7月7~8日の2日間にわたって富士スピードウェイで開催されたスーパーフォーミュラの公式合同テスト。昨年も、シーズン途中に行われたテストを経て調子を上げたチームやドライバーもいただけに、後半戦を占う上でも注目が集まる2日間となった。
特に今シーズンは、来週の第4戦、そして10月のダブルヘッダーラウンド(第6戦&第7戦)と、残り6レースのうち半分が富士ということもあり、各陣営とも今回のテストを重要視していた。
岩佐歩夢、ロングラン中心の最終日は充実の100周超え。マシンに自信も「トップとは言い切れない」/SF富士テスト
その中で、後半戦のキーパーソンになりそうな4名のドライバーをピックアップし、今テストでの手応えと後半戦の展望を聞いた。
■「細かい引き出しも作ることができた」牧野任祐
テスト1日目の2セッションでトップタイムを記録した牧野(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。2日目午前のセッション3では中盤に45分ほどコースインしない時間帯があり、彼自身もマシンを降りてコースサイドへ他車の動きをチェックしにいく場面も見られた。
これについては、1日目から大きくセットチェンジをしたものの手応えが良くなく、長時間かけて初日の状態に戻す作業をしていたからだという。この2日目はトップタイムを記録することはなかったが、別のセットアップを試すなど後半戦に向けた準備を着々と進めていた。
「いろいろなことを試せたし、良いところも悪いところもあったと思います。特に細かいところの引き出しも作ることができました。ダメ出しではないですけど、気になっていた部分を試せたので、ひとつひとつ潰すことができました」
「いずれにしても、レースではその時の状況によってけっこう変わってくる部分もあるのかなと思います。今回はけっこう暑かったなかで、レース当日がここまで暑くなるかどうか分からないですけど……どちらにせよ、まずまずのところにいるのかなと思います」
シーズン序盤戦の好調ぶりを維持して、後半戦に向けて自信を深めていた様子の牧野。現在ランキング3番手につけており、ここから本格化するチャンピオン争いに絡むひとりとなりそうだが、警戒するライバルの存在として坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)の名前を挙げた。
「今回はロングランも速かったですし、一発も速い雰囲気もありそうな感じです。坪井選手と、TEAM MUGENはくるだろうなと思います」
■ロングランは「ちょっと抜け出せた」坪井翔
第2戦オートポリス、第3戦SUGOと連続で3位表彰台に上がっている坪井。今回もセッション1から常に上位に食い込むタイムを記録していたほか、セッション4でのロングランのペースも他車と比べて良い印象だった。
「2日間を通して常にトップ5の中にはいるかなと思っているので、悪くはないとは思いますけど、やっぱりトップに立って抜け出るというところの速さまではないのかなと思っています」と坪井。
今回はセッションごとに路面コンディションが微妙に変わったこともあり「2日間通してけっこう暑くなったり、途中から急にコンディションが変わったりたところがあったので、一概にどのコンディションのタイムを信じたら良いのかは分からないので、何とも言えないです」と、今回のテスト結果は慎重に受け止めている様子だった。
坪井いわく「中古タイヤでのタイムの安定感では、ちょっと抜け出せた感じはある」という。一方でニュータイヤでのアタックは満足できなかったという。
「そこはもう少し詰めなきゃいけないとは思いつつも、どこか『その時のコンディションに合わせられた人が速い』みたいな雰囲気をちょっと感じています。牧野選手や山下(健太)選手が毎セッション常に速かったりしましたけど、(その他は)セッションによって速かったり遅かったりするところが結構多く見られたので、そういった意味では、どのコンディションでもそれなりの位置にいるのが確認できたし、ロングランもしっかり確認できたので暑くなっても涼しくなってもいけるような準備は何となくできたのかなと思っています」
来週の第4戦に向けては当日の路面コンディションをかなり気にしており「天気がどうなるのか……コンディション次第になると思います。おそらく、これだけ(路面上に)ラバーが乗ることはまずないと思います」と坪井。
後半戦に向けてはTEAM MUGENの底力を警戒しており「なんだかんだ、気づいたらMUGENの2台が前にいるみたいなことに多分なるんじゃないかなと思っているので、何とかそこを打破したいです。富士では後半3レースもあるので、ここで調子が良ければかなりポイントも大きくとれると思うし“貴重な3点”が欲しいので、何とかポールを目指して頑張りたいです」と意気込んだ。
■コンディション変化にうまく対応した山下健太
こちらも各セッションで速さをみせていた山下(KONDO RACING)。1日目のセッション2では牧野から0.058秒差の2番手タイムだったほか、2日目のセッション3では1分23秒099でトップに立ち、同時に2日間総合トップタイムにもなった。
初日が終わった時点では、「まだまだ詰めたいところがあるという状況で、乗っている感じは2番手タイムという感じがしなかった」と山下。2日目午前にはセットアップをいろいろと試し、良いものが見つけられた結果トップタイムを出せ、「すごく良い流れだった」と振り返った。
「午後は路面のコンディションが悪かったですし、最後はトラブルが出てニュータイヤでアタックできないまま終わったのが残念でしたけど、期待が持てる感じで終わることができました」
昨年まではシーズンを通して安定した速さを引き出せなかったが、気温30℃を超えるコンディションでトップタイムを出せたというのは、かなり自信につながっているようだ。
「冬のテストで速いと『偶然かな』という気はしますけど、夏でこれだけ速いのは自分としても初めてだし、やってきたことは狙いにできている感じがするので、偶然ではないと信じています。今回の富士テストは、コンディションが同じように見えて、セクター3で全然グリップしない時がめちゃめちゃありました。そうやって刻々と変わっていくコンディションの中でも安定して上位にいたので、そのあたりへの対応もうまくできているのかなと思います。ちょっと今までとは違う流れもできている気はします」
後半戦に向けては、合計で3レースある富士ラウンドが勝負と捉えている様子で「富士はこれから3戦あるので、この調子でいければかなりチャンスはあるのかなと思っています」と山下。
「今回やってきたことが他のサーキットで活きるかは分からないですが、自分的にはもてぎとかでも行けるのではないかなと思っています。鈴鹿は開幕戦で速かったし、これから開催されるサーキットでは良いレースができるのではないかなと期待しています……けど、そこは慎重に行きたいと思います」と、最後まで慎重な姿勢を崩さなかった。
「今まで(期待したにも関わらず)散々ダメになることが多かったので……スーパーフォーミュラは、そんな甘いものではないと思っています」と、山下は感じている過去一番級の手応えから笑みが溢れそうになるのを、どこか必死に抑えているようにしていたのが印象的だった。
■「現状は、戦えるレベルにない」野尻智紀
ランキング上位にいるドライバーたちが富士テストで手応えを掴んでいる一方で、「けっこう悩みの多いテストになりました」と肩を落とすのが、ランキングリーダーの野尻(TEAM MUGEN)だ。
「いろいろなテストメニューをこなしてマイレージは稼げたかなと思うのですが、感度は……ほぼ出せなかったですね」と苦笑い。昨年も7月に行われた富士での第6戦はポイントこそ獲得できたものの、かなり苦戦を強いられていた。その時に悩まされた症状を克服するべく今回のテストに臨んだようだが、結果は芳しくなかったようだ。
「現状の症状はとてもじゃないけど戦えるレベルにないなと……優勝を争えるレベルにないなと思ったので、本当は2日目の午後はロングランをやる予定でしたけど、ずっとショートランに注力することになってしまいました」と野尻。
「(症状は)昨年と一緒です。『この症状を直したいな』というのがありますけど、なかなかそれが直らない。安定してタイヤに荷重を高くかけ続けることができないという感じです。そこをいろいろやったのですけど、なかなか難しいなという感じ。富士テストに入る前から『調子は何となく良くないよね』という感じはありましたけど、それがそのまま形になってしまいました。あとは自分たちで感じている部分をどう直せるか。そこに尽きます」と、状況は思った以上に深刻なようだ。
第4戦を含めた後半戦に関しては「岩佐(歩夢)選手が調子良いので(苦笑) 、おそらく今のままだと次の富士ラウンドで彼に逆転されると思っているので、そうならないようにしたいなと……今の感じだと3番手争いくらいになると思うので、そこを改善していきたいです」と、チームメイトを警戒している様子の野尻だったが、「まだあと2週間ありますからね」と、ここから分析を進めて現状を打破しようとする姿勢も垣間見えた。
7月20日・21日の第4戦『第1回 瑤子女王杯』として開催され、大きな注目を集めている。それに加えて、レース展開に関しても後半戦の勢力図とチャンピオン争いを占う上で、非常に目が離せない重要な1戦となりそうだ。
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