街中で見かけるバスは誰しもが利用したことがあるだろうが、運転するとなるととてもハードルが高い乗り物だ。大型免許に加えて、二種免許が必要になるからだ。そんなバスを取材して運転する機会が得られた。場所はズバリ教習所で、ここならば教官と一緒に体験が可能なのだ。今回は伊藤梓さんにレポートをお願いした!
文/伊藤梓、写真/バスマガジン編集部
体験したらめちゃくちゃ楽しい!! 教習所でバスの運転に挑戦したぞ!
■運転前に深視力検査を体験
大型免許の取得には必須となる「深視力検査」。箱型の装置を覗くと縦向きの線が3本並んでおり、真ん中に位置する線が前後に動く
「大きい働くクルマを運転してみたい!」それは、クルマ好きなら誰もが一度は叶えたい夢だと思います。もちろん、普段は乗用車のライターをやっている私もその類に漏れません!
なんと今回、平和橋自動車教習所で行われる「バス会社合同説明会&バス運転体験会」に特別に参加させていただけることになりました。普段は様々な乗用車には乗っていますが、路線バスを運転するのは初めてです。
その現場とは東京都に拠点を置くバス会社が出展しており、バス運転手を目指す人、バス会社に就職を希望する人たちが各バス会社の人事担当と直接話し、さらに試乗までできるというイベントです。
体験会の意図もバス運転手の仕事をより身近に感じてもらうことが目的とのこと。それができるのは、この平和島自動車教習所が都内で唯一、全ての種類の運転免許を取得することができる教習所だということも大きいそうです。
バスを運転する前にまず「深視力検査」を体験。深視力検査とは、大型免許を取得する時には必ず行うもので、遠近感や立体感、奥行きがきちんと確認できるかどうかを検査します。バスやトラックという、大きいものを動かすことになるので、車両前後端の距離感が掴めていないと危険だというわけですね。
眼科にありそうな箱型の装置を覗くと、中には3本の線が。「真ん中の線が前後に動いているので、横の線と同じ位置に来たらボタンを押してください」とスタッフさん。
最初は真ん中の線が動いているかどうかも分からなかったのですが、徐々にその線が前後に動いているのが分かるようになってきました。自分のタイミングでボタンを押してみると、スタッフさんが「はい、大丈夫ですね」と言ってくれて一安心。なかなかこの検査に合格できないという人もいるそうです。
■いよいよ大型路線バスに試乗!!
正しい運転姿勢をとる伊藤梓さん。助手席に座るのは試乗の教官を務めてくださった平和橋自動車教習所の千葉尚祐氏
深視力検査も合格ということで、いよいよ、路線バスの試乗へ!教習車は、乗員定員40人のいすゞ エルガ。実際に目の当たりにすると、「こんなに大きなクルマを運転できるの?!」と緊張。
運転席に乗り込んでみると、目の前にはそそり立つ壁のようなフロントガラスがありました。乗用車と違って、クルマのフロント部分にほとんど物がないので、目前に大きなフロントガラスがあるだけで新鮮です。
運転席は乗用車とは違って凹凸の少ない平らな形状をしていますが、シートポジションはきちんと合わせることができます。先生にはきちんと高さを合わせないと周囲の安全が確認しづらいと教わったので、高さもしっかり調整。
それではいよいよ発進です! バスは基本的に2速発進ということで、クラッチを切ってギアを2速に入れるとプシュという音がしました。
バスのマニュアルシフトは、指で操作できるフィンガーシフトと呼ばれていて、シフトレバーと変速機は電気的に繋がっています。圧縮空気で変速されるので、この「プシュ」という音が鳴り終わる前にシフトレバーから手を離すとニュートラルに戻ってしまうので、ワンテンポ待ってから手を放す動作が必要です。
大型バスは内輪差が大きく曲がるのも大変だ。内側は縁石を踏まないように注意しながら外側もラインの内側を保つ必要がある
最初は、バスが重いので「エンストしないかな……」と不安でしたが、「低速トルクがあるから大丈夫!」と言われて、おそるおそる発進。クラッチを繋いでいくと、クルマがググッと動き出す感覚があって、ホッと一息。
アクセルを煽って回転数を合わせなくても、アイドリング回転で発進できるので、低速トルクが小さいスポーツカーよりも発進は簡単だと感じました。ギアチェンジも「プシュ」の音をしっかり聞いて慌てずに操作すれば、問題なく運転できます。
それよりもさらに乗用車と違うのが、コーナーを曲がる時! まず、ハンドルは、径がとても大きく、寝かせて取り付けられています。昔はパワーステアリングがなく、切る時に相当な力が必要だったそうで、それをなるべく軽い力で操作しやすくするために径が大きくなったのだそう。
大きいハンドルをぐるぐる回していると「まさに働くクルマを運転してる感覚だ!」とワクワクしてきます。ただ、毎コーナー「切り始めるのが早いです」と言われてしまう始末……。運転席がフロントオーバーハングの前にあるので、乗用車でいえばボンネットの先っちょに腰掛けてるイメージで運転しなければいけません。
ボディも全長が1078cmと超ロングボディで内輪差が大きいので、気をつけてもついイン側の白線を踏んでしまいます……。これは最後まで習得するのが難しい部分でした。
■難関のS字コーナーを抜け バス停の停車にチャレンジ
難関のS字コーナーをクリアする。運転席から見ると外側のポールがプレッシャーとなるが、実際は手前にパイロンがあるため距離は保たれている
特別にS字コーナーも走らせていただきましたが、前に置いてあるパイロンのギリギリまで頭を突っ込んでいかないと、また内輪差で内側の縁石に乗り上げてしまうので、完全に一から十まで先生の言うとおりハンドルを切って、進んで、切って、進んで……で、なんとかなりました!
こういった狭い道をクリアする時には、ハンドル操作だけではなく、クラッチを上手く繋いで低速でも急発進しないようにコントロールしなければいけないので、クラッチワークも重要とのこと。今回、ここだけは褒められました!普段からMT車を運転していて良かったです(笑)。
そして、もうひとつ、今回は路線バスの試乗ということで、バス停への停車にチャレンジ! 降車口の扉はバスの真ん中付近にあり、その部分をバス停の前に止めるのは、至難の業。運転席から振り返ってみても、降車口が見えにくいので、一体何を目標に停めれば……と不安に。
ここでまた先生にアドバイスをもらって、ミラーを確認してみました。バスにはミラーがたくさん付いていますが、バックミラーを見ると、座席の右後方にもうひとつ小さなミラーが写っていて、そのミラーからちょうど降り口の扉が見えるようになっているんです!それを確認しながらたどたどしく停車。なんとか合格点をいただきました!
バスには実に多くのミラーが装備されている。室内に複数あるだけでなく、車外にはサイドミラーに加えてバスの直前などを見るものがある
今回は教習所内をぐるぐる回っていただけですが、本来バスの運転手なら、市街地のさまざまな道を走って、乗客を乗せて、降ろして……運転以外にもやることがあると考えると本当にすごいなと感じました。その一方で、バスの運転はとても楽しかったです!
乗用車と違って難しい部分はありますが、大きな車体を動かしている感覚は日常では味わえない楽しさがあります。バスの運転手を志す人は、元々運転が好きでバスを運転してみたいという人が多いと聞きましたが、その気持ちがしみじみ分かりました。試乗を通して「私ももっとバスを運転したい!上手くなりたい!」と感じました。
さらに全国各地でもバス運転手の就職イベントが行われているそうです。例えば、間近に行われるイベントとしては「どらなびEXPO2023春」があり、関西では、5月27日に大阪・梅田ハービスホールで、東京では、6月10日に新宿エルタワー30階 サンスカイルームで開催されるそうです。「自分もバスの運転手に興味がある!」という人は、是非行ってみてくださいね!
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みんなのコメント
実体験しないと!
S字のみ!
辞めなさい!
A角・切替し・幅寄せやらせないと!