12シーズン目を迎えたEVレースの最高峰
あらためてフォーミュラEとは、国際自動車連盟(FIA)が管轄する世界初の電気自動車(EV)レースの世界選手権。内燃エンジンを使ったフォーミュラカーレースの最高峰がF1であるのに対して、EVのレーシングカーの最高峰がこのフォーミュラEだ。通算150レースという節目を迎え、創設以来カーボン・ネットゼロを達成しているサステイナブルなモータースポーツの可能性を世界に発信し続けている。
特徴としては、排気ガスやエンジン音がないため、原則的に世界各国の主要都市の公道を使った特設サーキットでレースを行う。またさまざまなメーカーが新規参入しやすくするため、マシンはシャシーやバッテリーなどの主要部品を共通化したワンメイク仕様となっている。
ただしすべてが共通というわけではなく、パワートレイン(モーター、インバーター、ギアボックスなど)やソフトウェアなどはチームごとに独自開発が行われており、エネルギーマネジメントが勝敗を大きく左右する。マシンの性能差が少ないだけに、過去11シーズンで10人の異なるチャンピオンが誕生しており、毎レース誰が勝ってもおかしくないという展開の面白さがこのシリーズの魅力だ。
他のモータースポーツイベントとの日程の重複などを考慮し、毎年12月ころに新シーズンが開幕し、翌年の7,8月に閉幕するといった年をまたぐスケジュールが組まれており、今回で12シーズン目を迎えている。
2025/26シーズンは新たに、マドリード(スペイン)、三亜(中国)、マイアミ(アメリカ)を加え、シリーズ史上最多の世界11都市を舞台に全17戦で争われている。自動車メーカーとして参戦しているのは、日産自動車、ポルシェ、シトロエン、DS、ジャガー、クプラ、マヒンドラなど。それ以外にも日本のヤマハが名門レーシングカーコンストラクターのローラと組んで参戦中。その他アンドレッティやエンヴィジョンレーシングといったプライベーターもあわせて10チーム、20名のドライバーで争われている。
12年の歳月を重ねマシンは第3世代へと進化を遂げており、現行型のマシンは改良型の「GEN3 Evo」。0-60mph(約97km/h)加速は1.82秒で、加速性能では現行のF1マシンを約30%も上回るものだ。ちなみにGEN3は今シーズンで役目を終え、来シーズンからはマシンが第4世代のGEN4となることが決まっている。
ナイター照明には植物由来の燃料を使用
今年も前回と同様に江東区有明にある東京ビッグサイトを中心につくられた全長2582キロメートル、18のコーナーからなる市街地コースを舞台に、初のナイトレースが行われた。
ナイトレースといえば、近年はF1でもシンガポールを皮切りに、バーレンやサウジアラビア、ラスベガスなどの市街地コースで行われている。フォーミュラEでもこれまでサウジアラビアで開催された実績がある。
ではなぜ、東京がナイトレースになったのか。その理由のひとつが日本の猛暑対策。いまや日本の夏の風物詩、高校野球ですらナイター試合を取り入れたくらいだから、観戦スタンドに日除けのない公道レースでは必要な措置といえるだろう。
一方でフォーミュラEのメインマーケットである欧州でのテレビ放送時間にあわせて、といったビジネス的な側面もある。東京での決勝スタートは夜8時だが、イギリス・ロンドンはお昼時でランチしながら観戦するにはちょうどいい時間帯にあたる。
ただし、そもそもサステイナブルであることがウリのフォーミュラEにおいて、わざわざ夜間照明をたいてレースをするのはいかがなものかというツッコミも入りそうなものだ。公道レースのため施設の電源などにすべてを頼るわけにはいかず、商用電力を利用できない場所ではいわゆる発発(発動発電機)を使うことになる。実際に初年度の東京大会では、コース裏などに置かれたディーゼル燃料の発発が稼働しているのを多く見かけた。
ところが昨年からは、従来のディーゼル燃料の代替となる植物由来燃料であるHVO(Hydrotreated Vegetable Oil=⽔素化脱揮発性植物油)によって発電されており、ディーゼル燃料と比べて21.3トンのCO₂排出削減を達成。今年はさらにこれの活用を広げ、消費電力の少ないLED照明を使ってのライトアップ設備をはじめ、会場外周エリアへの電力供給、車両充電や大会運営機材への給電を含むナイトレースを実現したというわけだ。
F1にも迫る速さに! 来シーズンはGEN4が東京にやってくる
レース結果は、土曜日の第14戦はCUPRA KIROのダン・ティクタム選手が最終ラップでトップを追い抜き劇的勝利。日曜日の第15戦は雨に見舞われフリープラクティスが中止になるなど波乱の展開に。決勝レースは路面がウェットからドライになったことでタイヤチョイスが勝敗をわけた。MAHINDRA RACINGのニック・デ・フリース選手が勝利した。大混戦のドライバーズタイトルは、次の最終戦ロンドンの地で決する。8月15日・16日にダブルヘッダーを実施し、「GEN3 Evo」の時代を締めくくる。
そして次の2026/27シーズンからは、ついにマシンがフルタイム四輪駆動のシングルシーターレースカー「GEN4」となる。また同時にワンメイクタイヤのサプライヤーがハンコックから日本のブリヂストンになる。マシンは主要部品の20%以上に再生素材を使用。タイヤについても天然素材および再生素材を65%使用する。バッテリーは環境汚染につながるレアアース不使用品となる。
性能は最高速度が時速335km以上、0-100km/h加速が約1.8秒、0-200km/h加速4.4秒を記録。レースモードにおいては出力がGEN3 Evo比で50%アップし、予選モードでは1周あたり平均10秒のタイム短縮を実現。決勝レース中のアタックモードでは最大600kW(約815馬力)に到達し、F1に迫るラップタイムを刻むようになるはずだ。来シーズンは、7月末の開催予定の東京大会が最終戦としてスケジュールされており、GEN4のスピード、そしてチャンピオンシップの行方をライブで観戦することができる。
レース後、最寄り駅からゆりかもめ(東京臨海新交通臨海線)に乗車すると、乗り合わせた若い観客たちが「新橋で一杯飲んで帰ろうよ」と話しているのが聞こえてきた。サーキットだとこうはいかない、交通手段は主にクルマで渋滞は必至。けれども都市型レースゆえ電車で20数分後には新橋に到着である。レース観戦後に彼女とやる一杯も乙なものに違いない。
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