カーボンニュートラル、地球環境、2030年に向けた動き……。クルマ業界は確実に電動化への流れだが、「まだ今は内燃機関を楽しみたい!」、これが本音ではないだろうか。
世界でさまざまなクルマが作られている。そしてクルマにとって「第2の顔」とも言えるエンジンについては、特別な場合を除いてはある程度共通のエンジンが搭載される。
純ガソリンエンジン最高の証であり最後の砦 「直6」復活の理由と行方
そこで、ここでは同型搭載エンジン車同士で、どの車種が一番そのエンジンの味を引き出せているのか比較してみる。
※本稿は2021年8月のものです
文/松田秀士 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年9月26日号
[gallink]
■トヨタ・8NR-FTS
●搭載車種:カローラスポーツ/C-HR/カローラセダン
エンジンの魅力を一番引き出しているのはカローラスポーツ。10速が使えるので小排気量エンジンを有効活用できる
8NR-FTSは1.2L直4直噴ターボエンジンで、熱効率は量産過給エンジンとしては脅威の36%。つまり燃費がよく、水冷インタークーラーを採用する等でパワーも116ps/18.8kgmと1.2Lとしてはパワフルなエンジンでもある。
これを搭載するカローラスポーツとC-HRには6速MTとCVTの設定があるが、カローラセダンは6速MTのみの設定となる。
トルク特性を見ると1500~4000rpmという広範囲で最大トルクを発生しているものの、18.8kgmというトルクはそれほど大きなものではない。
やはり、このクラスの小排気量エンジンにはCVTの相性がよい。その意味でC-HRとカローラスポーツに絞られるが、両車のCVTはシーケンシャルモードにC-HRは7速、カローラスポーツは10速が使える。小排気量エンジンは多段のほうがエンブレも含めて小刻みに有効活用できる。カローラスポーツだね。
■スバル・CB18
●搭載車種:レヴォーグ/フォレスター
エンジンの魅力を一番引き出しているのはフォレスター。フォレスターの車体サイズならCB18の魅力が引き出せるはずだ
CB18は1.8L水平対向4気筒直噴ターボエンジンで、熱効率は40%と言われるリーンバーンのターボエンジン。直噴では、燃料はインジェクターから筒内に直接噴射するので過給されるのは空気のみ。リーンバーン燃焼には好都合だという。
ターボといえば最近ではツインスクロールタイプといって、低回転域でもしっかり過給できるターボが主流だが、このCB18ではオーソドックスなシングルスクロールを採用している。ただし小径なので1600rpmという低回転域から最大トルクを発生している。
CB18のトピックはシリンダー同士のボアピッチ(間隔)を短くし、これまでのFB16(1.6L直噴ターボ)よりもエンジン全長は約40mm短くなっている。さらに重量も14.6kg軽量化されている。
スバル車は全車エンジンが縦置きなので、エンジン長が短くなり、かつ軽量化されたということは、重心が車体中央に移動したことを意味する。
その恩恵を強く受けるのは地上高の高いSUV。CB18はフォレスターのほうがより特性を生かせると思うのだ。
■マツダ・SKYACTIV-X
●搭載車種:CX-30/マツダ3
エンジンの魅力を一番引き出しているのはCX-30。マツダの威信をかけたエンジンはSUVのCX-30がより楽しめる
ガソリンエンジンでディーゼルのように燃焼させる。ディーゼルエンジンは火花点火は行わず圧縮着火を行う。ガソリンも同じように燃焼させることで超希薄燃焼が可能となり、有害物質や燃費を抑えられる。その理想を追求し完成したのがSKYACTIV-X。マツダ以外どのメーカーもモノにできていない技術だ。
筆者は国内外やテストコース、数々の条件でこのエンジンをドライブしたが、特性を生かせるのは6速MTだった。
SKYACTIV-Xは複雑ゆえに補器類も多く、エンジンルームはギッシリ。重量も嵩む。しかし燃費はよいのだ。
従ってこのエンジンを搭載してメリットが大きいのは背が高く空力的に燃費の悪いSUVのCX-30だろう。
■ホンダ・S07
●搭載車種:N-BOX/S660
エンジンの魅力を一番引き出しているのはS660。同じS07系エンジンを積んではいるが、実は両者で似て非なる性格に仕上がっている
N-BOXとS660に搭載されるターボエンジンS07は、型式こそ同じだがそのあとにAとBが付く。N-BOXに搭載されるのはS07BでS660はS07Aだ。実はBのほうが新しく、両者でボアストロークも異なる別物なのだ。
S07Aは、もともと先代N-BOXに搭載されたエンジン。新型になる際に高効率を求めロングストローク化したのがS07Bなのだ。両エンジンともに64ps/10.6kgmとスペックは両者変わらない。
先日サーキットでS660モデューロXをドライブした。そこで感じたのはNシリーズには粘りあるS07Bが合っているけれども、ピックアップや回転域のキレはショートストロークのS07Aだね。筆者はS07Aを推します!
■BMW・B48
●搭載車種:GRスープラSZ/BMW Z4/MINI
エンジンの魅力を一番引き出しているのはトヨタGRスープラSZ。GRスープラは直4以外にB58と呼ばれる直6エンジン搭載も考慮している。なのでシャシーのキャパシティも充分にある
B48はBMWの新世代モジュラーエンジン。これは1気筒0.5Lで、3気筒なら1.5L、6気筒なら3Lで、このB48は4気筒なので2Lとなる。ボアストローク、さらにボアピッチまで共通なのでシリンダーブロックも供用が可能だ。
さてこのB48エンジンはターボモデル。MINIではJCWモデルに横置きで搭載される。FFなので駆動と操舵を前輪が受け持つので、パワーを使い切るには少々持て余し気味になる。
これに対し、もともとZ4もスープラも直6まで搭載可能なプラットフォーム。そこに直4縦置きなので重心が中央に移動し、前後荷重配分的にフォローの方向になる。
また、Z4やスープラはこのB48にシリンダーを2個足した直6を想定したシャシーだ。B48ならシャシーグリップレベルに充分な余裕があるわけで、しっかりとパワーを使い切ることができるはず。
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みんなのコメント
>両者でボアストロークも異なる別物なのだ。
って、別のエンジンって事だよね?