6月22日(現地時間)、ミラノ・メンズ・ファッションウィークでジョルジオ アルマーニが2027年春夏ショーを開催。「地中海のマーケット」をテーマとした最新コレクションは、軽やかかつリラックス感漂うシルエットが印象的だ。
トレンドを生み出すブランドがある一方で、それを追いかけるブランドも数多くある。そして、そのどちらにも当てはまらないのがジョルジオ アルマーニだ。そのカギは一貫性にある。同じシルエットやアイデアを何度も何度も磨き上げ、シーズンを重ねるごとに洗練させていく。その姿勢は、まるで大理石を丹念に研磨し続けるさまを彷彿とさせる。
連載:ストリートスナップで見る東京ニュー・ジェントルマン(リネンアイテム編)──Vol.20 早川 雄介
昨年9月、創業者ジョルジオ・アルマーニの逝去を受けて共同クリエイティブ・ディレクターに就任したレオ・デル・オルコとシルヴァーナ・アルマーニのふたりは、その道の達人であることをまざまざと証明しつつある。
6月22日(現地時間)、ミラノのパラッツォ・オルシーニの中庭に設えられた会場では、ありがたいことに手持ち扇風機とミストスプレーが配られた。うだるような暑さのなか、冷えた水はシャンパン以上の争奪戦となり(ファッション関係者の集まりではまず見ない光景だ)、私たちはスプレーボトルを片手に広場を歩き回った。コレクションの着想源が地中海のマーケットだったことを思えば、それも実に相応しい演出だった。
デル・オルコとシルヴァーナが、そのテーマを服づくりでも楽しんだらしいのは明らかだ。港町で買い物袋を提げ、エスプレッソを片手に歩く姿が目に浮かぶようなルックの数々──。ジャケットやシャツのなかには、肩線や襟が日に焼けて色褪せたような加工が施され、太陽と潮風にさらされたような風合いを纏っていた。
一方、多数のポケットを備えたフィールドジャケットやラフィアハットなど、ユーティリティな要素も。かと思えば、カーディガンにネクタイ、ワイヤーフレームの老眼鏡まで登場し、知的なムードを漂わせるルックも登場。カラーパレットはセージグリーン、ペールピンク、ライラック、ネイビーと控えめにまとめられ、最後はブラックスーツの連続で締めくくられた。ジャケットはノーカラーだったり、シアーシャツの上に羽織ったりとスタイルも様々だ。
アーカイブに磨きをかけた160ルック
男女混合で全160ルックという大規模なコレクションは、今季のミラノでも最大級のボリュームだった(シルヴァーナが手がけるウィメンズは、2027年クルーズコレクションの一部として登場)。内容も幅広く、風通しのよさそうなリネンパンツや半袖シャツといったアルマーニ流のカジュアルから、光沢感のある素材を用いたソフトショルダーのスーツにシルクブラウスを合わせたフォーマルまで網羅していた。
意外なことに、なかでも印象に残ったのはシャツだった。ジョルジオの代名詞ともいえるTシャツはあえて脇役に回り、その代わりによりフォーマルなボタンシャツが様々に展開された。表情豊かなダブルブレストジャケットの下にウォッシュドデニムを重ねたルック、胸元が透けるオーガンザの一着。そして、節のある粗い織り地で仕立てられた、まるでランウェイに辿り着く前から長い年月を経てきたかのような風合いのものもあった。
とはいえ、全体としてはアルマーニの本質から大きく外れることはない。流れるように柔らかく、肩の力が抜け、それでいて端正。ヨットのデッキでも、午後4時の陽だまりのランチでも自然に映える服だ。その多くは、アルマーニ黄金期の1990年代に発表されていたとしても違和感がないほどで、最近ブランドが復刻したアーカイブの名作群を、デザイナーたちが改めて丁寧に見直していたことが窺える。編集者にも顧客にも、そのルックはしっかり響いていた。
スタンリー・チューはブランドと親交が深く、1980~90年代のアルマーニを数多く所有するヴィンテージコレクターでもある。アーカイブファッションの愛好家にとって、現行コレクションは往々にして往年の名作に及ばないものだ。しかしチューは、2026年のアルマーニは1986年のアルマーニと同じくらい素晴らしいと言い切る。それどころか、「さらによくなっている部分もある」という。
「このシーズンの生地はこれまでよりずっと軽い。ヴィンテージのほうがもっとフォーマルですよね」。最新コレクションはより着やすくなりつつも、特別感を失ってはいないと彼は語る。「本当に泣きそうになってしまいました」と言い、彼は笑った。
墨のようなダークネイビーのノーカラースーツを纏った画家、チャナティップ・チャンウィパワは、特にシューズに目を奪われたという。「ずっと靴ばかり見ていました。メンズシューズは本当に魅力的で、しかも履き心地もよさそうでした」
バンコクとロンドンを拠点に活動する彼は、アルマーニの服はイギリスの雨にもタイの湿気にも対応できると話す。「結局はレイヤリングの妙に落ち着くんです。その日の天気やオケージョンに合わせて調整するだけですから」
「アルマーニはいつも快適」
ミラノ・ファッションウィーク期間中は、とにかく暑かった。誰もが話題にするのは暑さだけ。ショー会場での会話は毎回「なんて暑さだろうね!」で始まり、「体に気をつけて」で終わる。今週ずっと、私はランウェイのモデルたちが気の毒でならなかった。プラダではぴったりとしたスキニーフィットのレザーに包まれ、トム ブラウンでは重たいスーツとネットハットを重ね着させられていたのだから。しかし、アルマーニでは様子が違った。午後6時でも40度近い暑さだったにもかかわらず、モデルたちは少しも暑そうに見えなかったのである。
「本当に着心地いいですよ」。ショーの後に声をかけたモデルのマックス・ノットは、ローゲージニットとパンツ姿でそう話した。そこにもうひとり、中庭を横切って会話に加わってきたのがモデルのジェームズ・イェーツだ。アルマーニのショーに何度も出演してきた彼は、自身でも同ブランドの服を愛用しているという。
「世の中には……あまり快適じゃないブランドもたくさんあります」と彼は言う。「名前は挙げませんけどね。でも、アルマーニはいつも快適なんです」
イェーツにとって今回のルックは、「ある種の品格を備えた紳士のための、クラシックなアルマーニ・テーラリング」を体現しているという。「私たちもそういう着方を意識しています。アルマーニを着る人は、いつも本当にエレガント。シルエットは体に自然に馴染み、時代や世代を超えて愛され続ける。それでも存在感を失わないんですよ」
「それでも、ちゃんと男性らしさは残されています」と、ノットが付け加えた。
男らしくて、クラシックで、「すごくミラノらしい」。隣席に座っていた『WWD』ファッションディレクターのアレックス・バディアは、ショーの感想をそうまとめた。自分たちのオーディエンスを理解していること。そしてぶれないこと。そこに強さがあるのだと、私たちの意見は一致した。
ジョルジオ・アルマーニの死後、新たなクリエイティブ・ディレクターを望む声は絶えず、様々な大物デザイナーの名前が取り沙汰されてきた。だが、これほどコレクションが完成されているのを見ると、このブランドを最も深く理解しているのは誰なのか、改めて思い知らされる。
「誰もが少しばかりアルマーニをやっているんですよ」と、バディアは言う。「でも、アルマーニを一番うまくやれるのは、やっぱりアルマーニなんです」
From GQ.COM
By Mahalia Chang
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama
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