フルラインナップの主役はセダン
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】ニッポン・プレミアム【今回試乗したモデル LS、ISなど】 全123枚
やはり、セダンはいい。
恒例のレクサスフルラインナップ試乗会に参加して、改めてセダンの良さを実感した。
今年は富士スピードウェイ内にあるレクサスの研修施設、レクサスカレッジを起点として開催された。
このフルラインナップ試乗会とは、レクサスが報道陣向けに量産全モデルを一堂に集めて、公道での試乗機会を提供するイベント。
モデル毎の試乗会ではなく、レクサスというブランドについて、レクサスと報道陣が率直な意見交換できる貴重な機会だ。
今年のテーマは、セダンである。LSとISに大幅な年次改良が施された。
走行する前から、両モデルに対して筆者は大きな期待を持っていた。その背景には、2019年に大磯プリンスホテルを起点としておこなわれたレクサスフルラインナップ試乗会で乗った、RXの見違えるような進化がある。
その時点で、レクサスのモノづくりを「オールウェイズ・オン」という、継続的な改良を掲げており、RXはその象徴的な存在だった。
こだわったのは、走りだ。
ボディ、サスペンション、ブッシュなど、クルマが走る上での基本中の基本を丁寧に見直したことで、RXの走りは一変した。
ドライバーの安心感が増したことで走りが楽しくなり、また車内での心の余裕が生まれた。
一方、LSは……。
レクサスLS 「車内で泳いでいる」
LSは2017年10月のフルモデルチェンジで、ドライバーズカーへ刷新。
その後、何度かの改良を進めていたが、2019年大磯試乗での感想としては、「RXがこれだけ進化できるのだから、LSでもさらにもう一歩、クルマ全体としての動きの凝縮感が欲しい」と思った。
それから約1年経った、今回の試乗では、2020年11月に比較的大きな年次改良を施した。
3.5Lツインターボの制御、2WDでフロントサスペンションをアルミ素材活用での高強度など、「静粛性や乗り心地をはじめとする走行性能に関係するパーツや制御を細部まで徹底的につくりこんだ」という。
最も大切にしたのは「人の感性を大切にすること」だ。
試乗後、筆者はLS開発責任者に対して「まるで、車内で泳いでいるようだ」と申し上げたところ、最初はきょとんとした顔をされたが、詳しい感想を追加すると、こちらの言わんとするところを理解したようだった。
「車内で泳いでいる」とは、ドライバーの全身に均等に水圧がかかっているかのうように、LSと外界がしっかりと繋がっていて、それをドライバーが実感できる、という筆者なりの表現だ。
よく言われる「ドライバーの意のままに」といった走行レベルの、さらに一歩先のイメージだ。
ツインターボのみならず、電動車LS 500 hでも楽しく泳げた。
レクサスらしさをどう表現するのか?
次に、ISに乗った。
一部メディアは今秋、ISの開発部隊となった「トヨタ・テクニカル・センター下山」で最新ISを試乗しているが、筆者は今回の公道試乗が新IS初体験となった。
試乗会場で配置された、VR(ヴァーチャル・リアリティ)による下山での試乗も体験した。ドライバーを務めるのは、IS開発主査の小林直樹氏だ。
下山は、日本のテストコースでは異例の起伏が大きい中での曲がり込みが急なコースレイアウトが特長で、独ニュルブルクリンクを彷彿させる。
もちろん、新ISは下山のみならず、東富士研究所内のワインディング試走路や世界各地の一般路と高速道路で、走りを極めてきた。
実際に富士スピードウェイを出て御殿場市周辺を走り、最も強く感じたことは、ロードホールディングス性の良さだ。
いわゆる「足(サスペンション)がよく動く」ことで、クルマ全体の動きに無駄がなく、ドライバーの意思に対して正確かつ丁寧に走行状況をフィードバックしてくれる。
この感覚は、先に乗ったLSでの「泳いでいる感じ」とは違う。
LSとIS、ボディの大きさや、車格の違いは当然あるが、レクサスとしてLSとISそれぞれで「レクサスらしさをどう表現するのか?」を突き詰めた結果だと思う。
その上で、IS開発陣にはこだわりがある。
IS、あえてプラットフォーム継承の理由
IS試乗後、IS開発担当者とISそのもの、レクサスブランド、さらにセダンというカテゴリーについてなど、多角的な意見交換をした。
その中で、彼がまず指摘したのが、ISのプラットフォームについてだ。
トヨタのGA-Lプラットフォームを、先代から継承した。同プラットフォームはモデルラインナップを離れたGS、また現行RCで使われている。
新ISの開発は2017年にスタートしたが、その時点で新規プラットフォームTNGAに刷新するか、それともGA-Lを継承するかの検討し、それぞれのプラットフォームでの試作車を用意してさらなる検討を進めた結果、GA-L継承を決めたという。
決め手は、2013年のISフルモデルチェンジ以来に溜まった知見により、ISの弱点は明確化されていた。
そこを徹底的に直す方が、TNGAでのゼロ出発の開発よりも、ISを本当に欲しいと思ってもらえるユーザーに対して、新ISの良さを強くアピールできる、という判断だった。
これこそが、レクサスが貫く「オールウェイズ・オン」であり、その成果を試乗の中で実感できた。特に、IS 350は感性に訴えるクルマの動きとエンジンサウンドのマッチングが良かった。
セダンは、けっこう楽しい。
富士山麓で新しくなったLSとISに乗って、素直にそう思った。
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GSは廃止されなかったろう
はっ?