アーティストのYOSHIROTTENが今一番気になる相手と大好きな蕎麦屋で対談するという連載。2回目の対談相手は、小説家の小川哲だ。
国内外でグラフィック、映像、インスタレーションと幅広く活躍をするアーティスト・YOSHIROTTEN。謎に包まれた彼が唯一オフになれる場所だというのが蕎麦屋だ。そんな蕎麦好きの彼の蕎麦屋リストから今宵はどこに向かうのか。第2回は、小説家・小川哲さんを迎えて目黒区にある「武蔵野」で実食。
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YOSHIROTTEN(以下、Y) 今年1月に下北沢「CANDLE CAFE &Laboratory Δll」の20周年企画として2人展「NIGHTPUZZLE」を行って以来ですね。
小川(以下、O) お久しぶりです。
Y あの展示で初めましてでしたよね。オーナーの井上さんにご紹介いただいて。学生時代にバイトしてたんですよね?
O そうですね。大学生の頃に働いてました。その後もお店にちょくちょく行ってて。
Y 小説家、ミュージシャン、アーティストなど色々集まる不思議な場所だなと思います。あと暗すぎるっていう(笑)。最初の打ち合わせで僕が絵を渡して、小川さんに文字を書いてもらうというB2Bみたいに進めようと決めましたよね。
O 誰かと一緒に作るのは初めてでしたが、改めて文章の表現の面白さと制限について感じた経験になりました。文章って表現として一次元のものじゃないですか。ここにある情景を描くとしても、順序立てて書くことで読者が理解できるもの。よしろーさんの表現の場合、情景を空間や目あるいは耳など立体的かつ同時に感じさせられますよね。なので展示作品では、文章が順番ではなく、一つのグラフィックとしてあることで文章のルールを逸脱できた新鮮な体験になりました。
Y 僕の場合は、文字を入れることで観た人の想像がもっと膨らむ作品にしたいなと思ってました。説明的な文章というよりも、ストーリーの断片を切り出したような一文を書いていただきましたよね。装丁は、いつもどうしてるんですか?
O 編集者にお任せですね。自分が責任持てるのは、本の中身の文章なので。装丁は自分の好みではなく、本を読む人が手に取りやすいものを優先したいと思ってます。だから、つまらなかったという感想は僕の責任だけど、売れなかった場合は編集者のせいにしてます(笑)。
Y あ、板わさが来ました。
O そういえば、この蕎麦屋は何がきっかけで知ったんですか?
Y 蕎麦屋の近くにある「ギャラリー月極」の立ち上げに関わった時に来たのが初めてでした。誰もいなさそうな時間に来て無音の中ひとり納豆蕎麦を食べるのが好きです。小川さんは、あまり普段外に出ないと前におっしゃってましたが、仕事は家でやることが多いんですか?
O 自分の部屋を一番居心地のいい場所にしたいので、仕事は近所にあるチェーンのカフェやファミレスなどでやるようにしてます。そこでは、僕の存在が認識されないことが大事。たとえばオーダー前に店員さんから「アイスコーヒーですね」と言われたら、もう行かないようにしていて。社会の中でなんでもないという存在として作業できる場で書いています。よしろーさんは、いくつも同時進行でプロジェクトをやってると思うのですが、どう切り替えてますか?
Y 昔は最大24件同時進行してたこともありますが、最近はMAXでも4~5件程度にしてます。量というよりも自分の作品を観た人が喜んでくれることがモチベーションですね。でも、純粋に作りたいものはずっと絶えずにたくさんあります。小川さんは、どうされてるんですか?小説の場合、時間がいくつも動くから1個の作品から出て別に入るのは難しそうですよね。
O できるだけ1個に集中していきたいんですけど、そうも言ってられないので出てきたアイデアをどれに仕分けるかと考えてます。よしろーさんの作品を見た時に、自然など現実世界をベースに調和するようにSF的な世界が広がっているように感じて。小説家の場合は、本の中で僕らが生きてる現実とそういう世界を書き分けることが多いので、よしろーさんの作品のように融合できるのは、ある意味羨ましいですね。
Y SFを書く時のモチベーションは、どこにありますか?僕は、自分が見たことのないものを見たいというのもあるのですが、そういったものを作るのが純粋に楽しくて。
O 作品を通じて、自分なりにわからないもの、他者について考えている時が楽しいですね。たとえそれが宇宙人だとしても、究極のところ他者をどう解釈したり、受け入れるかということに繋がると思っていて。僕たちの日常でも相手がどう考えているかわからないことだって、たくさんありますよね。
Y アイデア探しは、リサーチしながら書くのでしょうか?
O あんまり調べると、基礎を知らない読者の視点がわからなくなってしまうので、『君のクイズ』(注釈)では僕なりに面白いクイズ番組ってなんだろうと考えていきました。そういうふうに読者のことも考えつつ、でも最終的に作品の面白さを決める物差しは、自分自身にあると思っていて。10年前と10年後の自分がいいと思えるかどうかを基準に考えてます。
Y 過去と未来の自分が基準とは面白いですね。
O やっぱり20歳の時の自分は大人が嫌いで厳しかったから、そんな自分でも好きになれるかと考えることはありますね。今は、大人の事情も理解した上で決めることもあったりするので。
(注釈)2022年に発行された小川哲によるクイズ小説。第76回日本推理作家協会賞受賞作。
今月のゲストと蕎麦屋SATOSHI OGAWA1986 年生まれ、千葉県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。2015年、「ユートロニカのこちら側」でデビュー。代表作に『ゲームの王国』(17 年)、『君のクイズ』(22年)。
武蔵野(むさしの)昭和28年創業の老舗の手打ち蕎麦屋。2代目の店主が生み出した、つなぎを少量しか使わない特徴的な製法で蕎麦を打っている。現在は次女が後を継ぎ3代目として蕎麦打ち台に立っている。東京都目黒区中町1-40-6 営業時間:11:30~19:00 (夕方蕎麦がなくなり次第終了)休日:水・木
YOSHIROTTEN(ヨシロットン)ファインアートと商業美術、デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、複数の領域を往来するアーティスト、アートディレクター。鹿児島県霧島アートの森でヨシロットン展「FUTURE NATURE II in Kagoshima」が11月24日まで開催中。
PHOTOGRAPHS BY KODAI IKEMITSU
WORDS BY YOSHIKO KURATA
EDITED BY KEITA TAKADA(GQ)
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