2024年3月29日から30日に東京・有明で行われたフォーミュラE Tokyo E-Prix。日本で初めての公道で電動自動車のフォーミュラカーによるレースが行われ、前例のないイベントにも関わらず、決勝日には2万人もの人々が足を運んだ。今回のTokyo E-PrixでフォーミュラEを知り、興味を持った方も多いだろう。今回はフォーミュラEとはどのようなスポーツなのか、また注目したいポイントやルールについて解説する。
今年で10年目!これまでの常識を覆したフォーミュラE
フォーミュラEは2014年に始まった、電気自動車のフォーミュラカーによるカテゴリーだ。化石燃料を使用せず電気のみで走るため、排気ガスや騒音問題をクリア。この特性を最大限に活かし、レースはサーキットではなく、市街地の特設サーキットで行われる。(常設のサーキットでもレースは行われている)
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
世界各国のさまざまなロケーションの中でバトルが繰り広げられるフォーミュラEは、これまでになかったレースフォーマットに加え、ドライバーのレベルの高さ、迫力満点のレース展開、そして環境問題に対する新しいモータースポーツの形として注目を集めていく。シリーズ7年目となる2020-2021シーズンでは、F1やWRCと同じ世界選手権となり、世界格式のレースにまで成長した。
従来のモータースポーツのスケジュールは金曜日にフリー走行、土曜日に予選、そして日曜日に決勝という流れが多い中、フォーミュラEは金曜日と土曜日の2日間で開催される。1回目のフリー走行が金曜日に、2回目のフリー走行と予選、決勝は土曜日に行われ、ほぼ1日に集約されているのが特徴だ。
これまでは郊外にあるサーキットに足を運ばなければならず、遠方からの観戦の場合は宿泊する必要があるなど、サーキットでの観戦は何かとハードルの高いものだった。しかし、フォーミュラEはアクセス抜群の市街地で行われ、1日でほぼ全てのセッションを見ることができるため、非常に観戦しやすいカテゴリーと言えるだろう。
予選はAとBにグループ分けされ、各グループ上位4名が次のラウンドに進出することができる。ちなみにAはランキングの奇数順位、Bは偶数順位となっている。
勝ち上がったグループ予選の上位8人(2つあるグループの上位4人ずつ)がトーナメント形式でポールポジションを競うDuelsもフォーミュラEならではのフォーマットだ。
一対一のタイムの出し合いは予選ではあるものの、さながら決勝のようなバトルで見応えのある形式。東京E-Prixでも決勝前の予選から大いに盛り上がりをみせた。
決勝は勝負の勝敗を分ける「アタックモード」に注目!
決勝は普段私たちが使用している公道で抜きつ抜かれつのバトルが繰り広げられる。もちろん安全性は最大限確保されているが、サーキットのようなランオフエリア(コースオフした際の安全確保のために設けられたスペース)がないため、ミス=クラッシュというスリリングなものとなっている。
どのコーナーにも高い金網が覆われており、撮影にはハードルが高いかもしれない。しかし、安全性を確保しつつも、極めて近い距離からレースを観戦することができるのもフォーミュラEの魅力の一つである。
狭い公道の中を、日常では考えられないスピードで行われる抜きつ抜かれつのバトルは見るだけでもエキサイティングだ。しかし、レースを見るうえで各チームの作戦や意図を知ることができればさらに観戦が面白くなる。
フォーミュラEには一時的にパワーをあげることができるアタックモードというものがある。アタックモードはアクティベーションゾーンと言われる区間を通過すると起動することができ、レース中に2度使用することが義務付けられている。
アタックモードの継続時間は合計8分間であり、2回の義務のうち、2分間と6分間、4分間ずつ、6分間と2分間という3通りから選択。
パワーアップできるチャンスのアタックモードだが、レーシングラインを外れた箇所に設定されているため、タイミングを誤ると順位を大きく落としてしまうリスクが潜んでいる。
フォーミュラEにおいては戦略において最も重要な部分であり、いつ、どのタイミングでアタックモードを使用するのかの決断が勝敗の分かれ目となる。
回生エネルギーを利用した駆け引きも勝利のカギ
そしてもうひとつ注意して見ておきたいのが、電気残量だ。電気量は決まっており、はじめから最後まで全開で走るとガス欠ならぬ電欠でゴールすることができない。そのためドライバーは常に電費を気にしながら走らなければならないのだ。
ライバルとのバトルを繰り広げながらも、ブレーキング時の回生エネルギーを利用してエネルギーをセーブするなど電費走行も求められる。フォーミュラEでは、クラッシュなどが発生した際に出動するSC(セーフティカー)の出動時間によって周回数が増える。(サッカーでいうところのアディショナルタイム)
ドライバーやチームはゴールから逆算してエネルギーのマネジメントを行うが、上記のようにシチュエーションによって周回数が変わるため、その場の状況に応じて作戦を再構築しながら走らなければいけない。それでもぴったり電池残量0でゴールするドライバーの技術には脱帽だ。
バトルはもちろんだが、各ドライバー・チームの作戦や動きを注視するとレースの凄さや難しさ、チームスポーツの側面が見えてきてよりレースを楽しめることができるので注目してみてほしい。
東京E-Prixに次いで13日と14日には、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで2日連続のラウンド6、ラウンド7を開催、その後、モナコにおいてラウンド8が展開される。まだまだ見どころたっぷりの今シーズン、海外イベントの動向にもしっかり注目しておきたい。
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