現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜ受けなかった!? 革新的&個性的だったはずが…大失速したクルマたち

ここから本文です

なぜ受けなかった!? 革新的&個性的だったはずが…大失速したクルマたち

掲載 25
なぜ受けなかった!? 革新的&個性的だったはずが…大失速したクルマたち

 多くの人にとって必要だが、決して安くないモノの代表が自家用車だ。こうした理由から、こだわりのあるクルマ好きを除き、一般的には個性は薄いが堅実で信頼性の高いクルマが選ばれている。

 だが、そんな“普通車”のなかには異端のモデルも存在する。ここでは、特殊なコンセプトを採用したクルマや国内で製造された海外モデルなど、登場前には大いに期待されていたものの、実際には成功できなかった悲運のクルマたちを見ていきたい。

なぜ受けなかった!? 革新的&個性的だったはずが…大失速したクルマたち

文/長谷川 敦、写真/トヨタ、ホンダ、マツダ、FavCars.com

あまりの革新性に時代が追いつかず?「トヨタ iQ」

リッターカーでありながら革新的なコンパクトさで登場したトヨタ iQ。後に1.3リッターモデルも追加されるが、それが売り上げ向上にはつながらなかった

 主に街中の短距離移動に用いられるクルマをシティコミューターと呼ぶ。シティコミューターの特徴はコンパクトなことで、1、2人の搭乗と、それほどたくさんの荷物を積まないことを前提にデザインされている。その代表が1997年に登場したスマートで、その全長の短さと、思いきりのいい2人乗り設定などで注目を集めた。

 そんなスマートをお手本にしたかのようなモデルがトヨタからリリースされた。2008年発売のiQは、3mを切る全長ながら、3+1のシート構成を実現し、車幅は5ナンバー枠の1680mmと、なんとも変わった縦横比のモデルだった。

 軽自動車ではなく普通車で、初期モデルには1リッターの3気筒エンジンを搭載。それなのにホイールベースはぴったり2mというiQは、市街地での走りやすさや駐車時の利便性などを追求した結果、こうした“寸詰まり”フォルムになったわけだが、既存の同系統モデルに対して大きなエンジンと余裕のある車幅により、他にはない強烈な個性を発揮した。

 実際のiQは、その縦横比からは想像できないほどの走行安定性が確保され、発表直後はメディアからの評価も上々だった。2008年の日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞しているが、実は同賞の発表はiQの販売よりわずかに早く、それだけこのiQが期待されていたことがわかる。

 だが、期待を一身に背負って登場したiQの販売成績は振るわなかった。発売当時の日本国内での価格はローグレードで129万円と同時期の軽自動車より高く、さらに普通車のコンパクトカーでは同じトヨタのパッソをはじめ、強力なライバルが数多く存在していた。

 全長を切り詰めすぎたゆえに荷物を載せにくく、車体価格や維持費では軽自動車に対して不利になるiQの国内販売は伸びず、頼みの綱のヨーロッパでもあまり売れなかった。そうした理由もあり、iQの販売は2016年に終了となった。

 すでに多くの軽自動車が事実上のシティコミューターとして活躍している状況では、いかにiQの出来が良くても、市場に定着する余地はなかったのかもしれない。

打倒プリウスを目指しながらもシリーズは終焉に「ホンダ インサイト」

シリーズ最後のモデルになった3代目ホンダ インサイト。インパクトの大きかった初代モデルに比べると普通の外観になったが、個性が薄れてしまったとも言える

 トヨタが1997年に発売した世界初の量産型ハイブリッドカーのプリウスは、世界の自動車業界に衝撃を与えた。そしてこの初代プリウスが達成した28km/L(10・15モード)という優れた燃費性能は、後発のモデルに対して大きなハードルとなった。

 そんななか、1999年にホンダからも同社初の量産型ハイブリッドカー・インサイトにデビューする。プリウスの対抗馬となるインサイトは、当時の量産車最高となる35km/L(10・15モード)の燃費性能を発揮し、その高性能をアピールした。

 しかし、インサイトの実現した低燃費は、涙ぐましい努力の結果によるものだった。目標の燃費性能実現に向けて、インサイトでは大胆な軽量化設計をとり入れていたのだ。

 モノコックはオールアルミ製で、ボディにもアルミとプラスチックを使用。シートは運転席と助手席のみにするなど、極端な軽量化により、重量のあるバッテリーを搭載しながら初代インサイトの車重は820kgに仕上げられた。

 主に軽量化によって当時最高の燃費性能を実現したものの、それが仇となって初代インサイトの実用性は高いとは言えなくなり、結果的に販売成績は低迷してしまった。超低燃費を謳い、販売前の期待が大きかったにもかかわらず、その失速ぶりもまた大きかった。

 2009年に登場した2代目以降のインサイトは、車名こそ同じものの路線を変更して巻き返しを図るが、ヒットと呼べるほどの売り上げを残せなかった。さらに既存のホンダ車にハイブリッドモデルが増えたこともあって、2022年にシリーズの販売を終了した。

短命に終わったバブルの落し子「マツダ ユーノス プレッソ」

ユーノス プレッソ。1991~1998年にマツダ系列のユーノス店から販売されたFFのスペシャルティスポーツクーペで、ロードスターと並ぶユーノスの看板だった

 日本国内がバブル景気に沸いていた1980年代後半から1990年代にかけて、自動車メーカーのマツダが採用した戦略が5チャンネル(販売店)体制。「マツダ」「アンフィニ」「ユーノス」「オートザム」「オートラマ」の5店を展開して販売力を高めようとしたこの戦略は、メリットよりもデメリットが多くなり、最終的にマツダの経営危機を招いてしまう。

 そのチャンネルのひとつだったユーノスからリリースされたのがスペシャリティスポーツクーペのユーノス プレッソだ。日本国内ではプレッソとして販売されたこのモデル、ヨーロッパでは3カ月先行してMX-3という名称で発売され、一定の評価を得ていた。

 日本でもマツダの期待を背負って登場したプレッソだが、このクルマが登場したのは1991年で、間の悪いことにすでにバブル景気は後退の兆しを見せ始めており、それがプレッソの運命にも大きく影響を落とすことになった。

 2ドア+ハッチバックの4シーターモデルだったプレッソには、当時世界最小のV6エンジンが搭載されていた。その排気量は1.8リッターであり、どちらかというと大排気量モデルに採用されるV6をあえて1.8リッターで用いたことにマツダの意欲が感じられた。

 ボディはスポーツカー然としたローダウンフォルムだが、リアにはボディラインと一体化したガラスによって思いのほか余裕のある後部シートの天井高を確保。4シーターでありながら2シーターにも見える独特なスタイルはプレッソだけの魅力でもあった。

 このように、クルマ単体で見れば決して出来が悪くなかったのだが、当時のひっ迫していたマツダの経営状態や、バブル景気崩壊のあおりを受けて、プレッソは次世代モデルを生み出すことなく一世代8年でその歴史を終えている。

 欧州での評価や売り上げに比べて日本での失速が目立ったユーノス プレッソの思い出は、その悲劇性ゆえに現在でも一部の人の記憶に深く刻まれている。

貿易摩擦緩和にひと役買えず「トヨタ キャバリエ」

シボレーが製造し、トヨタが輸入して自社のバッジを冠したキャバリエ。この写真ではノーズのエンブレムがトヨタになっているが、ナンバーは海外仕様のまま

 1980年に顕在化した日米自動車貿易摩擦は、90年代に入っても解消の兆しは見えず、自国のモデルが日本で売れないアメリカから日本には、さまざまなかたちでプレッシャーがかけられていた。

 そうした自動車貿易摩擦を緩和する施策のひとつとして、アメリカ製のクルマに日本メーカーのバッジを与え、国内での販売力を利用して売り上げ向上を狙うというものがあった。

 このような経緯で誕生したのが、トヨタが販売するアメリカ・シボレー社のキャバリエだ。

 1982年にアメリカで販売が開始されたキャバリエは、FFコンパクトカーという、それまで大排気量モデルを得意にしていたシボレーにとって新たな挑戦となるカテゴリーだった。そんなキャバリエの3代目モデル(1995年)が、トヨタのバッジを付けて日本で販売されることになった。

 1996年、トヨタはキャバリエの販売をスタート。販売目標は年間2万台で、そのために2.4リッターエンジン搭載のFFセダン&クーペとしては思い切った低価格に設定。アメリカ車を日本に定着させるために最大限の努力を行った。

 しかし、キャバリエのライバルとなる国産車は多く、加えて同クラスの国産モデルに比べて高いとは言えないキャバリエのクオリティも足かせになった。この結果、トヨタ版キャバリエの販売台数は目標に遠く及ばなかった。

 販売目標を達成できなかったトヨタは、当初の予定を前倒ししてキャバリエの販売をストップするという決断を下した。トヨタでは国内向けにいくつかの変更をキャバリエに施していたが、その期待もすぐに失速してしまった。

懐かしの名称復活も期待外れに「ホンダ クロスロード」

2代目ホンダ クロスロード。ミニバンの2代目ホンダ ストリームのプラットフォームを利用して作られたクロスオーバーSUVで、7人乗りシートが装備された

 現在はSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)という名称が一般的となっているが、かつてこのジャンルのクルマはRV(レジャー・ビークル)と呼ばれていて、1990年代前半の日本はちょっとしたRVブームになっていた。

 このRVブームのなか、自社製RVを持っていなかったのがホンダだ。そこでホンダがとった作戦が、当時提携関係にあったイギリス・ランドローバー社製初代ディスカバリーをOEM(他社製造)モデルで販売すること。

 ホンダはディスカバリーにクロスロードの名称を掲げ、1993年から販売を開始した。初代クロスロードは、ホンダ自社開発のCR-Vが登場するとその役目を終え、1996年に販売終了となった。

 そんなクロスロードの名称が2007年に突如として復活した。これはCR-Vがワンランク上のクラスへと昇格したためで、それまでCR-Vに乗っていたユーザーの受け皿的存在での復活だった。

 新生クロスロードは名称こそ初代と同じものの、まったく異なるモデルであり、ガチのRV(SUV)だった初代に比べると、より乗用車に近い低床のSUVモデルで登場。構成やデザインも上々で、発売前からメーカーの期待も高かった。

 だが、2代目クロスロードの販売は伸びず、ホンダはわずか3年半でこのモデルの生産を打ち切ってしまった。価格や使い勝手など、販売不振の原因には諸説あるが、そのどれもが決定的とは言えず、ただ「売れなかった」という事実のみが残った。

 販売当初は注目されるものの、予想外に早く“失速”してしまうモデルは意外に多い。それだけユーザーの嗜好や動向を読むのは難しいことなのだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
AUTOSPORT web
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
ベストカーWeb
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
Auto Messe Web
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
AUTOSPORT web
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
AUTOSPORT web
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
AUTOSPORT web
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
AUTOCAR JAPAN
北米の自動車博物館ハシゴ旅! 往年のF1GPカー「ペンスキーPC-1」に出会えて大感激!!…が、展示車両数の多さにすべてを見ることができずに大後悔…
北米の自動車博物館ハシゴ旅! 往年のF1GPカー「ペンスキーPC-1」に出会えて大感激!!…が、展示車両数の多さにすべてを見ることができずに大後悔…
Auto Messe Web
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
AUTOSPORT web
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
くるまのニュース
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
AUTOCAR JAPAN
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
Auto Messe Web
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
motorsport.com 日本版
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
motorsport.com 日本版
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
AUTOCAR JAPAN
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
AUTOSPORT web
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
Auto Messe Web
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
AUTOSPORT web

みんなのコメント

25件
  • どれもデビュー当時から大して売れなかったから大失速とは言いません、大失速とはC-HRみたいに売上台数が一気に数分の1になる事を言うのでは?
  • iQは今でも無理だな。軽自動車の壁は破れない

    キャバリエのキャンパストップはカーグラフィック編集部でも長期レポート車として購入されてた。
    やはり雨漏りの問題はあったな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村