新型「ES」がボディサイズを大幅に拡大した背景とは
「上海モーターショー2025」の初日に、フルモデルチェンジを受けたレクサス新型「ES」が世界初公開されました。掲げられたメッセージは「The sedan begins,again.」。まずはその意味するところを、チーフエンジニアの千足浩平さんに聞きました。
【画像】「えっ!…」もう一度セダンを盛り上げたい! これが日本にも新風を吹き込みそうなレクサス新型「ES」です(30枚以上)
「なんとかもう一度、セダンを盛り上げたいという思いはすごく強いです。
セダンの魅力は、まずボディの形において“箱”が3つに分かれていること。しっかりと剛性を確保できますし、隔壁があるので静粛性も高まります。さらに、重心が低いのでサスペンションのチューニングもしやすく、乗り心地も操縦安定性も高い次元で両立させやすい。非常に合理的なパッケージだと思っています」
とはいえ、今の世の中の主流はクロスオーバーやSUV。世界的にセダン市場が縮小傾向なのは間違いありません。一体どこに可能性を見いだせばいいのでしょうか。
「私はセダン復権のチャンスはまだあると感じており、その勝機はやはり中国にあると思います。ここではセダンの市場がまだまだ強いですから。フォーマルであり、由緒正しい乗り物。クルマの基本形だという価値観が中国にはあるんです」(千足さん)
確かに「上海モーターショー2025」の出展車を見渡してみると、中国国内メーカーのラインナップには必ずといっていいほど4ドアセダンが用意されています。余裕あるサイズでクーペライクなフォルムをまとう。さらに、それらのほとんどがBEV(電気自動車)です。
新型「ES」も、やはり初めてのBEVとHEV(ハイブリッド車)を設定しています。中国市場を考えればBEVは当然の選択ですが、そこにHEVもしっかり残してきたところに、開発陣の世を見る目の確かさが表れているといっていいでしょう。
一方で、BEVを用意することには難しさも伴います。大容量の駆動用バッテリーを前後輪間の床下に搭載するBEVは必然的に全高が高くなり、ホイールベースも長くなりがちです。そのままつくれば、スタイリッシュなフォルムを描くことは不可能といって間違いありません。
そこで新型「ES」は、ボディサイズを大幅に拡大することにしました。現行モデルより110~115mm高い1555~1560mmの全高に合わせて、全長は165mm増の5140mmに、全幅は55mm増の1920mmに、それぞれ一気に大きくなっているのです。
「背が高くなる、高さが増すなら、長さも幅もいる……『ES』みたいな伸びやかさでご愛顧いただいているクルマではその比率は外せないだろう、ということで、ボディサイズを拡大しました。これだけの寸法がないとできるといえない、レクサスにはならないよ、といったんです。かなり無理をいいました(笑)」
そう振り返るのは、プロジェクトチーフデザイナーの熊井弥彦さん。実際、フラッグシップの「LS」にも匹敵するほどのサイズなのですから、実現は簡単ではなかったのでは? と想像します。
とはいえ今回、大きく変化している市場環境に合わせて、HEVだけでなくBEVも用意するマルチパスウェイ対応とすれば、背が高くなるのは必至。特に中国市場で戦えるクルマにすることが絶対条件ということで、サイズの縛りもゆるくなったということでしょう。
「皆に『カッコいいクルマをつくるんだ』という意識がありましたし、万一、議論になったときも、千足チーフエンジニア割と矢面に立ってくれたんです(笑)」(熊井さん)
実はそれでも、当初、全幅は1880mmで進められ、実際にその数値でデザインモデルもつくられたそうです。「もっとワイドにしたいけれど、特に日本市場のことを考えると全幅1900mmを超えるのは大英断となる」ということで。
「ですが、当時、レクサスのプレジデントだった現トヨタ自動車社長の佐藤恒治から、『本当にこのまま行くの? 本当に?』といわれまして……」(熊井さん)
大胆なデザイン、そしてそれを可能にしたサイズ拡大は、そんな風に皆の思いから導かれたというわけです。普段はなかなかうかがい知ることができない開発の裏側、興味深いものがありますよね。
ちなみに、車体の基本骨格=プラットフォームは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の“GA-K”とされていて、床下にバッテリーを積むこともあり、実質的にはやはり背の高いトヨタ「クラウン・クロスオーバー」のそれに近いのだそうです。
よって、リフトアップセダンをつくるならば、それほど苦労はなかったはずですが、新型「ES」は正統派セダンであることにこだわったというわけです。
時代の変化をレクサスの価値観にいかに取り込むか?
一方、中国市場の話ばかりが出てくると、そちらばかりを向いてつくられたクルマかと思われるかもしれません。
ですが、実際のつくり手の真意としては、見据えているのはもっと先のようです。千足さんは強調します。
「中国市場で実際に起きていることはとても大事で、それをしっかり把握していなければならないと思います。それを、私たちレクサスが大切にしてきた価値観の中に、どう取り込んでいくかだと思うんです。
何がなんでも(中国でウケるような)新しいものを、というのではなく、これはグローバルのお客さまを豊かな気持ちにさせるよね、というものを、いち早く取り込んでいくことが大切だと思っています」
一例が、インテリアに採用された“レスポンシブ・ヒドゥン・スイッチ”です。普段はトリムに隠れているスイッチが、手を伸ばすと点灯してその存在を主張。しかも、ちゃんと押し下げ感のある物理スイッチとなった機構です。そのポイントを熊井さんは次のように説明します。
「スイッチ類を全部ディスプレイの中に収めてしまって、インテリアがシンプルでモダンになったな、と思わせた時期がありました。けれど結局、いざというときにサッと触れられない、探せないということで、ここへ来て物理スイッチへの回帰が起きています。
そんな中で考えたのが、物理スイッチが必要なところはしっかり残して、普段はいらないけれど必要なときには出てくるというこの機構でした。すぐに派手な話に飛びつくのではなく、どうやればレクサスとしての表現になるのか?……これを常に考えています」
中国市場で起きていることを察知し、認識し、意識しながら開発はするものの、単にその流れに乗るのではなく、その要素をいかにレクサスらしく表現するか? そして、グローバルのユーザーにも受け入れられる、喜んでもらえるものとして具現化するか?……意識にあるのは、そういうことのようです。
大胆といえるほどの変化を遂げた新しいレクサス「ES」。メインターゲットとして見据えているのは、どんな層なのでしょうか?
「これだけクルマが大きくなっても『ES』という名前を残した、ネーミングにこだわった理由は、そのポジションやターゲットユーザーを失いたくなかったからです。
平日はビジネスでお客さまを乗せることが多く、けれど普段はファミリーで使っている、という位置づけが『ES』だと私は思っていて、その立ち位置は変えていません」
千足さんのこの言葉だけだと、今までどおりでいいとも聞こえますが、実際のところ「ES」のユーザー、特に北米や日本では、だいぶ年齢層が高くなってきているのも事実。新型の大胆な変身のねらいは、それを元々意図していた辺り、いうなれば人生で最も脂が乗った時期のエネルギッシュな世代にまで引き下げたい、ということでしょう。
「ものすごくクルマが好きというよりは、ライフスタイルが洗練されていて、身の回りのものにすごくこだわっているような方、でしょうか。この世代の方々って、グローバルで価値観が非常に近いんじゃないかと思うんです」
実際に見据えているのは、40~50代の、仕事も家庭も今まさにノリにノッた人たち、といったところでしょう。
彼らにとってきっと今までの「ES」は、ちょっと落ち着き過ぎた印象で、スコープに入ってこないクルマだったのでは? 新しいレクサス「ES」は、日本でも市場に新しい風を吹き込んでくれそうな気がします。
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