見せるエンジンから隠すエンジンへ
かつては見せることが美学だったエンジンルーム。しかし時代は変わり、いまやボンネットを開けても見えるのは無機質なカバーばかり⋯⋯。なぜそのような姿になったのでしょうか? エンジンルームの歴史を辿ります。
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昔はクルマの象徴として機能美を見せていた
エンジンカバーとは、ボンネットフードを開けた際にエンジンが見えないようにした覆いで、一種のボロ隠しといえる。多くが、樹脂製となっている。
エンジンカバーが使われる前、エンジンを見せる時代があった。たとえば、日産「スカイラインGT-R」は、レーシングカーの「R380」に搭載されたエンジンの設計思想を採り入れ、直列6気筒DOHCガソリンエンジンを目にするだけでも、胸を躍らせたものだ。同じエンジンを車載する「フェアレディZ432」は、4バルブ/トリプル(3)キャブレター/DOHCであるが故の2本のカムシャフトというエンジンの姿を数字で表し、それをグレード名にした。
当然、見せることを意識した時代のエンジンは、吸気ポートがきれいに並び、DOHCのカムカバーが美しく仕上げられ、排気ポートは整った湾曲で揃えられて、床下を通ってマフラーに至る。DOHCエンジンは、スカイラインGT-Rなどのような高性能車だけでなく、一般の乗用車でも1980年代から採り入れられるようになった。そのことがまたクルマを手にする嬉しさを倍増した。
そうした様相が変化するきっかけは、環境問題といえるかもしれない。それも、大気汚染をもたらす排出ガスの規制ではなく、気候変動に通じる温暖化の抑制だ。簡単にいえば、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすことで、クルマでいえば燃費の改善になる。そのために使われたのが、ガソリン直噴である。エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射して供給する方式だ。
三菱「GDI」が先駆けたガソリン直噴の量産化
量産車にガソリン直噴を使ったのは、三菱自動車工業のGDI(ガソリン・ダイレクト・インジェクション)が最初で、1996年の8代目「ギャラン」に搭載された。ガソリン直噴そのものは、1954年のメルセデス・ベンツ「300SL」で採用されたが、それはスポーツカーという特別な存在だった。
GDI以降、多くの自動車メーカーでガソリン直噴エンジンが採用されていくようになる。それによってシリンダーヘッドに点火栓(スパークプラグ)と燃料噴射装置(フューエル・インジェクション)を装備した様子は、煩雑で、必ずしも美しくない。見せるエンジンではなくなってきたといえる。
そこで、カバーで覆ってしまう発想になったのだろう。しかも、直噴では、従来からのポート噴射の100倍近い圧力で燃料を噴射するため、騒音が大きくなる。さらに直噴の場合は圧縮比を高めているので、ディーゼルのようなエンジン音が出る。それらは決していい音ではない。カバーで覆えば、その分、騒音も聞こえにくくなる。さらに、そのカバーを厚くしたり、吸音効果のある材料を使ったりすれば静粛性が高まる。
1990年代になると、ハイブリッド車(HV)が登場する。1997年に、トヨタが初代「プリウス」を発売した。ハイブリッド車のモーター駆動系の配線は、電気自動車(EV)ほど高電圧ではないとはいえ、エンジン車時代とは桁違いの高電圧配線がエンジンルーム内に設けられる。それらは、オレンジ色の被覆がなされ、見分けはつくようにしているが、うっかり触れて感電したら大ごとだ。カバーで覆い、手が入らないようにすれば、安全性が高まる。
エンジンカバーが果たす安全性の向上
安全にまつわる事例としては、衝突安全性の向上に関連して、歩行者保護が要求されるようになった。先般、米国のトランプ大統領が「ボーリングの球をぶつけている」と言ったあのやり方で(実際にはボーリングの球ではないが)、クルマに跳ねられた人の頭がボンネットフードにぶつかった際、衝撃を和らげることが求められている。そこで、ボンネットフードとエンジンの間に空間のゆとりを設けているが、さらにエンジンカバーに衝撃吸収性能を持たせれば、衝撃をより抑えられる。
衝突安全では、ほかに、前面衝突の衝撃吸収車体構造の追加構造部の見栄えの処理をしなくても、カバーで隠せばいいとの考えもある。そのほか、エンジンオイルが鉱物油から化学合成油に替わったことで、1万km以上オイル交換せずに済むようになった。これも、カバーがあることによる整備上の不便を感じさせなくしているだろう。はじめは、みっともない姿を見せないボロ隠しからはじまり、騒音対策や安全性向上などの効果を含め、エンジンカバーは広く採用されるようになったのである。
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