■高速バス業界変革がロボットタクシーに波及
旅行業を手掛けるWILLER(ウィラー)が、ついに自動運転の実用化に踏み出すことを決めました。いわゆるロボットタクシーで2021年に実証試験をおこない、2023年に実用化します。
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詳しい日程や場所は今回未発表。使用する車両は、ミニバスタイプの可能性が濃厚です。
ロボットタクシーといえば、DeNAが日産と組んだり、トヨタが富士山麓で建設する未来都市「ウーブンシティ」などで運用する「eパレット」もロボットタクシーの仲間だといえます。そこに、バス業界の風雲児が本格参入するのです。
ウィラーといえば、白地にピンクのカラーリングをした高速バスでお馴染みですが、ここ10年ほどで、全国各地で一気に増えた印象があります。
国は2001年、貸切バスなどの事業について大幅な規制緩和。そうした社会変化を追い風に、ウィラーは2006年に「WILLER EXPRESS」を全国展開しました。
日時や乗客数に応じた価格変動制の採用、また飛行機のファーストクラスのようなシートアレンジや、シートを大きく囲うように個室化するなど、高速バス業界の常識を覆すさまざまなアイデアを実現してきました。
近年では北海道や関西北部などの交通が不便な地域で、鉄道やバスの再編に関する実証試験もおこなっています。
筆者(桃田健史)はこれまで、ウィラー幹部による将来事業に関するプレゼンを直接聞いてきましたが、交通事業をさらに一歩引き上げるために、ウィラーが自動運転に着目するのは当然の時期だと感じます。
気になるのは技術提携する相手ですが、それは一体どこなのでしょうか。
日産の「プロパイロット2.0」など、世界各国の自動車メーカーに自動運転を活用した技術を供給しているIT大手のインテルなのです。
インテルといえば、「インテル入ってる」で知られる、パソコンなどの電子機器に使われる半導体メーカーです。本社は、アメリカ西海岸のシリコンバレー地域にあります。
じつは、インテルが自動運転に参入したのは2016年です。同じくシリコンバレーで2000年代後半から自動運転の研究開発を始めたグーグルと比べると、歴史が浅い印象があります。
2016年に何があったかというと、インテルがイスラエルのモービルアイを153億ドル(現在のレートで約1兆6400億円)で買収したのです。
このモービルアイという会社は、一般的にはあまり知られていません。ところが、街で走っている多くのクルマには、モービルアイの技術が使われているのです。
どんなところにモービルアイの技術が使われているかというと、衝突被害軽減ブレーキや、車線逸脱防止など、予防安全装置のカメラです。
もう少し詳しく説明すると、カメラを通じて得た人や物の動きを解析し、その後の自車の進むべき方向を予測する画像認識技術です。
■高速バスの予防安全技術向上にも期待がかかる
モービルアイは、旧来の自動車業界ではティア2という存在で、ティア1である大手自動車部品メーカーに技術を提供するだけではなく、自動車メーカーとも直接、共同研究をおこなうという特殊な位置付けの企業です。
日系大手部品メーカーの支援によって初期事業をおこなったり、欧米メーカー各社や、日系では日産やマツダなどが、モービルアイと関係を持ちながら研究開発しています。
2016年にモービルアイがインテルに買収された後、2017年5月にシリコンバレーでインテルが開催した自動運転ラボ(研究施設)のお披露目会が開かれました。
この頃、インテルの自動運転に対する鼻息は荒く、ダイムラー、BMW、VWグループと共同で、自動運転に活用する三次元高精度地図企業「HERE(ヒア)」に出資することも発表していました。
最近になると、インテルの自動運転事業に新しい動きが目立つようになります。サービスプロバイダーと呼ばれる、交通サービスに直接関わる企業との連携です。
たとえば、2020年5月には、鉄道、バス、カーシェア、自転車シェアなど、さまざまな都市交通をスマホアプリで一元管理するMoovit(ムービット)を9億ドル(約963億円)で買収。ムービットは世界102か国3100都市で8億人のユーザーがいます。
サービスという需要を抑え、それを三次元高精度地図データや、画像認識技術を通じて収集・解析した個々のクルマのデータなどを組み合わせることで、最適最短でリーズナブルな価格でのサービスが可能となるといいます。
この手法を、ウィラーと協業するロボットタクシーでも使います。日本での実証、実用化を踏まえて、その後は台湾と東南アジアでも同様のビジネスを展開する予定です。
インテルとモービルアイの予防安全技術は、ウィラーの高速バスなどでも活用され、より安全なバス運航に結びつくことが期待されるのではないでしょうか。
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