「自転車の絵を描いてみて」と言われたとき、どのように描き進めるでしょうか? 好みのフレームの形、タイヤをふたつ、ペダルにハンドル、サドルを描けばある程度自転車の形が見えてくると思います。そうやって完成した絵を見せたとき、意地悪な人は「チェーンがないから進まないよ」と野暮なツッコミを入れてくるかもしれません。でも、気にしないでください。世の中にはチェーンやベルトを使わない「シャフトドライブ」という駆動方式を採用した自転車もあるのです。
「シャフトドライブ」をざっくり説明すると、ペダルが取り付けられたクランクの中心から後輪の中心(ハブ芯)まで、一直線に鉄の棒やパイプ(シャフト)で繋がっている形状になっていて、クランクの歯車と後輪の歯車にシャフトの両端に取り付けられた歯車を噛み合わせることで駆動させる仕組みです。イメージとして「ミニ四駆」の、後輪の回転を歯車を使って前輪に伝える仕組みを思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれません。
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「シャフトドライブ」は、チェーンのような長さは必要なく、またクランクの歯車の動きで後輪の歯車を引っ張る動きが必要ないので、ペダルを踏み込む力をロス無くダイレクトに伝えることができると言われています。
また、チェーンのようにむき出しになる事がなく、フレームに内蔵することができるので、スカートやズボンの裾の巻き込みを心配する必要もありません。さらにカチャカチャ音もかなり軽減されるというメリットもあり、自転車の見た目はかなりスッキリしたものになります。
構造的にもかなり頑丈なため、長期にわたって使い続けることができるというメリットもあります。雨などに濡れてサビてしまったり、経年劣化で伸びてしまうチェーンは定期的なメンテナンスが必要になりますが、「シャフトドライブ」に使われている部品は、基本的にフレームやカバーなどに覆われた内装式になっているので、雨だけでなく日光などの外的要因による劣化が軽減され、ほぼメンテナンスフリーで乗り続けることができます。
良いことづくめに思える「シャフトドライブ」ですが、残念ながら巷では滅多に見かけないマイナーな存在になっています。その理由として、頑丈であるがゆえに「重い」というデメリットが挙げられます。
また構造も複雑なため、故障した場合の修理は簡単とは言えません。自転車屋でも慣れた人でなければかなり苦戦することでしょう。
そして何よりも「値段が高い」という点が普及を妨げているかもしれません。「シャフトドライブ」はかなり優秀な機構ですが、「手軽さ」と「安価」という性質が求められる日常使いの自転車には不向きなのかもしれません……。
そんな「シャフトドライブ」の自転車ですが、近年再注目の動きもあります。そのきっかけと言えるのが、クラウドファンディングサイト『Makuake』で、応援購入総額6億円突破という実績も話題となった、完全内装式の「シャフトドライブ」を採用した折り畳み式電動アシスト自転車「HONBIKE(ホンバイク)」の出現です。
ぱっと見では自転車とは思えないような、先進的で未来感を漂わせるデザインは「シャフトドライブ」ならでは。たとえ高価でもデザイン性を追求する、次世代のe-Bike(電動アシスト自転車)の世界に「シャフトドライブ」の生きる道があるのかもしれません。
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機能的には優れていてもそれだけじゃ広まらない