アンディ・ウィアーによる同名のベストセラーSF小説を実写化。滅亡の危機に瀕した地球を救うために画策する教師グレースをライアン・ゴズリングが演じる。11.9光年先で出会った相棒との奇跡の旅、その見どころを解説する。
世界的ベストセラー小説の映画化
バルミューダから置時計「The Clock」が登場──“良い時間”を再定義する
また地球が滅びかけている。「アストロファージ」と呼ばれる微生物が太陽のエネルギーを吸収しているため、このままでは、30年後に地球の生命が絶滅してしまうというのだ。お約束どおり、その危機を解決するため、宇宙の暗闇へヒーローが飛び立っていく。ここまで書くと、ハリウッド映画で何度も描かれてきたお馴染みの展開に思えるかもしれない。
しかし、実際に『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を観てみると、どうも様子がおかしい。ヒーローは記憶喪失らしく、自分がなぜ宇宙にいるのかわかっていない。そんな主人公の戸惑いと重なるように、宇宙船の内部は迷宮のように広がっている。テンポよく矢継ぎ早に繋がれるカット、たびたび挿入されるフラッシュバック、開始数分で感じた確信は、最後まで裏切られることがない──これはとんでもなく面白い。
世界的ベストセラー小説をどう映画化するか。さらに、それをSF映画史の中でどう新しく提示するか。このふたつの課題をクリアすることは、制作陣にとっても、まさにヘイルメアリー(神頼み)な計画だったに違いない。しかし彼らは、その無謀な挑戦を見事に成功させた。最初に観測されてから、そのメカニズムの解明までに200年を要した「バクテリア」があるように、科学は長い時間をかけて進歩してきた。そして、科学と芸術の子供である「映画」という技術もまた進化を続け、いま、その成果が『プロジェクト・ヘイル・メアリー』として、私たちの前に届けられたのだ。
宇宙で困るライアン・ゴズリング
本作は「アストロファージ」という微生物によってもたらされた危機を、宇宙の中では微生物のように小さな存在である人間が解決しようと奮闘する物語だが、そんな微生物的な主人公グレースを演じるのはライアン・ゴズリングだ。彼は『ファースト・マン』(2018)で月面着陸に挑んだ宇宙飛行士ニール・アームストロングを演じていたが、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』では、劇中で何度も「自分はパイロットじゃない!」というセリフを繰り返し、その演技アプローチもまったく異なるものになっている。
映画の冒頭、彼はヒゲも髪も伸び散らかし、まるで『ビッグ・リボウスキ』(1998)の主人公のような姿で登場して、宇宙船の中でたびたび悲鳴を上げながらミッションに挑んでいく。ライアン・ゴズリングは本作のプロデューサーも務めているが、彼は自分のことをよくわかっている。フィルモグラフィーを見ればわかるとおり、彼は痛めつけられ、困らされる役がよく似合うのだ。その資質はコメディと非常に相性がいい。今回も、そのコメディの適性が全編にわたって映画にアップリフティングな感覚を与えており、それは同時に、危機的な状況においてユーモアがいかに重要かを示している。
主人公グレースは地球では中学教師だったらしいが、そんな彼がなぜこのミッションに挑むことになったのか。その経緯は、フラッシュバックとして挿入される回想シーンによって徐々に明らかになっていく。宇宙のシーンでグレースが着ている赤色の宇宙服のデザインは、『2001年宇宙の旅』(1968)を彷彿とさせる。一方、地球のシーンでは印象的な黄色のジャケットを着ているが、『2001年宇宙の旅』で黄色の宇宙服を着ていたパイロットがどうなったかを考えると、彼の身を少しだけ案じてしまうのだ。
孤独な創作活動
主人公グレースは宇宙で孤独な作業を強いられることになるが、これは監督を務めたフィル・ロードとクリス・ミラーの作品に共通するモチーフでもある。『くもりときどきミートボール』(2009)、『LEGO® ムービー』(2014)、そして脚本と製作で参加した『スパイダーマン:スパイダーバース』(2019)。これらの作品の主人公たちは発明家であり、アウトキャストとして孤独を抱えた存在でもある。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』における宇宙空間は、創作の孤独を象徴する場所として、これ以上ないほどふさわしい舞台となっている。グレースのミッションは、映画制作、ひいてはあらゆる創作活動に打ち込む人々の姿と重なって見えるだろう。この暗闇のなかで、誰かこのメッセージを受け取ってくれる人はいるのだろうか。しかし、そこはやはりこの監督コンビの作品である。『スパイダーバース』で、スパイダーマンがマルチバース(多元宇宙)に何人も存在していたように、理解者は必ず現れる。たとえそれが宇宙の果てであろうと。
Two of Us
本作の冒頭で「二足す二は?」というコンピューターからの問いかけがある。もちろん答えは4。それはただの数字だが、もしその4がジョン、ポール、ジョージ、リンゴだったとしたら、それは数字以上の意味を持つことになる。グレースの前にも、そんな強力な相棒が宇宙の暗闇から突如として現れ、物語は二人のものになっていく。
グレースは自分と同じく「アストロファージ」の問題を解決するため、別の惑星からやってきた異星人と、宇宙で鉢合わせになる。まさに『未知との遭遇』(1977)。5本足の蜘蛛のような姿で、石のようにゴツゴツしていることから、グレースはその異星人を「ロッキー」と名付け、二人は協力して問題解決に挑む。
ロッキーはその見た目からは想像できないほど魅力的なキャラクターで、『E.T.』(1982)のように映画史に残るアイコンになることは、もはや間違いないだろう。撮影にはパペットが使用され、実際に動かされており、「操演」を務めたジェームズ・オルティスがそのまま声も担当、これにより、ロッキーの実在感やグレースとの親密さがさらに高まっている。
ロッキーも自分の惑星から宇宙船でやってきたエンジニアであるため、最初の段階ではグレースとのコミュニケーションは「科学」と「物づくり」を通して始まる。『2001年宇宙の旅』で人間と対立する存在として描かれていた人工知能「HAL 9000」の時代から60年が経ち、AI時代を生きるわれわれにとって、問題解決の相棒がロッキーのような存在であることは、非常にリアリティがある。
そして映画が進むにつれて、グレースよりもむしろ、従来のアメリカンヒーローの役割を担わされているのがロッキーなのではないか、という不思議な逆転が起こる。まさに映画『ロッキー』(1976)の主人公のように、何度殴られてもけっして倒れないロッキーを、心の底から応援してしまうのだ。もし、ロッキーに会えるのなら、私も宇宙に行きたい。誰もがそう思うはずだ。おそらく、まだしばらく宇宙に行くことは叶わないだろう。でも映画館には行けるよね、質問? ぜひ、劇場でロッキーに何度でも会いに行こう。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』文・島崎ひろき
編集・遠藤加奈(GQ)
耳で聞いて解像度爆あがり! 大ヒットSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
https://media.gqjapan.jp/photos/69520dc91a5a06dff6226226/master/w_1500,h_2171,c_limit/bestbook-5.jpg
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?