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5代目フォルクスワーゲン ポロに設定された1.2TSI+7速DSGはコンパクトカーの常識を変えた【10年ひと昔の新車】

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5代目フォルクスワーゲン ポロに設定された1.2TSI+7速DSGはコンパクトカーの常識を変えた【10年ひと昔の新車】

2010年5月、5代目フォルクスワーゲン ポロに1.2TSI直噴ターボエンジンと7速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせて搭載した「TSIハイライン/TSIコンフォートライン」が登場して大きな話題となった。今ではすっかりおなじみとなったパワートレーンだが、デビュー当時はどんな評価を受けていたのか。Motor Magazine誌はいち早くこのモデルに注目し、試乗テストを行っている。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年7月号より)

効率の良さが光るポロの「真打ち」登場
フォルクスワーゲンが推進するダウンサイズコンセプト、ついにここに極まれり。日本上陸となった最新ポロのスペックを目にすると、思わずそんな感慨を禁じ得ない。

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全長が4mを切り、全幅も1.7mを下回るという5ナンバーサイズのボディに搭載されるのは、排気量は1197ccで、最高出力をわずかに5000rpmで発するという、気筒当たり2バルブのSOHCエンジン。うっかりすると、まるで「時代を20年以上も遡った」かのように思えるパワーユニットが、しかし実は最先端を行くエコエンジンというのだから、時代は変わったものだとしみじみ思う。

もちろん、このようなデータだけでこのエンジンが秘めたキャラクターを推し量ろうというのは不適切極まりないこと。なぜならば、このエンジンは完全な新開発が行われた最新作。ここに採用されるテクノロジーは、国際的なシンポジウムの場で採り上げられるほど最先端のものが多数含まれる。

同時に、組み合わされるトランスミッションがやはり現存のユニットとして最高レベルの効率を追求したアイテムであることも無視するわけにはいかない。MT同様の伝達効率の高さを誇るデュアルクラッチ式トランスミッションのDSGも、もちろんダウンサイズコンセプトを支える重要な立役者。「このトランスミッションあってこそ、その真価を最大限に発揮できる最新エンジン」といっていいだろう。

新型ポロが日本でリリースされた昨年秋の時点では、「いずれスポーツグレードに搭載して導入の予定」とアナウンスされた1.2TSIエンジン。しかし、いざ蓋を開ければシリーズ中のベーシックバージョンである「コンフォートライン」にも、このエンジン+7速DSGの組み合わせを搭載。日本でも6000台ほどを発売済みという1.4Lエンジン搭載モデルが、発売後わずか半年少々にして旧型になってしまった。

そんなバリエーションの展開方法については、オーナーの立場になれば「憤懣やるかたない」という思いは拭えないものかも知れない。が、それはそれとして、そんな両エンジン搭載モデルをすでにドイツで同時にチェックした経験を持つ身からすれば、「そうなるのも当然」という思いが強いのもまた事実だ。

いずれにしても、この1.2TSIの搭載をもって、ポロは真打ち登場とあいなった。日本での新型ポロは、「これを機にようやく本格発売」と受け取って差し支えないかも知れない。

動力性能のゆとりがむしろ好燃費を生み出す
そんな最新のエンジンを積んだポロ1.2TSIの走りの実力は、まさに「待った甲斐がある」と紹介できるものだった(ちなみに、ハイラインとコンフォートラインにメカニズム的に大きな差はなく、装備の違いと考えてよさそうだ)。

アイドリング状態からスタートの後、アクセルの踏み込みに対する加速感がいささか物足りないという従来の1.4Lモデルでの印象は、こちらのモデルでは微塵も感じられない。と同時に、ひと足先に同じ1.2TSIエンジンを積んで発売されたゴルフの印象と比べてみれば、「全般に軽快感が一枚上手」となるのは、やはりこちらの方が170kgも軽いという点が功を奏していると容易に推測がつく。

エキゾーストマニホールドに直付けをされた、電子制御式ウエイストゲートバルブを備えるIHI製のターボチャージャーによる過給を受け、いかに1550rpmという低回転から最大トルクを発するとはいっても、発進直後はまだ排気エネルギーが乏しいために一瞬の過給の応答遅れは避けられない。そして、そうしたシーンでこそゴルフとの違いは明確。すなわち、そこではポロの動きの方がハッキリ軽快ということだ。

一方、中間加速のシーンでは、限られたエンジントルクの中で何とか活発な加速力を得ようとアクセルワークに応じて忙しく変速動作を繰り返す1.4Lモデルに比べると、こちら1.2TSIモデルの方がそうしたシフトビジー感が抑えられる分、よりゆとりある動力性能の演出に繋がっているという実感もある。

ちなみに、0→100km/h加速タイムは11.9秒に対して9.7秒と、1.2TSIモデルが軽く2割以上もの俊足ぶりをアピールする。実際、そうした「余裕2割増し」の印象は、日常シーンでもたびたび感じられる。

優れた低燃費性能が、わかりやすく伝わってくる
逆に、このような動力性能のゆとりがクルージングシーンではアクセル開度の減少に繋がり、車載燃費計に目をやるとビックリするような好燃費を叩き出すのが、この1.2TSIポロの特徴でもある。

たとえば、7速のギアポジションでわずかに2200rpmというエンジン回転数で実現する100km/hクルージングのシーンでは、気がつくと21~22km/Lといった値を当たり前にディスプレイ上に表示していたりする。日本固有の計測法に基づいた、輸入車にとっては決して有利とは言えない10・15モードでのデータが「20.0km/L」というのも凄いが、そうした数値が決して夢物語ではなく、リアルワールドであっさりと実現するのが最新のポロの凄さだ。

動力性能と燃費性能でかくも驚愕もののパワーパックを手に入れた最新ポロが、だからと言って、決してこれのみをセールスポイントとしているわけではもちろんない。

ターボチャージャーや直噴システムなどのハイテクメカをプラスしつつ、ブロック部分だけで14.5kg、トータルでは24.5kgもエンジン重量を低減させ、結果として車両重量全体で20kgのプラスに留めた1.2TSIモデルが実現させた走りの質感は、これまでの1.4Lモデルが備えていた美点をしっかりそのままキープしている。

すなわち、高速時の安定性の高さは「アウトバーン育ち」という例のフレーズを使いたくなるものだし、ステアリングの正確性や常に信頼感に富んだ接地感も特筆レベル。小回り性や静粛性の高さなど、日常シーンでの実用性能の高さもクラスの水準を大きく超えたものというわけだ。

シンプルで素っ気ないが質感がすこぶる高い室内
一方で、口さがない人にかかれば、インテリアのデザインなどは事務机などとも言われかねないシンプルな印象だが、しかしその質感は相変わらず極めて高く、これもまた日本のコンパクトカーなど一蹴する勢いだ。

もっともそんな最新のポロも、やはり完全無欠の1台というわけにはいかない。たとえば比較的低速で路面の大きな凹凸を拾った際の「ボコ感」や揺すられ感は、リアに4リンク式サスペンションを用いる兄貴分のゴルフには差を付けられているし、せっかくダイレクトな伝達感が売り物の7速DSGを備えるならば、シフトパドルが欲しいといった注文もあったりする。

変速動作そのものはスムーズなDSGがクリープ進行時には軽く身震いをするような微振動を伴ったりする点も、トルコンAT車に対する小さなビハインドと取り上げても良いかも知れない。いずれも些細と言えば些細なポイントではあるわけだが。

それにしても、そんな様々な話題を踏まえつつも最終的に心の底から感心できるのは、「ポロというクルマには操る楽しさが満ち溢れている」ということだ。

アクセルペダルを軽く踏み加えた際に、間髪を置かずスッと前に出るリニアな動きの感触。路面とタイヤが常にしっかりと食いつき、ステアリング操作に対してドライバーに余計な動きも物足りなさも感じさせない自然さなどが、そんなテイストを醸し出している。

そんなことは当たり前と思われるかも知れないが、排出ガス浄化という足かせを履かされ、安全アイテムの装着を強要され、そして今度はCO2削減を命題とした燃費性能の大幅向上を求められるといった様々なタスクが課せられた現代のモデルには、そんな「当たり前」の感覚がなおざりになっているものが少なくない。

たとえば、まるで「ゴムひもが伸び縮みする」かのように加減速フィールを生み出すCVT車しか知らない人がこのモデルに乗ったとすれば、そこでは、どこまでも自然で軽快なこのモデルの走りのテイストにきっと憑き物がいくつも落ちたかのようなフレッシュな感覚を受けられるはず。

ごくごく当たり前の動きを当たり前にやってのける。最新のポロとは、実はそんな走りの感覚がとても気分の良い1台でもあるのだ。(文:河村康彦)

フォルクスワーゲン ポロ TSI ハイライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1685×1475mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1100kg
●エンジン:直4SOHCターボ
●排気量:1197cc
●最高出力:77kW(105ps)/5000rpm
●最大トルク:175Nm/1500-4100rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●車両価格:242万円(2010年当時)

[ アルバム : フォルクスワーゲン ポロ TSI ハイライン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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