現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【スーパーカーにまつわる不思議を考える】少量生産のスーパーカーブランド「パガーニ」がビジネスで成功した理由とは? 前編

ここから本文です

【スーパーカーにまつわる不思議を考える】少量生産のスーパーカーブランド「パガーニ」がビジネスで成功した理由とは? 前編

掲載 2
【スーパーカーにまつわる不思議を考える】少量生産のスーパーカーブランド「パガーニ」がビジネスで成功した理由とは? 前編

イタリアンブランドが結束して行われるビッグイベント

2022年の5月26日~29日までの4日間、スーパーカーの聖地であるモデナは多くの人々で賑わった。モーターヴァレーフェスト(Motor Valley Fest)と称すスポーツカーの祭典が開催されたのだ。

前回の記事はこちら

このモーターヴァレーフェストとは、北はパルマ近郊のダラーラ、モデナのマセラティ、マラネッロのフェラーリ、サンタアガータのランボルギーニ、ボローニャのドゥカティなどのブランドや、それらをサポートするサプライヤーがひしめく一帯を意味している。自分たちのブランドだけをプロモートするのではなく、地域全体で外部へ向けて「made in Italy」をさらに強くアピールしようと一致団結し、その魅力をアピールするというユニークなイベントなのだ。

各ブランドのファクトリーやミュージアムは期間中特別条件で開放されるし、街中には最新モデルやクラシックカーが展示される。聞こえてくる爆音が何かと思えば、世界トップレベルのクラシックフェラーリたちが、コンクールデレガンスから抜け出してメインストリートをパレードランしている。これはスポーツカー好きにはたまらない。そしてこのイベントでは、年間に数万台を販売するメーカーも数十台しか販売しないようなブランドも皆同列に扱われているとことも注目すべきポイントだ。 

モーターヴァレーフェストで見かけた一人の男

それを象徴するような風景に筆者は出会った。

モーターヴァレーフェストで賑わうモデナ市街であるが、メインストリートのエミリア街道に面する小さな一角にも人だかりができている。値段が3億円とも4億円ともいうかなり特殊なモデルが並び、横にある販売スタンドでは、ブランド名華やかなTシャツや小物などが飛ぶように売れていく。なかなかじっくりと見ることができない希少なモデルを一目見ようという黒山の人だかりなのだ。その車の横で、にこやかに微笑む人物。なんとオラチオ・パガーニだ。彼のブランドであるパガーニのワンオフモデル、ウアイラNC、そして5台限定生産のウアイラ イモラの2台が無造作に並んでいる。

オラチオ氏も、年間数十台しか作らない極少量生産メーカーであるパガーニも、今やモデナの顔である。フェラーリやランボルギーニファンでパガーニの名を知らぬ者などいなく、モデナではフェラーリやランボルギーニに匹敵するほどの大きな発言力を持っている。1992年に誕生したまだ若いメーカーだが、世界中からそのニューモデルのウェイティングリストに自分の名前を載せようと大枚を懐に富裕顧客がやって来るのだから。

アルゼンチン生まれのオラチオ・パガーニは、幼少期よりスポーツカー作りの熱いパッションを持ち続け、同郷のファン・マヌエル・ファンジオとの知己を得ることに成功。それをバックに“私はランボルギーニで働くために生まれてきた”と強引にランボルギーニへと入社してしまう。そこで将来性があると見込んだコンポジット素材、つまりカーボンファイバー成形を徹底的に研究し、カウンタック25thアニバーサリーやディアブロなどの設計、製造に関わることに成功。続いて、独立しカーボンファイバー成形専門会社を設立するといった一連の流れは理想のスーパーカーを作るため、練りに練った彼の戦略であったのだ。 

完全主義者の創始者が作ったビジネスモデル

カーボンファイバー成形の第一人者となったオラチオ氏は、その特性を生かした軽量・高剛性のセンターモノコックシャシーを開発し、複雑な造形のボディスタイルをもった宝石のような少量生産モデルの開発に成功した。エンジンは前述ファンジオ氏の伝手で、AMGから特別スペックのエンジンを1機から発注可能な好条件を得ることに成功。ちなみに、多くのメーカーは自社エンジンの外販には消極的であり、「欲しいなら100台まとめて買え、そして技術フォローは一切しないよ」というような、甚だ厳しい条件が一般的なのだ。そんな中でパガーニに対しては大盤振る舞いだった。

オラチオ氏の努力と、彼をサポートする人々のおかげで、奇跡のようなスポーツカーメーカーが誕生し、ついに第1号車ゾンダC12を発表したのは1999年のことであった。その第1号車を販売するにあたって、プロトタイプは何万kmもの路上テスト走行が行われた。オラチオ氏は、少量生産だからすぐに壊れるというようなエクスキューズをすることは許せない完全主義者であった。そして、その間はフェラーリF1パーツの下請けなどで凌いだのだった。

デビューを飾ったゾンダは絶賛され、人々はその先進性や卓越した動力性能、そして美しいボディをこぞって賞賛した。オラチオ氏は人生最高の瞬間を迎えたのだった。

ところが、そんな世間の反応にもかかわらず、全くゾンダには注文が入ってこなかったという。途方に暮れるオラチオ氏であったが、それはある販売店からの提案をきっかけに、様変わりした。注文が殺到し始めたのだ。(後編に続く) 文/越湖信一、写真/越湖信一

前回の記事はこちらカーセンサーEDGE.netはこちら

こんな記事も読まれています

Hitotsuyama Racingがスーパー耐久参戦体制を発表。メルセデスAMG GT4にスイッチ
Hitotsuyama Racingがスーパー耐久参戦体制を発表。メルセデスAMG GT4にスイッチ
AUTOSPORT web
日産「GT-Rニスモ」と「フェアレディZニスモ」が1/43スケールで手に入る! 京商から8800円でも納得のミニカーが発売中
日産「GT-Rニスモ」と「フェアレディZニスモ」が1/43スケールで手に入る! 京商から8800円でも納得のミニカーが発売中
Auto Messe Web
ニッサン・エルグランドに改良型登場。アラウンドビューモニターなど全車標準装備し4月中旬発売へ
ニッサン・エルグランドに改良型登場。アラウンドビューモニターなど全車標準装備し4月中旬発売へ
AUTOSPORT web
ディフェンダーそっくり? 30分水に浮かべる その場で回転できる 1196馬力のヤンワンU8へ試乗
ディフェンダーそっくり? 30分水に浮かべる その場で回転できる 1196馬力のヤンワンU8へ試乗
AUTOCAR JAPAN
ベントレー史上2番目の営業利益を達成! 販売台数ではなく顧客価値に重きを置くブランド戦略へ加速しています
ベントレー史上2番目の営業利益を達成! 販売台数ではなく顧客価値に重きを置くブランド戦略へ加速しています
Auto Messe Web
『ぽんこつジムニー』ハコ替え計画24-1「塗装の続きとガラスの取り付け」
『ぽんこつジムニー』ハコ替え計画24-1「塗装の続きとガラスの取り付け」
グーネット
ニッサンが2030年までのフォーミュラE継続参戦を発表。次世代マシン『GEN4』の開発も加速
ニッサンが2030年までのフォーミュラE継続参戦を発表。次世代マシン『GEN4』の開発も加速
AUTOSPORT web
リカルド・ゾンタを抑えたフェリペ・マッサが通算3勝目。日曜降雨中止でランク首位浮上/SCB第2戦
リカルド・ゾンタを抑えたフェリペ・マッサが通算3勝目。日曜降雨中止でランク首位浮上/SCB第2戦
AUTOSPORT web
マクラーレン代表、2位を失ったのは戦略が原因ではないと説明。フェラーリの優れたペースに敵わず/F1第3戦
マクラーレン代表、2位を失ったのは戦略が原因ではないと説明。フェラーリの優れたペースに敵わず/F1第3戦
AUTOSPORT web
最強の「V型8気筒」ツインターボ搭載! 究極の新型「爆速ラグジュアリーSUV」初公開! 史上最もパワフルな「新型ディフェンダーオクタ」受注開始
最強の「V型8気筒」ツインターボ搭載! 究極の新型「爆速ラグジュアリーSUV」初公開! 史上最もパワフルな「新型ディフェンダーオクタ」受注開始
くるまのニュース
フェルスタッペン離脱の可能性に備えて、レッドブルF1がアロンソに接触したと海外メディアが報道
フェルスタッペン離脱の可能性に備えて、レッドブルF1がアロンソに接触したと海外メディアが報道
AUTOSPORT web
岡谷雄太、全日本ロードST600にWORK NAVI NITRO RACINGから参戦。カワサキからヤマハにスイッチ
岡谷雄太、全日本ロードST600にWORK NAVI NITRO RACINGから参戦。カワサキからヤマハにスイッチ
AUTOSPORT web
ナトリウムイオンバッテリーでEV価格を抑える 安価な次世代電池として期待されるワケ
ナトリウムイオンバッテリーでEV価格を抑える 安価な次世代電池として期待されるワケ
AUTOCAR JAPAN
新型Eクラス唯一のエクスクルーシブライン メルセデス・ベンツE300セダン/ステーションワゴン
新型Eクラス唯一のエクスクルーシブライン メルセデス・ベンツE300セダン/ステーションワゴン
AUTOCAR JAPAN
激辛&辛口な新しいGLCクーペのAMG版上陸!──GQ新着カー
激辛&辛口な新しいGLCクーペのAMG版上陸!──GQ新着カー
GQ JAPAN
まさかのレクサス風“軽”実車展示! 巨大グリルが“高級感”バク上げなホンダ「軽ワゴン」!? 豪華白内装もスゴイ「N-BOX」とは
まさかのレクサス風“軽”実車展示! 巨大グリルが“高級感”バク上げなホンダ「軽ワゴン」!? 豪華白内装もスゴイ「N-BOX」とは
くるまのニュース
バラしてわかったゴブジ号の中身! トランスミッションに異変あり?【週刊チンクエチェントVol.33】
バラしてわかったゴブジ号の中身! トランスミッションに異変あり?【週刊チンクエチェントVol.33】
Auto Messe Web
愛車の履歴書──Vol33. 宅麻伸さん(バイク編)
愛車の履歴書──Vol33. 宅麻伸さん(バイク編)
GQ JAPAN

みんなのコメント

2件
  • パガーニは、スーパーカーじゃないよ。
    あれは、ハイパーカー。
    一緒にしないでくれる?
  • 谷口さんの動画でみたけど、まあ日本にも買えるリッチ層はいるんだろうね。
    ただなんかオール電化なので、20年ぐらいしたら基盤が無くなりそうなんだよね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村