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風前の灯…名門フーガの実力と「残しておく意味」

掲載 更新 32
風前の灯…名門フーガの実力と「残しておく意味」

 「セダン」というカテゴリーの影がどんどん薄くなっている。特に高級セダン市場の販売台数は全体的に低調で、ホンダのフラグシップセダンだった「レジェンド」は販売終了に追い込まれ、トヨタのフラグシップセダンである「クラウン」は、次期型でSUVになるという噂がある。日産車でも、フラグシップセダンである「シーマ」のみならず、高級セダンである「フーガ」も、近々生産終了になるという情報が出てきた。

 現行型は2009年11月に発売され、すでに12年選手となるフーガ。「セドグロ」の魂を受け継ぎ、長年日産の高級セダンとして君臨してきたフーガが廃止となってしまうのは、ファンとしては非常に寂しい。はたしてフーガはこのまま消滅してしまってもいいのか、残しておくべきなのか、フーガの実力を振り返りつつ、考察しよう。

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文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN

SUVが台頭するなかで誕生した初代フーガ

 1970年代から80年代にかけて、日産の高級セダンとして一時代を築いた「セドリック」と「グロリア」。伝統的な後輪駆動のパーソナルセダンとして、流行のスタイリングや最新の装備を取り入れつつ、ライバルのクラウンとしのぎを削ってきた。

 その伝統的を引き継ぐ後継車として2004年10月に誕生したのが、初代フーガ(Y50型)だ。厚みのあるボディとスポーティで若々しいスタイリングと、BMWの5シリーズをターゲットに開発されたことによる高い走行性能や快適性、インテリアの質感で、登場当時から非常に完成度の高いモデルだった。

 フロントミッドシップにエンジンを配置した「フロントミッドシップパッケージ」の採用や、レスポンス・高回転の伸びを重視したセッティングの3.5リッター縦置きV型6気筒のVQエンジン、日産車初のプッシュ式エンジンスターターボタンの採用など、見た目を裏切らない走りのよさと次世代を予感させる装備が特徴。

 2004年頃といえばすでにSUV人気も上昇し、ハリアーが高級車として認められるようになった時代であったが、初代フーガは十分な存在感と魅力を放つモデルだった。

初代フーガ。スタイリッシュで若々しいデザインと本物志向の走りが魅力的

スポーツセダンとしての高い実力を証明してみせた現行フーガ

 現行型である2代目フーガ(Y51型)は2009年11月に登場。初代のスポーティ路線を継承しつつ、アスリートのように動きのある筋肉質なボディラインに生まれ変わった。国内仕様版のエンジンは当初2.5L V6と3.7LのV6が設定されていたが、2010年11月に「フーガ HYBRID」が追加された。

 3.5L V6アトキンソンサイクルエンジンにモーターを組み合わせたパラレルハイブリッドで、モーターのみの走行も可能。このフーガ HYBRIDの北米仕様車は、0-400m加速で13秒903を記録し、世界最速の市販ハイブリッドとして、当時のギネス世界記録に認定された。これは、ポルシェパナメーラのタイムに勝るものであり、スポーツセダンとしての高い実力を証明した。

 インテリアは大きくうねりのある、曲面を多用したダッシュボードパネルやドアトリムが特長で、木目調もしくは本木目のフィニッシャー、鈍い金属調の輝きを放つ仕上げなど、高級車の王道を行く高い質感だ。

 デビュー以来、ビッグマイナーチェンジや定期的な一部仕様向上などが実施され、ハイブリッドのシステム改良、エクステリアの刷新、先進安全運転支援システムの向上、装備の充実など度々ブラッシュアップがなされてきた。一時期、エンブレムで迷走する様子も見られたが、高級スポーツセダンとして何とか復権を果たそうという、日産の気概を感じなくもないエピソードだった。

残念ながら、生き残り続ける意味はない

 高級セダンが憧れの的であった時代は、大きなボディサイズ、質感の高い内外装、ゆとりのパワー、静粛性、快適な乗り心地、先進的な装備の数々、という基本的な要素があればよかった。今より規制が厳しくなかったため、大排気量で燃費が悪いのも、ある意味、ステータスの一つになり得た。

 ところが今は時代が違う。クルマは厳しい環境規制に対応しなければならず、高い安全性能も求められる。「排気量」というわかりやすいヒエラルキーは徐々に薄れており、ユーザーは地球の未来を意識しつつ、多様化するライフスタイルのあらゆる面に注意を向けながら、価値あるところにお金を使う。

 これらを踏まえると、フーガの存在はかなり厳しいといわざるを得ない。フーガは「高級スポーティセダン」という位置づけではあるが、スポーツカーを買いたい人が狙うモデルでもないし、スカイラインセダンとの棲み分けも曖昧だ。ロングドライブで快適なクルマが欲しいなら、今ならセダンでなくても選択肢は豊富にある。

 「クルマは大排気量の内燃機関エンジンを搭載したセダンでなければならない」という人もいるだろうが、そんなに多くないことは今のセダンの販売状況を見ると明らかだ。今後フーガが内燃機関エンジンで全面刷新したとしても、好調な販売を期待することはできないだろう。

 さらに、ここまで販売数が落ちてしまったら、もはやブランド力もほぼゼロに等しく、残念ながらフーガには、今後も生き残り続ける意味がないといわざるを得ない。

◆      ◆     ◆

 次期型フーガが今のままの形式でモデルチェンジする可能性は、ないに等しい。筆者は、「フーガ」ブランドは終わりにして、「アリア」をベースにした「ラグジュアリーEVセダン」を、日産のかつてのフラッグシップセダン「プレジデント」として登場させるのが、日産の高級セダンが生き残るための唯一の方法だと考えている。法人需要はいまだにあるフーガとしては、この道しか残されていないのでは無いだろうか。

 セドリック/グロリアの系譜を継ぐドライバーズカーとして、デビューは華々しかったフーガ。モデル更新が行われず無様な状況のまま放置されているが、フーガを思うならば、日産にはせめてなるべく早く、「決断」をしてほしい。

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みんなのコメント

32件
  • 日産はセドグロを残すべきだった
    5ナンバーやタクシーも用意して4年ごとにモデルチェンジしてれば今も売れてたよ(笑)
  • CIMAのままにしとけばよかったのに
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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