今のうちに乗っておきたい現代スポーツカー
運転する楽しさ、実用性、コストパフォーマンスなどさまざまな観点から特に優れたスポーツカーを10台紹介する。
【画像】日本が誇る2ドア・スポーツカー! 世界でも大ヒット【トヨタGR86とマツダ・ロードスター(欧州仕様)を写真で見る】 全43枚
インフレや規制により、スポーツカーを手軽に楽しむことが難しくなってきている。それでも市販スポーツカーの選択肢はまだ豊富で、バリエーションも豊かである。
ミドシップの2シーター、フロントエンジンのオープンカー、大排気量エンジンのマッスルカー、そしてライトウェイト・スポーツカーなど、自分の好みに応じた1台がどこかにあるはずだ。
今回は、スポーツカー好きの筆者(英国人)が「最高」と思える10台をピックアップし、それぞれの長所・短所、おすすめポイントをまとめた。日常的に使い倒せるものもあれば、サーキットで本領発揮するものもある。
この10台に共通するのは、新車で買えることと、比較的手頃な価格設定だ。やや高価なものもあるが、スーパーカー並の金額は必要ない。
1. アルピーヌA110
おすすめ:総合的な能力
長所:公道でもサーキットでも楽しめる、個性が炸裂
短所:インテリアは万人受けするものではない
アルピーヌA110は、ターボエンジンのキレのあるトルクから、没入感ある華麗なハンドリングまで、ドライビング・エクスペリエンスを構成するすべての要素が「楽しさ」につながっている。ライバルの知らない旅と道を教えてくれ、深くハマればハマるほど愛着が深まるダイナミクスを持っている。
ボディはアルミニウム、エンジンはミドマウント、前後サスペンションはダブルウィッシュボーンである。まるでスーパーカーのような装いだが、4気筒のA110では、これらの部品の総和以上のものを感じさせる仕上がりとなっているのだ。
2017年に登場したA110は、評論家からもオーナーからも熱狂的な歓迎を受けた。その後のA110 Sでは、最高出力が252psから300psへパワーアップし、サスペンションとブレーキが強化された。「レジェンドGT」といった特別仕様車も複数登場し、そして最上位モデルのA110 Rが追加された。
しかし、グリップやボディコントロールなど、繊細な魅力において標準のA110を超えるものはない。これほどまでにドライバーとの一体感を重視し、見事に昇華しているクルマは稀有な存在だ。
1マイル走るごとに骨抜きにされるようなクルマとして、いつもは辛口の弊誌記者陣も絶賛している。A110は、速くて、機敏で、エモーショナルで、楽しいクルマだ。拍手喝采に値する。
2. ポルシェ718ボクスター/718ケイマン
おすすめ:ハンドリングの繊細さ
長所:洗練されたダイナミクス、快適性の高さ
短所:比較的高価であること
2025年にバッテリーEVの新型車が導入されようとしているが、依然としてポルシェ718は市販ミドエンジン搭載スポーツカーの中で最も完成度の高いモデルである。小排気量の4気筒ターボガソリンエンジンを搭載するが、最上位のGTSにはフラット6を採用した。しかし、4気筒であれ6気筒であれ、優れたスポーツカーであることに疑いの余地はない。
2016年に導入された2.0Lおよび2.5Lのフラット4ターボは、残念ながら、サウンド、なめらかさ、レスポンスの鮮明さ、リニア感、動作範囲の狭さ、そしてポルシェらしいドライビングの魅力に欠けるとの指摘を集めた。その後、ポルシェは欧州排ガス規制に対応するためにエンジンをチューニングし、ボクスターTとケイマンTを追加したが、これもまた物議を醸した。
しかし、2019年に予想外の展開が見られた。自然吸気のフラット6が上位モデルのGTS、GT4、スパイダーに導入されたのだ。992型911の3.0Lユニットをベースに、ターボを外して排気量を4.0Lに拡大。ロングギアのマニュアル・トランスミッションはお世辞にも良いとは言えないが、2ペダルのPDKならおすすめできる。
ボクスターもケイマンも実用的でありながら、常に魅力的な走りを見せ、4気筒でも十分に速い。すべてを備えた718に打ち勝つには、一世一代の素晴らしいダイナミクスを持つクルマが必要だ。
3. アリエル・アトム4
おすすめ:スリル満点
長所:猛烈な速さ、流れるような走り
短所:実用的ではない
5万ポンド(約940万円)の予算を、自分自身を楽しませるためだけに使える人であれば、アリエル・アトム4を見過ごすことなんて出来ないはずだ。バイクとクルマの要素を併せ持つ乗り物であり、むき出しのチューブでできた珍しい品物でもある。
もちろん、実用に耐えるクルマではないことは明らかだ。しかし、ドライバーに高い能力を要求する一方で、一体感が強く、非常に個性的だ。英国人も大好きなライトウェイト・スポーツカーであるアトム4は、本質をついたクルマだ。フロントガラスはオプション装備で、未装着の場合は乗車時にヘルメット着用が必須となる。
最大の魅力は、圧倒的なスピードとスリルだ。ホンダ製の4気筒ターボエンジンから発生する355psのパワーで600kg弱のボディを動かす。心を揺さぶるのは加速性能だけではない。シャシー設定を調整しやすく、バンピーな一般道でも快適に走らせることができる。サーキットで暴れまわるだけの「脳筋」ではないということだ。
サーキットでアトム4に乗り、その性能を余すところなく引き出すことは、2024年のスポーツカーでは希少な体験だ。サーキットを出てからベルトを緩め、ダンパーの緊張を解き、ゆっくりと揺れながら帰路に着くと、他の四輪車では味わえないような、生きている実感を得ることができる。
4. トヨタGR86
おすすめ:手頃な価格設定
長所:お値段以上のハイパフォーマンス
短所:欧州では新車が手に入りにくい
完成度の高いGT86(日本名:86)を超えるクルマを作るにはどうすればいいだろう? 通常、後継車を開発するとき、パワーとグリップを少し追加し、内外装をリフレッシュするだけで、大抵は十分だ。
しかし、GR86にはそれ以上のものが備わっている。まず、シャシーとシェルをしっかり鍛え上げた上で、排気量2.5L、最高出力234psに強化された水平対向4気筒エンジンを搭載。サスペンションとステアリングにも細かい変更を加え、タイヤはミシュラン・プライマシーHPまたはパイロット・スポーツ4を履く。
従来のGT86に比べると、一般道ではやや扱いにくさがあるものの、美しくバランスの取れた後輪駆動のハンドリング・ダイナミクスは、サーキットではどんな速度でも活用できる。ただ、エンジンのパワーアップによって少し速くなったが、それほど大きな違いはない。
外観は以前よりスマートになり、インテリアも実用性を犠牲にすることなく、上品に仕上がった。何より、手頃な価格設定も魅力的である。
しかし、欧州では新しい安全規制により販売台数が限られており、手に入れるのが難しい。2025年以降に規制対応の新型が登場するという話もあるが、現時点では詳細不明だ。
5. マツダMX-5
おすすめ:コンバーチブル愛好家
長所:バランスの取れたハンドリング
短所:それほど速くはない
第4世代のマツダMX-5(日本名:ロードスター)は、あらゆる面で先代モデルを超えている。コンパクトで軽いボディ、優れたインテリアデザイン、威圧感のないシャープな外観。また、より速く、より質素で、生き生きとした魅力的な走りを見せてくれる。
発売以降、細かい改良が何度も行われており、エンジンの出力向上、ドライバーの運転姿勢の改善、シャシーの微調整、新グレードの追加などを実施。最新モデルは熟成に熟成を重ね、高い完成度を誇る。
どのモデルも後輪駆動らしい個性的な走りを実現しており、ドライバーとの一体感も深い。生き生きとした比類のないキャラクターは、30年前の初代モデルからまったく変わっていない。今回紹介する10台の中でこれほど「笑顔」が似合うクルマはない。
6. モーガン・スーパー3
おすすめ:クラシックカー愛好家
長所:ユニークで楽しい
短所:それをさらに遠くへ持って行くための莫大なコミットメント
2012年に発売された先代モデルの3ホイーラー(スリーホイーラー)は、モーガンにとって意外なヒット作であった。10年で約2500台が販売されたが、これはモーガンのような小規模メーカーにとっては、限りなくメガヒットに近い。
2022年に公開された新型車は、名称を「スーパー3」に改め、先代モデルのスピリットと魅力を引き継ぎながら、より汎用性の高い現代的なパッケージングにまとめられている。モーガンのさらなる成長拡大が期待される1台だ。
ユニークな三輪レイアウト(前二輪、後一輪)や、ひっくり返ったバスタブのような外観はそのままに、より強固なモノコック構造と洗練されたサスペンションを採用。パワートレインは、従来のハーレーダビッドソン製Vツインエンジンに代わり、フォードの直列3気筒ターボエンジンを搭載している。5速MTはマツダMX-5から拝借した。
最高出力は120psと控えめだが、車両重量わずか635kgと非常に軽い。細いタイヤでコーナリングに挑むとき、代えがたい喜びを与えてくれる。適度なグリップとバランスのとれたハンドリングにより、どんな速度域でも楽しく、一般道でも扱いさすい。
ただし、ルーフが無いため、長距離ドライブにはある程度の覚悟(と天候対策)が必要だ。4万ポンド(約750万円)という価格も安いとは言い難い。高性能のスポーツカーは他にもあるし、先代モデルの方が個性は強かった。しかし、普通の街中を走るだけでも喜びの瞬間に満ち溢れており、これほど心が高鳴るクルマはないだろう。
7. ケータハム・セブン
おすすめ:純粋なドライビング・エクスペリエンス
長所:カスタマイズの幅が広い
短所:長距離のお供には向かない
70年以上にわたって、あらゆる形態のセブン(ロータスとケータハム)が登場し、ピュアなドライビングの世界標準を築いてきた。生き生きとした走りにのみ集中するなら、静粛性や快適性を捨て、ユーロNCAPの衝突安全性評価も恐れない、この小さな英国製スポーツカーに勝るものはない。
現行シリーズで最も手頃なのはケータハム・セブン170で、最高出力85psのスズキ製660ccターボエンジンを搭載し、車重わずか440kgで0-97km/h加速7.0秒未満というパフォーマンスを見せてくれる。
上位モデルには、レトロな雰囲気のスーパーセブン600やスーパーセブン2000が用意されている。拡張されたフロントフェンダーと豊富なクロームトリムにより、外観こそクラシックだが、スーパーセブン2000は最高出力180psのフォード製デュラテック・エンジンを搭載している。
さらに上には、最高出力314ps、シーケンシャル・トランスミッション、フルロールケージ、サーキット対応スリックタイヤ、フルアジャスタブル・サスペンションなど、モータースポーツにふさわしいセブン620Rもある。
比較的安価なモデルはライブリアアクスルを使用しており、高価なド・ディオン搭載車のような洗練された乗り心地は見込めないが、細いタイヤとクイックなステアリングでコーナーをひらひらと舞い踊り、軽量車ならではのエンターテインメントを味わえる。
四輪車の中で最も無邪気で爽快な遊びかもしれない。
8. トヨタGRスープラ
おすすめ:快適性
長所:マニュアル・トランスミッションと力強い6気筒エンジン
短所:BMWらしさが敬遠されるかもしれない
2019年当時、トヨタGRスープラは非常に熱い期待が寄せられていた新型車だった。約20年にわたる欠番もついに終わり、伝説的なスポーツカーが帰ってきたのだ。しかし、BMWとの提携がなければ、復活は実現しなかっただろう。
GRスープラの中身、すなわちエンジン、プラットフォーム、トランスミッション、デフ、電気系統、そして操作系装置の多くが、明らかにBMW製である。
しかし、走りに関して言えば、GRスープラは独自のアイデンティティを確立することに成功している。サスペンション、ステアリング、デフはすべて独自に調整されている。トヨタはBMW Z4ではなく、ポルシェ718ケイマンを主要なライバルと見ているように思える。
手抜かりはない。GRスープラは多くの点で優れたスポーツカーである。ポルシェの純粋なハンドリングとバランス感覚には及ばないが、かなり接近している。乗り心地は驚くほどしなやかで、エンジンもなめらかで個性豊かなため、日常的に扱いやすいだろう。
4気筒のエントリーモデルも発売されている。小排気量エンジンの軽さの恩恵を受け、ハンドリングが光る。一方、筋肉質な直列6気筒モデルでは、近年珍しくなったマニュアル・トランスミッションも選べる。魅力的でオールドスクールなスター選手である。
9. フォード・マスタング
おすすめ:マッスルカー好き
長所:骨太なV8エンジン
短所:アメリカンサイズ
合理性で言えば、アウディTTかBMW 2シリーズ・クーペの方が賢明な選択肢かもしれない。しかし、スポーツカーにおいてそうした分別は二の次だ。2024年になっても、最高出力450psのV8エンジンを搭載したフォード・マスタングが新車で手に入るのだ。
2022年に登場した第7世代のマスタングは、これまで通りボディサイズが大きいので、街中でどこに停めるか、どんな道を走るのかを事前によく考えなければならない。また、5.0L V8搭載車では、ドイツ製スポーツカーよりも給油する機会が増える。2.3L 4気筒も用意されており、好みにもよるだろうが、やはり「V8」の魅力には抗いがたい。
多くのスポーツカーが見出しを飾る中で、これほど分かりやすくストレートなモデルも珍しい。気筒数の少ないエンジンにはない魅力があり、また後輪駆動のシャシーバランスも絶妙である。
10. モーガン・プラス・フォー
おすすめ:気楽にスポーツカーを楽しみたい人
長所:楽しさ、愛らしさ、古風な魅力
短所:安価ではない
6万3000ポンド(約1190万円)弱という価格は、決して安いものではない。だが、モーガン・プラス・フォーの所有体験は、718ボクスターやGRスープラとは比べ物にならない。
プラス・フォーは古き良き時代の魅力をまとった存在だ。デザインは非常にレトロだが、そのアルミニウム製ボディの下には、BMW製4気筒ターボエンジンとオールアルミ製モノコックシャシーが隠れている。ラダーフレーム構造を採用していない、モーガンの四輪車としては非常に新しいモデルである。
最高出力258psと強力だが、どちらかというと少しゆったりとした歩調が似合う。英国の夏の午後を楽しむには最適なクルマだ。豪快さも持ち合わせているが、スポーティなキャラクターは薄い。
布製のルーフとハーフドアのせいで高速道路ではうるさいし、乗り心地もハンドリングも、価格に見合うような洗練されたものではない。
最新のシャシーと最新のターボチャージャー付きBMWエンジンを使用していても、刺激からは距離を置いている。やはり、風に漂う葉のような、のんびりとしたドライビングが素晴らしい。
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みんなのコメント
でも日本の一般公道で安価に楽しめるという意味では、GR86、ロードスター、コペン辺りが限界性能低くていいですね。
何と言っても遅い。
ナンボ回しても壊れそうにないエンジン。
軽いから、操作した通りに動いてくれる。
ちゃんとした運転をすれば、ちゃんと動いてくれるし、下手な運転とすれば、下手なように動く。
技量がモロ反映されるって、かなり楽しい。
馬力なんてなくても、軽いって良い。
しかも安い。
安くて楽しめるってかなり良いです。