意外にも、NT1100Pのボリューム・サイズはCB1300Pと同等だった
今回は、現在新たに白バイとして配備され始めているホンダNT1100Pについて、元白バイ隊員の目線で解説したいと思います。以前から登場が噂されており、遂に正式に白バイとして採用されたNT1100Pですが、街中でも少しずつ見かけるようになりました。今まではホンダCB1300Pが白バイの主流でしたが、今後はNT1100Pにシフトしていくのでしょう。
【画像8点】新型配備中の白バイNT1100Pの各部を、元白バイ隊員の解説とともにじっくりチェック!
ちなみにCB1300は並列4気筒1284ccエンジン搭載で重量は約270kg超(※市販のスーパーボルドールの場合)、NT1100は並列2気筒1082ccエンジンで249kg(※国内市販のDCT仕様の場合)。NTの新型白バイ仕様は排気量少し小さくなって気筒数も少なくなったので、重量も少し軽い車体になっているだろうと想像していました。
私が初めて実物のNT1100Pを間近で見たのは、大阪モーターサイクルショー2025での大阪府警の出展ブースでした。NT1100Pが全国の警察で採用される情報は出回っていたものの、会場には実際に導入されたモデルが展示され、屋外イベントでは白バイ隊員がデモンストレーション走行を行うなど、実際に走行する姿に多くの注目が集まっていました。
また、展示場では実際にまたがることも出来ました。触れてみた感想は、無線機やサイドボックスなどの装備によってNT1100の市販モデルより大きく感じられて、車体のボリュームはCB1300Pとあまり変わらない印象でした。
NT1100Pの変速ミッションが、DCTでなくマニュアル仕様である理由
NT1100Pの最大の特徴は、なんと言っても日本の市販されるNT1100では存在しないマニュアルミッション仕様だったことではないでしょうか。海外仕様ではマニュアル仕様があるものの、日本向けの市販型NT1100はDCT仕様のみなのです。
大阪モーターサイクルショーで展示されていた実際の車両を見てみると、左側のレバーの付け根からクラッチワイヤーが出ており、一目でマニュアルミッション車であることがわかります。そして、CB1300Pは油圧式のクラッチだったので、NT1100Pのワイヤークラッチの操作性がどんなものか気になるところです。
ところで、なぜNT1100Pはマニュアルミッション仕様になったのか? 理由は様々あるでしょうが、現在市販されているオートマチックミッションのバイクでは、白バイ隊員の運転や通常の活動に不向きだからだと考えられます。特に細かいターンや急加速、低速走行時のバランス保持など、オートマミッションよりマニュアルミッションの方が行い易いという点があります。
白バイ隊員のお家芸とも言える小道路旋回(Uターン)は白バイの活動をする上で必要不可欠であり、全国白バイ安全運転競技大会の種目でも小道路旋回は見所の一つとなっています。この小道路旋回(Uターン)が、オートマミッションだとかなり難しいのです。実際に私もオートマミッションのバイクでUターンなどに挑戦したことがありますが、かなり苦戦しました。
オートマミッションだからといって全くUターンが出来ない訳ではありませんが、マニュアルミッションのようには操ることは出来ませんでした。特にダイレクトに駆動力を得られない、自らの意思で駆動力を断って任意にバイクを倒し込めないという感覚に苦戦しました。
また全国白バイ安全運転競技大会の場合、そのほとんどが1速固定での走行となります(選手によっては2速固定だったりシフトチェンジする人もいますが……)ので、オートマ機構だと都合が悪かったり、低速競技だと任意にクラッチが切れないことでバランスを取ることが相当困難なものとなります。
さらに白バイの取締り活動には、停止状態からの急発進が付きものです。Uターンと同様、急発進に関しても任意かつ瞬発的に駆動力を得られるマニュアルミッションの方が都合が良いのです。以上のことから、今回白バイに採用されたNT1100Pにはマニュアルミッションが採用されたのだと思います。
仕事目線での注目は、車体左後部の黒いボックス
元白バイ隊員である私が実際にNT1100Pを見て驚いた箇所は、測定速度の印字部の位置でした。過去に乗ったことのあるホンダVFR800PやCB1300Pでは、印字部は車両前部のハンドル部付近に装着されていました。
しかし、NT1100Pではハンドル付近に印字部が見当たらないので、車両後部のカウル付近に装備されている黒いボックスが、速度測定後にレシート紙を印字するためのプリンターだと思われます。
最初に見た時は違和感を覚えましたが、書類を作成する隊員目線からすれば、かなり便利な位置になったと言えます。というのも、白バイ隊員が使用する反則切符等の書類は、車両後部にある左側のサイドボックスに収められているからです。書類の収まるサイドボックスから印字部が近いということは、書類を作成する上で作業効率が大幅にアップするのです。
速度超過の取締りの際、印字部からレシート紙を出して書類を作成するのですが、バイクの車両前部に体を移動させてレシート紙を取ったりするのがCB1300Pでは面倒でした。車体後部からハンドル側へ体を移動させるくらいは大したことじゃないと思うでしょうが、意外とこれが面倒だったりするのです。
ハンドル周りのゴチャゴチャしている場所に手を伸ばして、印字部のフタを開けたり印字ボタンを押す動作などが、反則切符の作成時にけっこう大きな負担となります。特に風の強い日などは書類の飛散に注意しなければなりませんし、相手の運転手さんの待ち時間を少しでも短くするために早く書類を作成しなければならないからです。
そうしたわけで、NT1100Pは書類作成のロス時間を減らせる作りとなっています。設置スペースの制約で車両後部に移設された可能性も高い印字部ですが、白バイ隊員としては画期的な位置への移動となったはずです。
ここまで、新型白バイであるNT1100Pについて私が感じた点を解説してきましたが、実物を見てとても格好良いと思いました。今までNT1100に関心がなかったけれども、新型白バイに採用されたことで興味が湧いたという方もいるのではないでしょうか(私もそのひとりです)。そして、NT1100が欲しいけれど、やはりマニュアルミッションがいいという方も案外いるのではないでしょうか?
今回、白バイに採用されたことでNT1100が息の長いモデルとなる可能性が大きいです。今後、日本で販売されるNT1100のラインナップにマニュアルミッション車が追加されることを、個人的にも期待してしまいます。
文●睦良田 俊彦 写真●モーターサイクリスト編集部/睦良田 俊彦
■著者プロフィール
睦良田 俊彦(むらた・としひこ)1986年北海道生まれ
趣味:クルマ、バイク
歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。
警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。
県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuber「臨時駐車場チャンネル」として活動。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。
著者プロフィール
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みんなのコメント
過去に国費配備となった大型白バイはYAMAHA FJR1300P、スズキGSF1200Pなどがありますが、都心部以外では配備されていなかったと思われます。
機種、規模、生産供給、保守体制などでホンダ以外が常時入札に応じるのは難しいのではないかと思われます。