の再上映時のことだったという。ショースクリーンに映る自分の姿には
「苦痛だったし、恥ずかしい」
と率直な感想を漏らし
「今日のトークも家族には誰にも言っていない」
と笑う。
当時の撮影現場についても、彼の証言は生々しい。監督の西村はクルマの運転免許すら持っておらず、レース描写の細部は大坪ら現場側が担っていた。赤いマシンには大坪が、青いマシンには見崎が乗っていたという。
レースシーンの大半はマカオと日本国内で撮影。読売ランドではカメラをわざと手ブレさせてスピード感を演出し、クラッシュシーンは葉山の広い駐車場を使って撮影された。スタートシーンの高速道路(首都高・飯倉)では、大坪がステアリングを握っていたという。銀座や本牧埠頭といった実在のロケ地も、当時は交通量が少なく、自由度の高い撮影が可能だったと振り返った。
トムス舘会長が不良チーム役で出演
相手役の江夏夕子は、当時A級ライセンスを持つ本格派。現在は松方弘樹の弟にあたる俳優・目黒祐樹の妻である。彼女のドライビングテクニックはプロの見崎から見ても「うまかった」と評されていた。
一方、俳優陣の演技には戸惑いもあったようだ。
「大げさでわざとらしく感じた。でも、これが演劇の世界か、とも思った」
と当時を振り返る。演技指導もセリフの指導もなく、現場でいきなり「涙を流して」と求められても、「無理だ」と断ったというエピソードが印象的だ。
「今だったらもっと上手くやれたかもしれない。でも、当時はレースのほうが大事だった」
と語る見崎の言葉には、リアルと虚構の狭間で揺れた若き日の真情がにじむ。ちなみに見崎の演じた主役に絡む不良チームの二枚目のニヒルな役者は現トムスの会長、舘 信秀氏である。
劇中マシンはワークスマシンだった?
『ヘアピン・サーカス』の新聞広告には、こんなキャッチコピーが躍っていた。
「挑戦か愛か。魔のカーブに女は罠を仕掛けた」
直球かつ劇画的な響きが、当時の空気をよく伝えている。
ちなみに本作で使用されたトヨタ2000GTのボディパーツは、現在も新潟の愛好家の手元に残っているという。アルミ製の希少なレーシングカーで、本来は「存在してはならない」ワークス仕様だったのを大坪が管理していた。ボンドカーとして知られる2000GTも、世界に2台しかない。AUTO MESSE WEB編集部の調べでは、この劇中マシンはそのシャシーナンバーから、1967年鈴鹿1000kmに参戦したワークスマシンそのものではないかと推測する。
見崎自身、高校時代はモトクロスに熱中し、18歳で手に入れたクルマを改造してプロレーサーの道へと突き進んだ。『ヘアピン・サーカス』の島尾俊也(主人公:見崎清志)と同様、成績が悪ければすぐに消えていく世界で、彼は自らの道を切り拓いた。
* * *
封印された記憶が、再びスクリーンを駆けるとき、それは過去ではなくなる。
『ヘアピン・サーカス』は、時代の狭間に現れ、走り抜け、忘れ去られかけていた異端の疾走映画だ。またどこかの映画館で上映されることを楽しみに待ちたい。
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