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【F1第5戦無線レビュー(3)】「この作戦は、やりたくない戦略だった」開幕5戦でさらに深まったベッテルとフェラーリの溝

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【F1第5戦無線レビュー(3)】「この作戦は、やりたくない戦略だった」開幕5戦でさらに深まったベッテルとフェラーリの溝

 2020年F1第5戦70周年記念GPでは、第4戦イギリスGPより1段階柔らかいタイヤを使わなければいけなかったために、タイヤのマネジメントと戦略が大きく勝敗を分けた。

 そして、セバスチャン・ベッテルと彼が所属するフェラーリとの間では、今回のレース戦略を巡って意見の食い違いが露呈された。お互いの溝が悪化したであろうやりとりを無線で振り返る。

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 まず最初に不満を言い出したのは、ベッテルだった。22周目に1回目のピットインに対して、こう無線で不満をチームに伝えた。

ベッテル:この作戦は僕たちがレース前に話していた、やりたくない戦略だよ。いま、僕はまさにそのなかで戦っている。あそこでピットインしたら、トラフィックに引っかかると分かっているじゃないか

 スタート直後の3コーナーで単独スピンしたベッテルだったが、ピットインする直前の21周目には9番手までポジションを回復させていた。

 このときベッテルはハードタイヤを履いており、ラップタイムも1分32秒台をコンスタントに出していた。ミディアムタイヤで前を走るダニエル・リカルド(ルノー)との差も3秒差のままで、渋滞に引っかかっているという状態ではなかった。

 ところが、フェラーリはベッテルをピットインさせた。そして、ピットアウトすると0.9秒前にはまだピットインをせず、ハードタイヤで粘り強く走っているキミ・ライコネン(アルファロメオ)がいた。

 これがベッテルが言う「僕たちがレース前に話していた、やりたくない戦略」だった。

 チーム代表のマッティア・ビノット代表はレース後、「このような結果に終わったのは、セバスチャンが1周目にスピンしたことが大きく影響していた」と、戦略には問題はないと主張した。

 しかし、決して速いマシンではないフェラーリが、最後尾まで脱落したベッテルに採るべき作戦は、早めのピットストップではなく、皆が2ストップを採ることが予想されるレースで1ストップを選択することだった。

 それが決して無謀な作戦でなかったことは、チームメイトのシャルル・ルクレールが1ストップで4位を勝ち獲ったことが証明している。

 もし、ベッテルが1ストップをしていたら、8位でフィニッシュしたエステバン・オコン(ルノー)に続いて、9位完走を果たしていた可能性が高い(ベッテルが22周目にピットインする直前の21周目時点で、ベッテルはオコンの3.5秒後方を走行し、オコンも1ストップだった)。

 では、なぜフェラーリは、ベッテルを22周目に入れたのか。ここで気になるのは、チームメイトのルクレールの存在だ。21周目の時点でベッテルの前にはオコンとリカルドが3.5秒以内にいたが、じつは1.6秒後方にルクレールがいた。

 ルクレールは18周目にミディアムからハードタイヤに交換し、1ストップ作戦を採っていた。

 もし、ベッテルがそのまま1ストップで行くと、おそらくピットストップのタイミングは26周目前後だっただろうから、ルクレールはあと4周、ベッテルの後ろを走行することになる。直前の2周のふたりのラップタイム差は0.4~0.6秒だったから、ルクレールのタイムは約2秒遅くなる。

 これをフェラーリが嫌がり、ベッテルの戦略を1ストップから2ストップにすることで、強制的にルクレールの前から排除したのではないか。

 スピンをして最後尾に下がったベッテルよりも、入賞圏内でレースをスタートさせていたルクレールをフェラーリが優先するのは当然だ。ただし、そのやり方がまずかった。

 1回目のピットストップでベッテルにハードタイヤを装着させたフェラーリは、そのわずか11周後の33周目に再びベッテルをピットインさせ、ミディアムを履かせたのだ。これに対しても、ベッテルはレース後にこう不満を述べた。

「なんでハードで10周しか走らず、ミディアムで20周も走ることにしたの? レース終盤はタイヤが終わってしまったよ」

 たしかにこのとき、ベッテルはカルロス・サインツ(マクラーレン)に引っかかって、しかも1秒以内にいながら、なかなか抜けない状況となっていたため、アンダーカットに出たと思われる。

 しかし、11周目に1回目のピットストップを行った段階でベッテルを渋滞のなかに戻すことは分かっており、それならばミディアムを第2スティントで消化しておくという戦略のほうが良かったのではないか。

 レース後、ベッテルはテレビ局の取材にこう語った。

「なぜスピンしたのかは分からないけど、戦略がもう少しまともなら挽回は可能だった。僕と彼(ルクレール)の最大の違いは僕はクリーンなレースができず、彼はそれができているということ」

 そのルクレールは4位に入賞し、チェッカーフラッグの後、こう無線をチームと交わしていた。

フェラーリ:P4、P4

ルクレール:イエッサー!!! ワァァァァ。イエス、プランC、ベイビー!! オー、イエス。最高の気分だ。とてもハッピーだよ。

フェラーリ:ファンタスティックな走りだった。アメージング

ルクレール:トップ10を教えて。

フェラーリ:フェルスタッペン、ハミルトン、ボッタス、そして君だ。P4だ。それからアルボン、ストロール、ヒュルケンベルグ、オコン、ノリス、そしてクビアトだ。

ルクレール:OK。で、セブは?

フェラーリ:セバスチャンはP12だ。

ルクレール:了解。もう1回、トップ3を教えて。

フェラーリ:フェルスタッペン、ハミルトン、ボッタスだ。

ルクレール:了解

 これに対して、12位でチェッカーフラッグを受けたベッテルはチームからの無線に無言を通した。

フェラーリ:P12、P12、グッド・ジョブ。君はベストを尽くした。ブレーキを冷やすのを忘れるな。順位は、フェルスタッペン、ハミルトン、ボッタス、シャルルはP4、アルボン、ストロール、ヒュルケンベルグ、オコン、ノリス、そしてクビアトまでがトップ10だ

ベッテル:…………

 開幕して、まだ5戦。ベッテルとフェラーリの間の重苦しい雰囲気は、さらに悪化してしまったようだ。

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