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ポルシェは「PTV」で走りの質をどう高めたのか?——河村康彦の「ポルシェは凄い!」#16

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ポルシェは「PTV」で走りの質をどう高めたのか?——河村康彦の「ポルシェは凄い!」#16

PTVはブレーキを巧みにコントロールすることでドライビングダイナミクスを向上

誰もが知るブランドの礎としての存在であり、単に歴史が長いだけではなく初代が誕生した1964年から現在に至るまでの歴代すべてのモデルが、常に世界のスポーツカーを牽引するトップパフォーマーであったことで世界から羨望の眼差しを集めてきた911。
その6代目にあたる997シリーズの、いわゆる後期型(997.2型)と呼ばれるマイナーチェンジバージョンの頂点に位置するモデルとして2010年に登場したのが「ターボ」というグレードだ。「911ターボの35年におよぶ歴史上で初めての全面刷新されたエンジンを搭載」というフレーズや、すでにカレラ系に先行採用されていた「PDK」を謳うダブルクラッチ式の2ペダルトランスミッションを新設定したことが大きなトピックとして取り上げられた。
同時に、このモデルに新たな走りのオプションとして設定された興味深いアイテムが、最新の様々なポルシェ車にも引き継がれている「PTV(ポルシェ・トルク・ベクタリング)」と名付けられた、ブレーキシステムを巧みにコントロールすることでドライビングダイナミクスを向上させるというメカニカズム。
そんなPTVは当時、「最大160km/hの速度までのコーナリング時にコーナー内側後輪にブレーキを作動させることでヨーモーメントを発生。これによってステアリング操作に対する俊敏性が著しく向上し、あらゆる旋回シーンでのドライビングダイナミクスを改善する」という効能が開発陣によって謳われていた。
ちなみにこのメカニズムは、従来から採用されていた加速時22%、オーバーラン時27%のロック率に設定された機械式のリヤデファレンシャルとセットで構成され、「PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム)」が車両の姿勢を安定させるべくブレーキシステムに介入するのに対し、PTVはドライビングダイナミクスを向上させるためにブレーキシステムのアクティブ制御を行う」と、そのようにも解説されていた。
ただしすでにその時点では、より大きなヨーコントロール効果を狙ったアイテムとして「BMW X6」や「アウディS4」「三菱ランサー・エボリューションX」などに採用された、複雑な増速機構を備えるシステムも存在していた。しかし「それらは重量増が大き過ぎるためにポルシェとしては興味が無い」というコメントが、参加した報道向け国際試乗会の場でシャシー担当のエンジニア氏から発せられ、いかにも軽量化への拘りが強いこのブランドらしいアイテムだったんだな……と、今となってはそうした思いも蘇ってくる。

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ポルシェが採用する新機軸のどれもがそうであるように、あくまでも違和感を抱かせない

そんなポルシェ初となるPTVをオプション装着した997後期型の911ターボを、一般道やサーキットで乗ってみての最初の印象は、「なるほど自在なハンドリングの感覚はさすがのレベルだな」というものだった。
ただし、そのフィーリングは絶対的なコーナリングスピードやコーナリングの限界が大幅に向上したことを実感させるものではなかった。むしろ、ポルシェが採用する新機軸のどれもが常にそうであるように、あくまでも違和感を抱かせない仕上がり具合だったことの方がより強く印象に残ったことを思い出す。
実際それは、過酷さで知られる20km超におよぶニュルブルクリンクのオールドコース(北コース)を、従来型911ターボよりもおよそ10秒短縮するという新型のラップタイムのうち、「約4秒が新しいタイヤ分で2秒が新型エンジン分、そして約2秒が新しいオプションのダイナミックエンジンマウント分で、トルクベクタリングとPDK分がそれぞれ約1秒ずつ」と、タイム短縮のおおよその内訳をエンジニア氏が教えてくれた。数字上の効果としては微々たるものだったのだ。
けれども、そんなPTVは初の登場から15年以上が経過した現在の最新モデルたちにも展開され続け、さらにその上位バージョンとして電子制御式のデファレンシャルと組み合わされた「PTVプラス」として定着したことを考えると、やはりそれらが単にカタログを飾るためのギミックには留まらず、吟味に吟味を重ねた末に装備された真に価値あるアイテムであったということを認めずにはいられないのである。

文:くるくら
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