2021年も残すところ1ヶ月あまり、北海道や東北地方では初雪を観測しました。冬の時期は、気温低下や降雪、路面凍結などによって、クルマの各部でトラブルが発生しやすくなります。クルマも、人と同じように暑すぎるのも、寒すぎるのも苦手なのです。
ここでは、これから迎える寒い季節の前にやっておくべきクルマのメンテナンスについて、解説していきます。
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文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:写真AC_ acworks
写真:写真AC、イラスト:著者作成
[gallink]
バッテリーが上りぎみなら冬の前に交換を
クルマに関するトラブルで、1年をとおしてもっとも多いのがバッテリーに関するトラブル。冬の時期は、特に始動性不良が起こりやすくなります。
バッテリーは、温度が下がると内部抵抗が増え、出力電圧と容量が低下します。バッテリー電圧が下がると、クランキング回転数(スターター回転数)が低下したり、最悪の場合はクランキングできなくなってしまいます。クランキング回転が低下すると、ピストン圧縮時に圧縮漏れや熱損失が増大するため、混合気の温度が上がらず着火しがたくなります。クランキング回転は常温で100rpm(回転/分)を超えますが、-20℃以下の極低温時にはバッテリー電圧は半分以下に低下し、クランキング回転も50rpmを下回ることも。
したがって、劣化バッテリーで冬季を迎えると、始動できずに立ち往生するリスクが高まります。バッテリーの寿命は3~5年ですが、今冬にスキーなどのウィンタースポーツやアウトドアなどで極寒地に行く予定のある人は、いますぐバッテリーの使用期限や、液量といった状態をチェックしましょう。また、安心のために、寒冷地に行く機会が多い人であれば、容量の大きなバッテリーに交換するのもいいかもしれません。
極低温の機会が多ければ、低粘度オイルへ交換も
SAEの粘度規格と粘度表示の低温始動性の目安を示す。「〇W-●」の〇の数値が小さいほど粘度の低い「サラサラ」オイルで、低温始動性に有利(イラスト:著者作成)
バッテリーとともに冬季に大きな影響を受けるのが、エンジンオイルです。劣化の少ない適量のオイルが保持されていることは当然ですが、冬季に留意しなければいけないのは、オイルの流動性(粘度)です。オイルの粘度は、温度に大きく依存し、低温時には粘度が上昇して「ネバネバ」に、高温時には粘度が低下して「サラサラ」状態になります。
低温時に始動性が悪化するのは、前述したバッテリー電圧が下がることと、エンジンオイルの粘度が上がることが深く関わっています。粘度が上がると、エンジン摺動部のフリクションが増大し、クランキング回転が低下して、始動しがたくなるのです。
一般的なオイルは、気温-20℃程度まで始動可能です。オイルは、クルマの種類や用途などに対応した様々なグレードが用意され、その指標としてSAE(米国自動車技術者協会)が規定した「〇W-●」が使われます。「〇」は低温時の粘度指数を示し、数字が小さいほど粘度が低いサラサラのオイル。一方の「●」は高温時の粘度指数で、数字が大きいほどネバネバのオイルで、高温時の油膜保持性を表しています。
-20℃以下の極低温でクルマを使用するなら、より低粘度グレードの「0W-」や「5W-」のオイルに交換するのが安心ですね。
クーラントのLLC濃度を上げれば、-20度以下でも凍結しない
クーラントにはLLCが混合されているので、通常は-20℃近くまで凍結しない。さらに低温になる可能性がある場合は、LLC濃度を上げるのが安心(PHOTO:写真AC_ ei-mi)
運転中に高温になるエンジンを冷却するクーラント(冷却水)は、エンジンがオーバーヒートしないように適正な量を維持しなければいけません。いっぽう、もしも冬季に冷却水が凍ってしまうと、膨張してラジエターや配管系が破損する恐れがあります。
そのため、クーラントは凍結しないよう、水にエチレングリコールを主成分とするLLC(ロングライフクーラント)を30~50%程度混入して使います。凍結温度の目安は、LLC濃度30%で-16度、40%で-24度、50%で-35度。一般的な市販車の濃度は30%なので、-20度近くまでは凍結することはありません。
したがって、クーラントが減ったからといって、水で補給(薄める)のは、凍結しやすくなるのでNG。極低温でクルマを使用するなら、LLC濃度の高いクーラントに入れ替えましょう。
雪用ワイパーと高濃度のウォッシャー液で冬季の視界を確保
ワイパーブレードは、ゴムなので紫外線や温度変化などで劣化します。劣化が進んで、拭き残しや拭きムラ、ビビリ音が発生したときが、ワイパーブレードの交換時期です。
寒い日や降雪時には、フロントガラスが凍結して、ワイパーがガラスに凍りついて作動しなかったり、ウォッシャー液が凍結して噴射できないということが起こります。
このようなトラブルを想定して、低温でも硬化しにくいゴムや樹脂で覆われている雪用ワイパーに交換しましょう。また、ウォッシャー液の主成分であるエタノールの濃度を高めれば、凍結温度を低下させることができます。一般的なはっ水や油膜防止ウォッシャー液の凍結温度は-20度程度ですが、温度がそれ以下になる場合はエタノール濃度の高い凍結防止用ウォッシャー液を使いましょう。-50度程度まで凍結しないので、安心です。
スタッドレスタイヤも寿命あり、摩耗状況を必ずチェック
降雪や路面凍結の可能性がある場合、スリップを回避するためにスタッドレスタイヤに履き替えるべき。ただし、スタッドレスタイヤも劣化と摩耗が進むので、定期的なチェックが必要(PHOTO:写真AC_ FRANK211)
タイヤの摩耗が進むと、路面との摩擦力が低下して制動力の低下やスリップを引き起こします。日常点検項目の中でも、タイヤの摩耗状況や空気圧のチェックは、重要な確認項目です。
冬季に路面が凍結すると、スリップが起こりやすくなるので、冬用のスタッドレスタイヤに履き替えることが安全です。スタッドレスタイヤは、低温でも柔らかさを保つゴム素材を使い、ワイドトレッドで溝が深く、またサイプと呼ばれる表面の細かい溝によって水分をタイヤの溝に押し込み、氷の表面をしっかり掴んでグリップ力を高めてくれます。
しかし、スタッドレスタイヤも摩耗し劣化するので、通常は3年程度の定期交換が必要です。劣化によってゴムの柔軟性が消失、また摩耗によってサイプの溝が減ったり、溝の深さが50%以上摩耗するとスタッドレスタイヤの性能は大きく低下します。摩耗具合を示す指標として、スタッドレスタイヤにはプラットフォームと呼ばれる使用限度を示すサインが設けられています。プラットフォームが露出してきたら、交換しなければいけません。
スタッドレスタイヤだから大丈夫ということではなく、凍結路面ではまず慎重に安全運転することが第一です。また、事故のリスクを減らすためには、サインが出る前でも摩耗が進行していると感じたら、早めに交換するのが望ましいですね。
まとめ
新型コロナが落ち着いている今年の冬は、クルマで出掛けることが多くなるかもしれません。安全で快適な冬の走行を楽しむために、本格的な冬が始まる前のこの時期に、是非とも今回取り上げた5項目のチェックと事前の準備をしましょう。
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