調律されたサウンド クイックなAT
アルピーヌA110に載るエンジンは、1.8L 4気筒ターボ。だが、ロータス・エミーラ・ターボSEと方向性は異なる。吸気音を鑑賞できるよう、レゾネーターが備わる。キャブレターが載ったツインカムユニットの響きへ寄せるべく、音質も調律されている。
【画像】伝統は強み?重荷? ロータス・エミーラ x アルピーヌA110 エヴァイヤとA290も 全153枚
スポーツ・モードを選ぶと、アクセルオフのオーバーランで破裂音。秋の実りを狙う鳥を驚かせる、空砲のように周囲を震わせる。少しやりすぎかもしれないが。
トランスミッションは、2台ともデュアルクラッチ。クラッチペダル付きMTの方が、没入感を深めると筆者は思う。仮に組めても、ターゲット層の大半は選ばないようだが。
エミーラ・ターボSEの8速は、クイックでマナーが良い。とはいえ、A110の7速の方が更にクイック。シフトパドルを弾いた時の反応も、充足感が高い。高速道路では回転数が高めのギア比ながら、普段使いを問題なくこなせ、燃費も悪くない。
2台とも優れる日常との親和性
この比較試乗後に、A110を1週間ほどお借りしたが、日常との親和性はエミーラ・ターボSEへ劣らず優れていた。乗り心地は僅かにしなやかで、落ち着いている。高速巡航時のノイズも、同じくらい抑えられている。
サベルト社製バケットシートは背もたれが一体型でも、クッションには適度な張りがあり、座り心地は抜群。調整域は限られるものの、自分の身体にはピッタリだった。タッチセンサーに頼らない、車載機能の操作系も扱いやすい。
ただし実用性は、両車とも高くはないだろう。ボディ後方の荷室は、エミーラが151LでA110は95Lと限定的。前者にはシートの後方に荷物を置ける空間があり、後者にはフロントにも収納があるけれど。
上級感をより醸し出すエミーラ
インテリアの高級感では、エミーラの方が確かに高い。レザーとアルカンターラで満たされ、ボルボ由来のコラムレバーも調和している。タッチモニターのソフトは機能が選りすぐられ、ちゃんとスポーツカーらしくデザインされている。
A110では、化粧パネルのカーボンはフェイクで、ドアの内張りも一部はプラスティックそのまま。タッチモニターの操作感には、社外品のような雰囲気が残る。
少量生産メーカーのモデルだから、どちらも運転支援システムの標準化に対する規制は緩やか。それでも、アダプティブ・クルーズコントロールが備わり、長距離移動時は便利なことは間違いない。
スポーツカーとして、上級感をより醸し出すのはエミーラ・ターボSEで間違いないだろう。そのぶん、お値段も数万ポンド(数100万円)違う。オプションを幾つか選ぶと、10万ポンド(約1980万円)へ迫ってしまう。
最後まで比類ないピュアスポーツ
毎日でも運転したい、満たされるスポーツカーという尺度なら。筆者は、軽快さで勝るA110を選ぶだろう。一緒に試乗した、同僚のマット・プライヤーも同じようだ。より手軽に、より身近に、楽しむことができるから。
エミーラも非常に魅力的だが、真価へ迫るには、より真剣に向き合う必要がある。ジュニア・スーパーカーらしい。こんなスタンスがお望みなら、きっと充足度は高い。
エンターテインメント性の濃いドライバーズカーとして、懐の深さではA110へ一日の長があると思う。ボディは美しく、シャシーは完璧。加えて、お値段もお手頃だ。2026年に製造終了を迎える最後まで、比類ないピュアスポーツであり続けるはず。
4気筒ミドシップ・スポーツ 2台のスペック
ロータス・エミーラ・ターボSE(英国仕様)
価格:8万9500ポンド(約1772万円)
全長:4412mm
全幅:1895mm
全高:1225mm
最高速度:291km/h
0-100km/h加速:4.0秒
燃費:10.9km/L
CO2排出量:208g/km
車両重量:1446kg
パワートレイン:直列4気筒1991cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:405ps/6500rpm
最大トルク:48.8kg-m/4500-5500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
アルピーヌA110(英国仕様)
価格:5万5160ポンド(約1092万円)
全長:4205mm
全幅:1800mm
全高:1250mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:15.2km/L
CO2排出量:150g/km
車両重量:1102kg
パワートレイン:直列4気筒1798cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:251ps/6000rpm
最大トルク:32.5kg-m/2000-5000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
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